かつてエピクロスはいった

「われわれは哲学するふりをすべきではなく、本当に哲学をなすべきである。われわれがもとめるのは健康に見えることでなく、健康になることだから」

と。「健康なふりをすることより、健康になることのほうが大切だよ」というわけだ。しかしこれは完全に間違っているのである。

故障と修理

　こう言い換えることができる。あるときQuest2が故障して、こちらから相手に聞こえる声は全く問題ないのだが、相手の声が多少音質が悪くなって聞こえるようになった。ぜひ修理に出したい。あるいは、こちらが聞いている声や音には全く問題ないのだが、マイクが故障したのか、相手に届く自分の声が「音質悪くない？」と言われるようになった。これも修理に出したい。

　しかしもーちは気づいた。相手に届く声に問題がなくて、自分の環世界が劣化しているだけなら、相手にとっては感知することができないんだから、修理に出す意味がないよな？と。
　あるいは、もしお金がなくてどちらかしか修理に出せないのなら、まずなんとかしてもらうべきは、相手の音質を損ねている後者なのだ。
　VRチャットというのはそういうゲームである。

気づき

　もちろんこれは極端でしか無く、バランスの問題だ。しかし健康になることよりも健康にみえることのほうが大切な場面もある。

　そもそもエピクロスだって、ある日突然気づいたんだと思う。「世の中本当に哲学したいやつじゃなくて、哲学するふりするひとばかりが多くね？しかもそういう人に限って世間からの評判もよいっておかしくね？」と。そうして「われわれは哲学するふりをすべきではなく、本当に哲学をなすべきだよ、だって健康に見えることでなく健康になることのほうが大切でしょ？」と。
　しかしこの当たり前に帰ろうというアドバイスは当たり前に聞き入れられなかったので、いまもずっと哲学するふりをすることは哲学するよりも世間の評判が良いし、本当に健康になることではなく健康に見えることのほうがより大切なままというわけなのだ。

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