編集のがっこう<Vol.14>LGBT支援ブランドをSNSで発信する苦悩の過程を公開

インプットからアウトプットしていく授業内容に移った編集のがっこう。LGBTQを支援するために立ち上がったプロジェクトブランド「snails」を、instagram(以下インスタ)とtwitter(以下ツイッター)のSNSチームが実際に配信するまでの過程を追いかける今回。

センシティブな議題でもあるLGBTQを扱ったブランドを、言葉ではなくビジュアル中心のインスタでどう表現し伝えていくのか、取り上げ方によっては炎上もしやすいセンシティブな内容をツイッターでどう届けるのか、生徒たちの苦悩の過程をレポート。

目次
・どんなアカウントにするか、インスタチームの目のつけどろこはよかったが…
・「世界観」重視のインスタならではの表現の仕方とは?
・ツイッターはアカウントのペルソナ設定が最も大切と気づいた夜

どんなアカウントにするか、目のつけどろこはよかったが…

SNSチームは、インスタとツイッターの2チームに分かれてのプレゼン。

インスタチームが出した最初の企画案はこれ ↓

今回扱うブランド「snails」には、すでに公式アカウントがあり、運用は始まっている。公式アカウントの運用に参入することはできないので、「公式サポーター」として新しくアカウントを開設し、
①LGBTQ&ストレートアライについて投げかけ&解説
②ブランドが生まれた背景やデザイナー安達さんのメッセージ
③アイテム(服)を伝えるストーリー
を順にアップし、3投稿でひとつのストーリーを完成していくというもの。

ツイッターは、自分のアカウントでLGBTQに関する意見を述べてもそれほど違和感はないが、ビジュアルで表現していくインスタの場合、いきなりLGBTQに関する画像やデザイナーの写真、服について(ファッション中心で発信しているのでなければ特に)自分のアカウントでアップすると違和感を与えかねない。それどころか、ステルスマーケティングと思われる危険性もある。

上記の理由から、snails公式を応援するサポーターというスタンスで開設するという着眼点はとてもいいと全員から高評価。
しかし、他に気になる意見を出してもらったところ

<挙がった意見まとめ>
・一からアカウント開設するとフォロワーがいないのはどうする?
・言いたい軸が3つあることは理解できるが、インスタLPで全ての画像が並んだときに一貫性がない(世界観がバラバラ)
・サポーターとしての立ち位置はどう示すのか、
・LGBTQやストレートアライについて配信し、最後にsnailsへ落とし込むという流れは理解できるが、snailsについてあまり語っていないのでは?
・しかしLGBTQについての投げかけを無視してはこのプロジェクトの本質を伝えられないのではないか
・snailsの本アカウントとの差別化はどうする?
・LGBTQについて、snailsについて、服について…1ユーザーが3つの内容全てに興味をもつのか? コロコロ内容が変わると離脱するのでは?

など、WWD投稿チームのとき同様、問題点がいくつも挙げられた。

「世界観重視」のインスタならではの表現の仕方とは?

LGBTQについて、「snails」について、服についてーーこの3つの視点を同一アカウントで語っていくのは難しい。それは、一貫性のあるビジュアルで「世界観」を表現することでフォローされたり、「いいね!」がもらえるインスタならではの特性があるから。<編集のがっこう>に登壇いただいた龍崎翔子さんの講義でも学んだことだ。

そこで、ジェンダーニュートラルのアカウント、snailsプロジェクトと服について伝えるサポーターとしてのアカウント、最低でも2つに分け、ハッシュタグで共通性をもたせて、プロフィールで相互リンクをつけるのはどうかと。

目的は、snailsを知ってもらい、ファンを増やしたいこと。

ならば、それぞれに特化したアカウントを複数運用していくやり方のほうが、間口は確実に広がる。LGBTQを理解してもらいたいという意志に共感する人、自らもLGBTQであることをカミングアウトしてクラウドファンディングでこのプロジェクトを立ち上げたデザイナー安達さんのヒーロー性を指示する人、単純に服に興味を示す人……など、間口を広げることでsnailsに興味が集まる。と、建設的な意見&メイン講師WWD村上編集長のアドバイスで進められた。

その後、提出された企画案がこれ ↓

LGBTをメインテーマに、ストレートアライの視点で基礎知識から世界で起こっているムーブメントを発信するアカウントと、製品のストーリーやデザイナーの思いを伝えるアカウント、この2つで運用し、投稿イメージ、投稿内容を明確にして提出。

1回目に比べてかなり整理をされた内容に。

残りの課題は、拡散とリーチをどうするか。

頼りになるのは、ハッシュタグ。ハッシュタグは、「3割メジャー7割マイナータグがちょうどいいバランス」と<Vol.7>で登場いただいた神尾美沙さんはこっそり教えてくれた。タグ検索して投稿数が多いのがメジャータグ、少ないのがマイナータグ。メジャータグは興味があって検索をしている人が多いぶん、検索にも入るが見てもらえる可能性は低い。マイナータグは検索自体は少ないが、検索している人にヒットすれば確実に見てもらえるし、内容がフィットすれば「いいね」やフォローがもらえる。

