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【Edu-more plusライター企画】日本人学校生が一時帰国で中学受験に挑んだ話

こちらは、Edu-more plus会員が海外子育て、海外での教育や生活、帰国受験など海外赴任ファミリーの実体験や想いを綴っていただく【Edu-more plusライター企画】の記事です。

はじめまして、ベトナム・ホーチミン在住のManyuです。
2024年度の中学受験を終えたばかりの12歳の長男と、4月から小1になる6歳の長女がいます。

過熱し続ける中学受験に翻弄されたこの3年を振り返りたいと思います。
私自身、インドネシアの帰国生で帰国大学受験を経験
していて、その当時から帰国子女は星の数ほどいると分かってはいましたが、これほどまでに帰国生の中学受験が複雑化しているとは思いもよりませんでした。


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我が家の場合、夫の駐在の任期が定められておらず、3年位だろうと予測はしていましたが、その予測も外れてまだ駐在は続いています。そのため急に本帰国をした時に進学に困らないようにと家を残し、受験準備をしていました。
また今後どこの国にいつ海外赴任になるかわからないこと、子供達の言語教育は日本語を母国語に英語はあくまでもツールとして習得して欲しいという思いがあり、日本人学校に通わせています。

中学受験する?しない?の葛藤

「中学受験をする」と決めたのは、2021年の4月、息子が小4の春でした。コロナでロックダウンしていた4年生の1年間は、塾もオンラインのみ。ほぼ何も身についていなさそうな1年間でした。
ホーチミンの日本人学校生は首都圏からだけでなく、日本各地から集まっている生徒が多い印象で同じ境遇の(中学受験を志す)子が周りにいないということもあり、息子のモチベーションを保つのが一番大変でした。
ようやくコロナによる制限が明けた2022年、せっかく海外に住んでいるのだから色んな体験をさせてあげたいという親心と、数年後の本帰国を考えた時に後悔しないよう受験準備もしておきたいという思いとの葛藤が常にありました。

変わりゆく街の様子。
地下鉄の工事が進み、あっという間に車線の道路が開通   
 左)2021.1 / 右)2023.3

情報がない!どこから調べれば良いかもわからない

非英語圏からの帰国生は帰国生全体の6−7割とも言われています。しかしながら帰国生の中学受験情報を調べてみると現地校やインター校に通う「英語力」を武器にできる帰国生受験の情報ばかり。
非英語圏に住む日本人学校生向けの情報は意外なほど少なく、手探りの状態でした。英語を受験教科には入れられない帰国生。一般受験と変わらない4教科の受験勉強をホーチミンで続けるにはハードルが高く、2教科で勝負するしかないという消去法でした。

非英語圏の日本人学校に通う、英語ができない子は帰国生とは呼ばないのかと思うほど2教科受験の帰国生には、どんな私立中学校があるのか、どういう学校が息子に向いているのかなどの情報は、塾に通っているだけでは全く入手できませんでした。
そもそも中学受験の知識が夫婦共に全くなかったため、先輩ママから教えてもらったサイトを頼りに色んな中学校のオンライン説明会や、帰国生の支援サイト、SNSの情報などを頼りにして息子に適した受験を検討していました。

驚いたのは、小5の一時帰国で学校見学をしようにも1ヶ月以上前にwebサイトのクリック争奪戦で予約が取れないと説明会にも参加できないことでした。後に、直接学校に問い合わせをして事情を話すと一時帰国中に見学をさせてもらえる学校がいくつもあり、小6の夏休みの一時帰国が終わるまでには、見学したい学校はほぼ全て見学でき、志望校を絞ることができました。

百聞は一見にしかずとはよく言ったもので、実際に足を運ぶと子どもも親も、その学校の雰囲気や心構えなどを掴むことができ、受験をより主観的に捉えられて良かったと思っています。

カラフルなプラ椅子が並ぶ、路上カフェ

一般受験と帰国生受験のちがい

近年、一般入試でも4教科入試だけではなく、適性検査型・総合型入試、2教科入試、1教科入試などの多様な入試形式がありますが、帰国生入試も同様に、4教科、 2教科、オンライン入試、英語1教科、作文、面接など多様化が進んでいます。

普段、学校でも家でも日本語しか使っていないのだから一般受験と同じ勉強をしていれば良いと思っていました。ところが蓋を開けてみると、入試の開始が11月からと早いため、出願書類の準備や過去問の練習、面接の準備など、計画的に進める必要がありました。
また、海外生活ならではのエピソードを面接ネタとして準備し、息子が自分の言葉で話せるように練習しなければならない面接対策。日本語に囲まれ、言語の壁を感じることもなく、あらゆる面で安全に配慮された生活を送っていた我が子の海外体験をまとめる作業は至難の業でした。

受験不向き?!な性格

受験勉強の本腰が入ったのは小6の9月以降かもしれません。と書くと短期戦で仕留めたように見えますが、過去問を解き始めてようやく危機に直面していることを実感したといった感じです。
息子はプレッシャーをバネにできる程強い心を持っている訳でも、タスク管理ができるほどの精神力が備わっているわけでもない。肝は据わっているけれど、今年は思春期も相まって、なにかと衝突しては前進することを繰り返していました。
中学に入学してからのことも考えると自走できるように、親としてはある程度本人に勉強管理は任せたいところでしたが、振り返ると受験が始まってからの2ヶ月間はまさに親の「管理、監視、並走」だった気がします

いざ受験開始…


SNSの帰国生受験記を覗くと、高い英語力を武器に短期間の努力で超難関校を突破した成功体験ばかり。11月の受験が始まってからは、意図的に情報を仕入れないようにしていた時期もありました。
大好きな学校を休学し、母子3人で日本に一時帰国してからの1ヶ月間は、息子も私もトンネルの先が見えないジェットコースターを走り続けている感覚でした。

親子でとことん話し合って挑んだにも関わらず、当の本人は「隙あらばサボりたい、抜け出したい」の連続。押さえ校として序盤に受験した学校は、立て続けに不合格が連続し、息子のメンタルもかなり不安定に。妹への八つ当たりや私への暴言など、今振り返っても不安と戦う息子の言動は荒んでいました。この状態はきっと辞めることが正解で、引き返させなかったことは親の責任、辛い思いをさせる意味があるのだろうかと何度も受験を諦めようとしました。
「今」しか見えていない息子に、幾度も繰り返し話した「未来」の話。「今の頑張りや喰らいつく力が未来を切り拓く力になるよ」と言っても渦中の本人には大して響かず。

観光客の活気を取り戻したNguyen Hue通り

結果はいかに


自分で足を運んで選んだ志望校の中から何としても合格したい!その一心で取り組んだ12月の受験では、どうにか合格をつかみ取ることができました。この結果には本人はもちろん家族全員、心の底から安堵しました。

4月から始まる楽しい中学校生活を想像しながら受験期を乗り越えるのはなかなか大変でしたが、親子で話し合いながら息子は目標に向かって突き進んで成長し、私はサポートに徹した受験期間だったと感じます。
家族会議を重ねたあの日々は有意義な時間だったとようやく思えるようになりました。
正直なところ今は「もう2度と中学受験のサポートはごめん!」という気持ちですが、6年後の娘の進学に備えて、親子の対話やこまめな情報収集は欠かさず、来たるべき時に備えたいと思います。