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編集のがっこう<Vol.12>ブランドコンセプトを理解し、伝える実践編がスタート

情報収集の方法や企画の立て方、見出し術など、編集の基礎知識を学んだステージ1から、情報発信のノウハウや仕掛け方をインプットしまくったステージ2までが終了。「編集のがっこう」は、いよいよステージ3の実践編へと突入。

そのフィールドワークの題材となるのが、日本有数のアパレル企業「ワールド」がサポートしている「snails_project(スネイルズ プロジェクト/以下snails)」というLGBTQ(同性愛者・両性愛者・トランスジェンダー・既存の性別に当てはまらない人々)支援プロジェクト。ある意味難題であり、ある意味伝えるにはもってこいのテーマを受講生たちは、どう捉え、どう発信していくのか? この回からは、無料で公開していく。

目次
・コンサバだった大企業のマインドを変えた「snails」とは?
・社会を風刺したりアンチテーゼを投げかけてきたファッション業界が起こす改革
・snailsディレクターの思いを、引き継いで伝える

コンサバだった大企業のマインドを変えた「snails」とは?

ワールドの子会社で「ドレステリア」の開発ディレクターとして携わってきた安達功さんが発起人でありデザイナーを務める「snails」は、LGBTQ(性的少数者)とストレートアライ(LGBTQをサポートする異性愛者)を支援するプロジェクト型のブランド。実は、安達さんもLGBTQの一人だ。

セクシャルマイノリティに悩み、苦しむ人を救いたいと願い、自分にできることはないかと考えた末に、自分がどんな考え方を持っているのかが伝えられるデザインやプロデュースをしていきたいとの想いに辿りつき、「着る人らしさを追求する服づくりから、着る人の気持ちに寄り添う服づくり」へと転換。LGBTQを含め誰もが着られるワンサイズの服が出来上がった。

着る人の個性でどんな味つけも可能なビッグシルエットのTシャツやリバーシブルスエット、そしてスカーフの3アイテムのみからスタート。“わたしはわたしでいい。あなたはあなたでいい”というブランドコンセプトを伝えるために、型数の多さではなく、マイノリティの繊細な気持ちを汲み取り、きめ細やかな配慮をデザインに反映、日本に一人しかいない職人の技術にこだわった。

↑snaisは資金調達もクラウドファンディングで行い、賛同者も多数集まった

しかも、アイテムをダイレクトに売るのではなく、クラウドファンディングを活用し、このプロジェクトに賛同する人から資金を募る方法で販売。今後は「ワールド」が生産やPRをサポートし、ファッションだけでなく、コスメやインテリア雑貨など領域を広げていく。「snails」は、今までであれば、LGBTQといったセンシティブな問題にはなかなか取り組めなかったであろう老舗大企業のコンサバなマインドを変え、動かしたのだ。

社会を風刺したりアンチテーゼを投げかけてきたファッション業界が起こす改革

いま世界では、「ダイバーシティ(多様性)」や「インクルーシブ(包括性)が叫ばれている。人種、性差、宗教の違い、障害の有無……それらを超えて、もともと人間は多種多様であり、個性を認め、共に生きていこうとするもの。もちろん頭では理解できるが、同一民族、同一国家である島国日本の「ガラパゴス化した感覚」の中で、海外からやってきた社会的価値観を共有し、広め、より身近な「当たり前の感覚」として捉えるのは決して容易ではない。

しかし、ファッション業界はもともとコレクションや広告ビジュアルで、社会を風刺したり、アンチテーゼを投げかけてきた。

例えば、ベネトン。1965年ブランド創設以来、何度となく白人と黒人をミックスした広告や同性どうしが抱き合う広告を制作、時に3つ並んだ心臓に“WHITE”“BLACK”“YELLOW”の文字をのせ、人間は同じであることを世に説い続けたこのブランドの姿勢は常に社会に革新的精神を植えつけた。

↑©︎benetton|ベネトン:左上から時計回りに1985年、1990年、1996年、1991年

最近では、レズビアンカップルのターシャ・ティルバーグとローラ・ウィルソン、そしてボーイとグレイの2人娘を、写真家クレイグ・マクディーンが実際に彼女らの家で撮影したビジュアルで、新しい家族の在り方を見せた2018年秋冬の Acne Studiosのカプセルコレクションの広告は記憶に新しい。

↑©︎Acne Studios|アクネ ストゥディオズ

そんな革新的なマインドを持ったブランドを例に取りながら、「ファッション業界は、もともとモノを売ることだけでなく考え方も同時に提議してきた。だからこそ声をあげながら0.1歩ずつでも社会を動かしていきたい、理解者を増やしたい」と、静かに、でも力強く「snails」というブランドを丁寧に説明していく安達さん。

snailsディレクターの思いを、引き継いで伝える

ひと通りブランドコンセプトの説明と質疑応答の時間が終わり、早速、「snails」を正しく理解し伝えるという課題に取り組むことに。

「編集」という仕事のひとつは、伝える手段であるメディアを理解し、そのメディアを通して、人やもの、事象にスポットライトを当て伝えていくこと。とはいえ、編集のがっこうは、メディアではないから、雑誌媒体もなければ、ウェブメディアも持ってない。

そこでまずは、生徒たちが伝える手段として使えるメディアってなにがあるのかから考えてもらった。

ゲストスピーカーであり、メイン講師として参画してくださったWWD JAPAN.comの村上要編集長の懐の深さにより、「WWD JAPAN.com」で記事を書くことは決定。
それ以外、なにで伝えればいいか悩む受講生たちに「ステージ2でなにを学んできたっけ?」という校長の問いかけに、「instagram」「twitter」とすぐに始められるSNS2つも決定。実は、校長は、この3つで発信できればいいくらいに思っていたら!?「noteもあります」と生徒から。そこで
・WWD JAPAN.com
・instagram
・twitter
・note
の4メディアで「snails」を伝えていくことにし、生徒15人を4チームに編成。それぞれなにをどう伝えるのかを打ち合わせ、考えてくることに。

snailsというブランドだけを理解するのではなく、担当になったメディアやSNSの特性に合わせた記事のつくり方、書き方をしなくてはいけない。かなりの難問。まずは、各チームが、編集のがっこう<Vol.3>で学んだ企画の立て方に添いつつ、企画案ならびに構成案までつくってこれるかどうか?

次回は、チームごとの課題内容を詳らかにしつつ、果たして、期待通りのものになったか? 厳しく(笑)チェックしていきます。お楽しみに。

Photo: Getty Images Specialthanks: BENETTON JAPAN,  Acne Studios

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