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声を大にして言いたい。監修者と著者の違いとは?

知っている人にとっては「知ってますけど?」な情報かもしれないのですが、今回の記事は、若手編集者(年齢的にはアラサーなので中堅ですが)として、世の中の人にめちゃくちゃ言いたかったことです。

書籍の背(出版界では、なぜか背幅を指さない時も束と呼ぶ)やムックの表紙には多くの場合、人名が掲載されています。

そこに小さく、「著」や「監修」などという文字を見つけたことはありませんか?

もしくは奥付を見てみてください。

必ず、一番目立つ名前の持ち主が「著者」なのか「監修者」なのかが、はっきり記されているはずです。

なぜならば、その情報は、本にとって命とも呼べるくらい(……いや、ちょっと大げさかな)大事なものだからです!

まず、一般的に出版業界や広告の世界に関わったことがない、いわゆる「普通の人」がイメージする「本を書いた人」「掲載されている文章を執筆した人」が「著者」になります。

状況はマチマチですが、著者の多くは編集者から「これこれこういうテーマで本を製作したく考えており、つきましてはあなた様にお原稿を書いていただきたく候」という依頼を受け、締め切り期間内に決められた文字数でテーマについて執筆します。

ここで著者に支払われるギャランティは「印刷部数×◯%」の時もあれば、「原稿用紙1枚400字=◯円」などという時もあり、出版社によって本当に様々です。

そんなこんなで仕上がった「お原稿」を担当の編集者が読み、


・内容に齟齬がないか(前半はAって言ってたのに、後半では一気に答えがBになってる! なんで!? という時などがあります)

・重複している表現や内容はないか(何回もAについて書いてるけど、これって1回でよくない? という時などがあります)

・お話しの流れとして成立しているか(あれ? で、結局答えは何? となる時などがあります)

・差別的な内容・表現はないか(テーマにもよりますが)

・日本語表現を誤って使用していないか


などを黙々と確認します。

そして著者さん自身に指摘を伝え、修正をお願いします。

そのやりとりを数回繰り返し、いろいろな工程を経て、やっとこさ著者さんの本ができあがる、というわけなのです。

———さて。

次にご説明いたしますは、「監修」「監修者」についてです。

ネット検索で上位に上がってきました辞書によると、監修とは「著述・編集などを監督すること」らしいですが、この説明で1から10までパッと工程を想像できる人は、いかほどいらっしゃるのでしょうか(※辞書の批判ではありません)。

「監督」という言葉から最も想像されるのは「映画監督」だと思うのですが、著述や編集の監督……つまり、書籍における「監修」はそういうイメージではありません。

以下、現役編プロ社員による、「監修とは何たるや」をご説明した寸劇をお楽しみいただければと思います。


新人編集者「あ〜あ〜、◯◯先生に本を書いてもらいたいけど、先生お忙しくって時間があまりないみたい。先輩、どうしたらいいでしょうか?」

ベテラン編集者「だったら”監修者”になってもらえばいいじゃない」

新人編集者「監修者?」

ベテラン編集者「先生に2時間くらいお時間をもらって、書籍のテーマについて話を聞いてきなさい。あ、そうそう。必ず、ICレコーダーで取材内容を録音してくるのよ!」

新人編集者「はぁ……で、どうするんです?」

ベテラン編集者「レコーダーに録音された情報を元に、私たちで原稿を書くの」

新人編集者「ええええっ!? そんなことしていいんですか!?」

ベテラン編集者「いいの、いいの。先生には”監修していただきたく”って言えば伝わるから」

新人編集者「そ、それってゴーストライターじゃ……」

ベテラン編集者「違うってば。これはれっきとした”監修”っていうシステムなの。全然悪いことじゃないわよ。できあがった原稿も必ずチェックしていただくし、先生は作業が少なくて済むし、編集サイドは製作費をおさえられる。そもそも内容は、先生のお話しを元に肉付けして書くだけなんだし」

新人編集者「なるほど……。お互いに美味しいお仕事ってわけですね!」

ベテラン編集者「これこそ”win-win”の法則よね!」


上記の流れ以外にも、「本にしたいテーマについて、知識はあるけど文章は書けない」人もいらっしゃいます。

「頭のいい人=文章もうまい」とは限りません。

本人が語っているのかのような口ぶりで書かれた本も、奥付や背、表紙に「監修」の言葉がある限り、実際にはライターや編集者が「ご本人ならこんな風に書くのではないか」とイメージして(弊社では”憑依させる”や”降ろす”などと表現しております)書いているわけなのです。

編プロで働き始めて数ヶ月、このシステムを知った時は


これって詐欺じゃないの?


と思いました、ええ。

読者にとっては「著者」だろうが「編集者」だろうが、そこに表示された文字にそれほど大きな意味はないと思うのです。

印刷されている名前を見て「あ、◯◯先生の本(記事)だ」とその本や雑誌を手に取ると思うのです。

「◯◯先生が書いたんだ」と、素直に受け取ると思うのです。

だって実際に編プロで働き始めるまで、私は一読者として、そう思っていましたから。

だからこそ、読み手の立場としては素直に「なんだかなぁ」と感じたこの監修のシステム。

内容を知った当初は、「読者を騙しているのでは」という気持ちに何度もなりました。

ある程度編集者として経験を積んだ今、「監修」のシステムに対して、最終的に素晴らしい本・雑誌記事が生まれるのであれば、それが読者にとっては一番いいのかもしれない、という思いが一番にあります。

知っている人が知識を提供し、文章力のある人がそれを文字にする。

その結果、おもしろいものができたのであれば、それは世の中に対して必ずプラスになると思うのです。

ですが、読者の立場になることが多いであろう皆様には、「著者」と「監修者」の違いは知っておいていただきたい、とも思っています。

監修の言葉の裏に、書き手の存在別にあり。

先生の名前の下に小さく印刷されている(印刷されないこともしばしばありますが)、ライターや執筆協力者、編集者の存在を、今までよりももう少し、意識してもらえると大変嬉しいです!

次回はそろそろ、有料記事を執筆したいと思っております。

本を出したい方が一番知りたいであろう「編集者はどうやって著者を選んでいるのか?」や「普通の人が著者になるために必要なこと」をテーマに、何かかければと思います。

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