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編集者の仕事のほとんどはマーケティングだから、この本は絶対に読んだ方がいい

このnoteには編集者として得た学びや気づきを書くようにしているので、本の紹介はしないつもりでした。
けれど、同じチームの柴田が担当した山口義宏さんの『マーケティングの仕事と年収のリアル』が、若手編集者に絶対に読んでほしい内容になったので、ここで取り上げさせてもらいます。

◆          ◆

以前から、ビジネス書の編集者と本質的に近いと感じていた職種が2つある。1つはベンチャー・キャピタリスト(VC)で、もう1つがマーケターだ。

VCは、乱暴にいえば、将来有望な起業家を見出して支援することを仕事としていて、この1点だけでも編集者と著者の関係性に似ていることが伝わると思う。

時に精神的に寄り添い、時にコンセプト策定の相談相手にもなる。
黒子のような存在だが個人の名前も売りやすい仕事であること、リターンを得るのが数年単位という時間感覚も同じだ。1人のVCが同時に担当できる起業家も十数人までと聞いたことがあって、これも編集者としての実感にあっている。

マーケターについては、初めてマーケティング施策を分解した4Pを知った時に、「これ、ほとんど編集者の仕事じゃん!」と思ったことをよく覚えている。

4Pは、『マーケティングの仕事と年収のリアル』によれば次のように説明されている。

日本の出版物はPrice(価格)が実質固定されているので、重要度はガクッと下がる。かわりにProductの一部であるPacage(パッケージ)が飛び抜けて重要になっている点が特徴だろう。Product、Promotion、Place、Packageで4Pにしてもいいくらいだ。

4Pがどんな仕事にも当てはまるのは当然なのだが、4Pすべてに主体的に関わる(=マーケティングミックスが仕事になる)点が、マーケターと編集者の共通点だと思ったのだ。

というようなことを以前から考えていたので、山口さんの本の完成は本当に楽しみにしていた。
「マーケティングの全体像が、マーケッターのキャリアや年収とひもづけて語られる」完全に新しいマーケティングの解説書だったので、編集者の仕事にも参考になると思ったからだ。

で、いざ原稿を読んだらまさに期待どおりで、編集者として必要なマーケティングの知識が改めて整理されたし、マーケターと編集者の共通点もたくさん見つけることができた。

たとえば、

◎業界の構造が似ている 
→ 給与水準の高い「ひと握りの企業」と 「それ以外」がある。マーケティングでは電通・博報堂など、出版では講談社・小学館・集英社。

◎求められる能力が同じ 
→「説明能力」が非常に重要。まさに「言葉にできるは武器になる」。

◎いくつもの流派が存在する 
→ 本書ではマーケティング業界の8つの流派を紹介している。編集者はまず2つの流派に分かれると思うが、この話はまた今度。

などなどだ。

何より、山口さんの記事の冒頭にもあるように、
「仕事の面白さを重視しているので、お金にはさほど関心はないんです」
という若い人が多いこと、そしてその後上がらない給料に悩むところもあわせて大きな共通点だろう。
 
自分も20代の時はそうだった。でも、その気持ちだけで突き進めるのも30歳まで。だからこそ、若い編集者にはこの本を読んでほしい。スキルにも、キャリアにも直接的にヒントになる話がてんこ盛りなのだ。

もちろんマーケティング業界ならではの記述もあるが、それでもそのうちのいくつかは編集者・出版社も考えるべきことのように思う。
たとえばブランディングのように、まだ一般の編集者の仕事ではないとされていることも、この本を読むといずれ編集の主な目的の1つになると思えるのだ。

ちなみに、時たま「出版にマーケティングは要らない」と言う人がいる。

それには2つの理由があって、1つはその人が本質的にはマーケティングをしているのだが(優れた実績を上げていることもある)、マーケティングについて無関心なためにこうした発言となるパターン。

これはまあいいとして、もう1つは「出版文化」とか言って本を特別視しているパターンで、これはもう本当に度し難い…!

どんな仕事も「世の中を良くする」から存在できるのであって、本や出版だけがそのルールから逃げることができるはずもない。そして、その「世の中を良くする」をロジカルに考えること、本や出版の存在価値を真剣に問い続けることが、まさにマーケティングなのだ。

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