見出し画像

アメリカの算数の教え方は奥が深い話

こんにちは、EDUBALアンバサダーのErinaです。今回のnoteは、アメリカで次女が現地校で体験した話を中心に綴ります。次女は年長のときに渡米し、現地校のキンダーに転入。その次女が1年生のときに、学校で受けた算数の授業を通して、私が個人的に感じたアメリカの教育方法について書きます。

Erinaが書いた他の記事を読む


Edu-more plusはオンライン家庭教師のEDUBALが運営しています!

私が見たアメリカ小学校の授業

アメリカでは、”It’s up to you.”(あなた次第)というフレーズを耳にすることが多いように思います。「あなたが選んでいいよ」「好きにしていいよ」など、個人の意思を尊重する国らしく、選択するときは理由はどうあれ、100%その人の自由。それは学校の授業でも同じでした。

次女が転入して最初の数ヶ月は対面登校でしたが、キンダー後半から1年生後半にかけての1年超は、コロナ禍でリモート授業の日々。まだ言葉が十分理解できない次女のために、私は始業から終業時間まで、まいにち隣でつきっきりで授業の通訳をしていました。おかげで、私はアメリカの学校の授業を近くで見る機会に恵まれました。

<キンダーの算数の宿題> 自宅にあるものでレインボーを作り、数をかぞえる

アメリカはキンダー(年長)からが義務教育のはじまり。子どもたちは小学校に通いはじめるので、キンダーでもきちんと勉強します。まずは文字や数字に触れ始め、1年生になると算数の授業ではたし算やひき算を習うところは日本と同じ。私が驚いたのは、その1年生の算数の授業の教え方でした。

算数の教え方いろいろ

「6 ひく 2」のような一桁のひき算を教えるとき、日本でよく教わるのは「えんぴつが6本あります。ともだちに2本あげました。さて、残りは何本でしょう?」という教え方。もともとある数から、引く数を取り除いたあと、残る数は何になるのか。この求め方が一般的だと思います。

小学校の算数のテキスト


ナンバーラインを使って教える

次女が教わった「6ひく2」の解き方は、日本の考え方とは別にもうひとつありました。ナンバーライン(数字の書いた線)を使い、2と6が線上のどこにあるかをまず確認し、小さい方の数(2)から大きい数(6)に向かってJump Upしていきます。2からいくつジャンプすれば6になるのか。4回ジャンプすれば6になるので、「6ー2=4」という答えになります。たしかに考えてみればそうなのですが、日本式の解き方しか頭にない私にはまさに目からウロコでした。

子どもたちの机に貼ってある早見表(黄色い定規の下にあるのがナンバーライン)

そして、この教え方のときに先生が使っていたのはナンバーラインですが、日本式の教え方(残りはいくつ)のときはおはじきを使っていました。求め方によって、子どもたちがわかりやすいように道具を変えていたのです。二桁の引き算になると、さらに答えの求め方のバリエーションが増えるので、子どもたちの混乱を防ぐためにも道具は大活躍。4種類ぐらい異なる求め方を教わったときに、子どもたちから「じゃあ、どのやり方で計算するのがいいの?」という質問が飛び交い、先生は ”Well, it’s up to you!” と言っていたのを覚えています。

幼い子どもたちに、いろんなやり方があることを教えると、当然ですが混乱します。子どもからしたら、複数あるやり方の中から選ぶこと自体が難しく、かわりに大人が選んであげる方がいいのかもしれません。でも先生としては、やり方はひとつではないこと、ひとつの答えを導き出すにもさまざまな方法があること、そしてその方法は人によって選ぶことができ、どれを選んでもまちがいではないことを教えたかったのだと思います。

根底にある考え方

この教え方に、私は胸を突かれました。大人が教えやすくて、子どもも理解しやすい求め方(考え方)だけを教えるのも方法のひとつですが、そうすることで物事を一片からしか見ることができないかもしれない。複雑ではあるけど、さまざまな求め方を教えることで、物事を多角的に見る力が養われ、その中から求め方の取捨選択をするのも問題解決能力が育まれていいのではないか。たかが1年生のひき算ですが、とても奥が深いのです。

ひき算ひとつに、これだけの時間とエネルギーをかけて教えていくアメリカなので、当然かけ算や二桁同士のたし算に進むのはゆっくり。たし算やひき算を2年生修了まで根気よく教え、かけ算は3年生からのアメリカ。2年生の秋にはかけ算を教わる日本からすれば、すこし学習のペースがゆっくりのようにも思いますが、知識の定着を考えると、これぐらいのゆとりがあるのもいいのかもしれません。