「料理作る?」と聞かれる女-「嫁の料理どう?」と聞かれる男。スーさんのおかげでモヤモヤが晴れた話

このnoteで声を大にして言いたいことは、ただ1つだけ。

女に生まれてモヤってる!』、良書! 

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出版社所属の雇われ編集者だった頃の話。29歳で結婚したものの、別に夫の家に「嫁いだ」つもりはないし、夫を一方的にサポートするために一緒になったわけでもない。

「2人とも働き盛りなんだから、今働かなくてどうする? 思いっきり働けばいい」と思って仕事ばかりしていた。家事は9割こちら負担で、それは問題だけれども、でも夫のほうが仕事が忙しいし、私が体調を崩したときにはご飯を作ってくれるし、お互い協力的で何とか成り立っていればオッケー、オッケー。そんな軽い気持ちで新婚生活をスタートさせていた。

が、しかし。世間が考える結婚ってちょっと違うらしい。

「旦那さんに料理は作る?」

「何を作るの?」

「料理作れんの?」(「作れないよね?」という反語的な聞き方で)

何度も何度もこの質問が振ってくる。男女•世代に関係なく聞いてくる。

どうやら世間には「結婚=女が料理を作る」イメージがこびりついているらしい。

旦那さんに料理作らなくていいの?

ある書籍の入稿間近、色々ギリギリ綱渡り状態の夜10時、営業部の40代男性がわざわざ編集部に足を運んできて、目の下にクマを作って残業をしている私に向かって放った一言だ。

仕事のできる営業マンでかげながら尊敬していた人なので、「うっっわぁ〜!!!!!」とショックを受けつつも、「うちは、平日お互い夜遅くて、ご飯は別々です。休日作っています」とだけ対応して(+笑顔は忘れない)、速攻仕事に戻った記憶が…。「ここでイライラしていては仕事が進まないから、今は仕事だけに集中しろ」と自分に言い聞かせながら。

みんな揃ってスモールトーク的に「料理してる?」砲をばんばん打ち込んでくる。まあ、たぶん本当にスモールトークのつもりで聞いているのだろうけど。一般的にスモールトークとは相手を不快にさせない無難な会話のことだ。

「この質問めんどくさいなぁ」と思いつつ、ふと「夫はそういうこと聞かれるのかな?」と気になり問うてみたところ…。

「『料理を作ってるか?』じゃなくて、『嫁さんの料理はうまいか?』『嫁さんは料理を作るのか?』『嫁さんの得意料理は何か?』は、すごい聞かれるよ」とのこと。

はぁ…。

一度、夫の中高同級生の男性陣(みなさん最高学府卒のエリート)と夫、私もふくめて食事をしたときにもこの話題になった。

「嫁さんの得意料理は何なの?」

うちの夫は「ん? 焼うどん!」と一言。

夫いわく、私の作る焼うどんは絶品で店に出せるレベルらしい。ソースではなく、塩味と出汁でさっぱり仕上げるのが我が家流。私が夫に「何か食べたいものある?」と聞くと、ほぼ100%「焼うどん!」なのである。夫は基本的に人を褒めない。その夫が絶賛するのだから、私も「マイ焼うどん」を誇りに思っている。

夫の「焼うどん!」に対して、一同が停止する。「すごいね〜さすが」とはならない。

そして、エリート男子君たちは「おいお前、もっと、焼うどんとかじゃなくて、手の込んだものはないの?」と別の何かを期待するのだ。

きっとビーフストロガノフ的なおしゃれフード、もしくは肉じゃが的な家庭の味、いずれにしても「できる嫁」が作りそうなものを期待したのだろう。

「まあ、色々作るけど、一番は焼うどんなんだよ」と夫はあくまでも焼うどんを譲らない。

「夫は私の作る焼うどんが好き。私もここで『夫にビーフストロガノフと言ってよ〜!』とは思わない。2人の中で完結しているから、もういいじゃん、焼うどんで!というか得意料理うんぬんはいいから、もっと面白い話はないのか?」とモヤモヤが消えないままお食事会はお開きとなった。

どちらの件も、「なぜこの人はこういうことを言うのだろうか?」と疑問だったのだけど、別にそういう発言をする人を嫌いになるわけでもない。でも何となく、「女ということで何かを規定されていない? あなたが決めた女の枠の中に私を押し込めようとしていない?」…そんな気がしてモヤモヤモヤモヤモヤモヤモヤモヤ。そんなこんなで34歳になった今でもあのセリフが時折ぶわっと再来して胸焼けする。いやな感じ残っているのだ。

それが先日『女に生まれてモヤってる!』を読んで、モヤモヤの濃霧がだんだん薄霧に変わっていくような感覚に…胸のすく思いがした。

本の中でジェーン•スーさんは、「既存のシステムの中では、どうしても女性が自信を持ちにくいようになっていて、それは個人の問題ではなく、システムのバグのようなもの。だからあなたが悪いんじゃない」と明言してくれている。

確かに「これって社会のバグだから」って思うと少し楽になる。

「女=結婚=料理」は昔ながらの公式である。

新婚女性に「料理砲」が向けられ、男性は「嫁’s料理のクオリティ査定」をされるのも、この公式が常識になってしまっているから。

女でも夕飯作らずに残業することはある。仕事が好きなんだから。

女が男が…ではなく、人間なら生きていくために料理は作る。簡単なものでも手の込んだものでも、本人たちが美味しいと思えば全く問題ない。

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どどどどどーっと個人的な経験を語りましたが、これは社会が考える女と自分のズレに戸惑ったことのある女性におすすめの本です! 是非!

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