内容について。例えば“ビッグスウェット”という言葉を検索にかけてみると、サイズ感がわかる写真やモデル着用写真に「いいね」が多い。つまりハッシュタグで検索をかけた人は、おそらくスウェットの大きさや着こなし方をチェックしている。つまり、知りたい情報を予測して写真を撮ったり、本文を書く必要がある。

そこで、①ハッシュタグは10個以上はつける。②どんなニーズを持った人が検索しているだろう、その人が欲している情報は自分たちの写真と本文で答えられているだろうか、を精査すれば「いいね」やリポストがもらえるので、そこを考えようとまとまった。

そのうえで完成した企画運用プランが出来上がった ↓

プロダクトを伝えるアカウントでは、デザイナーの意志やイベントについてはインスタストーリーズへ、プロダクトに関して写真で発信することに、されに整理した。

3月初旬からスタートしたインスタ上の2つのアカウントは以下 ↓

@lgbtq_supporter_by_henshu
@snails_stories_by_henshu

ツイッターアカウントのペルソナ設定とストーリー作りが最も大切と気づいた夜

ツイッターチームは、テキストだけで他ユーザーと繋がることができ、情報収集と拡散の両方が可能で、しかも交流ができるメディア。そこを掘り下げた企画案を提出。

ツイッターについてはよく調べてきた内容ではあったが、

・すでにある自分のアカウントで発するのか、新しいアカウントを開設するのか、まずは発信していくアカウントを明確にすべき
・既存のアカウントにするなら、いきなりsnailsについて発信しても、違和感のないストーリーを組み立てるべき
・新しいアカウントで発信する場合フォロワーをどうやって増やすのか
・そのアカウントって、どこのだれで、どういう人格なのか、誰とコミュニケーションしていきたいのか、誰にどういうメッセージを届けたいのか、ペルソナが見えてこない
・企画案にある通り「内向的なスタンス」で呟いていくと、ツイッター 特性とフィットするのでは?
・性的立ち位置に悩んでいる人に寄り添ったり、4択アンケートで問題提議し、snailsの告知も行うなど多岐に渡りすぎて運用が大変
・ツイッターチームがsnailsをどういうスタンスで思ってきたのかを素直に発信していけば共感が得られるはず

と意見多数。そこで①アカウント設定 ②ペルソナ設定 ③どういう人とコミュニケーションしたいのか、その人たちは、なにに興味を持っていて、どういうコミュニケーションがいいんだろう をビルドアップしていけば、誰に絡めばいいのかも見えて、コミュニケーションやフォロー関係が生まれてくる。

ツイッターは、このペルソナさえしっかり設定できていれば、ツイッター上の他者の意見を「そのアカウントがどう思っているのか」という意見をつけて被せていくこともできるし、「こんな意見を見つけたよ」とRTしていくこともできる。snailsというブランドをそのペルソナの立ち位置でピックアップしたり、他チームの取り組みをツイッターチームが紹介する役割で十分成立していく。ツイッターチームはペルソナ設計さえしっかりできれば、WWDチームやnoteチームとは違い、文章を書くこと自体はそれほど難しくはない。

その後、出された改善策は、

①アカウント:個人アカウントでLGBTQについて急に発信していくことに疑問を持ったので、編集のがっこうの生徒としてのアカウントとペルソナを新しく設定する

②ペルソナ:現在、編集のがっこう&snails_projectに関わっている「私」。多様性について考えるうちに、世の中で起こっている性の問題(当時、トヨタの車を運転しない女性についてのアンケートで巷で話題などをピックアップしつつ)なども目につくようになってきたリアルな感覚を出していく。編集のがっこうの生徒みんなが各人多様な考えを持っていたり、頑張っていることを伝える

③コミュニケーション:LGBTQに関心を持っている人だけでなく、広告などに潜む性差別問題などにも関心がある人、学ぶこと興味のある人などがターゲット

と、3回のブレストでようやく設定できた。

深掘りしすぎて迷路にハマってしまったツイッターチーム。自分たちのLGBTQに対するスタンス(アカウントアイデンティティやペルソナ)を設定し、ウソのないスタンスで声をあげるのが、もっとも効果的との結論となった。

その後、アカウントが開設された。

https://twitter.com/henshu_snails

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インスタもツイッターも、ゼロからスタートしてフォロワーは順調に伸びていたが、アカウントを立ち上げて間もなく編集のがっこう第1期の終了と共に配信終了に。SNSは継続し頻繁に配信し続けることでしか数字的結果は出せない。メディア特性を考え、スタンスを決め、アップする写真を選択し、ハッシュタグや文章を追求するのに追われ、タイムアップしたことはとても残念な結果に。

しかし、SNS運用をより成功に導くためには、ひとつのメディアとして、コンセプトやアカウントアイデンティティを明確にすることはとても大事。世の中で活躍しているインフルエンサーたちの影ながらの努力を、今回のワークショップを通して生徒たちが実感したことは、とても有意義な体験となった。

Photo: Getty Images



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編集のがっこう 校長

「編集のがっこう」校長 兼 Pomalo株式会社コンテンツスペシャリストの澄川恭子のnote。これからのコンテンツ時代に編集力を磨こう!をスローガンに、若い才能を発掘や育成、編集力の生かし方を日々考え続けています。
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