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インタビュー:ポール・ワトソン "ジョエル・ピローを売った理由、既に見据えるは1月のマーケット"

ルートンのCOOを辞して新生スウォンジーにスポーツダイレクターとして加わったポール・ワトソン。チーム作りはプロセスが最も大事なことと掲げ取り組んだ前職。その仕事は、見事に花が開きました。ラッセル・マーティンの"エクストリーム・スウォンジー・ウェイ"から現実路線へ。スウォンジーの新しいチャレンジがスタートしています。

今回は2023年9月9日Wales Onlineに掲載されたトム・コールマン記者によるインタビューの翻訳記事を掲載します。


スウォンジー・シティのスポーツディレクター、ポール・ワトソンがWales Onlineのインタビューに応じ、今夏のこと、ネイサン・ウッドのこと、そして彼らが目指すプレミアリーグのクラブモデルについて語った。

夏になると訪れる"スウォンジー・シティ新時代の幕開け"。今年もピッチ内外で大きな変化が起こったが、恐らくこれまでで最も大規模なものとなった。

スカッドの全面的な見直しが行われただけではなく、マイケル・ダフという新指揮官が指揮を執ることになった。クラブの要職を務めるメンバーも何人か変更された。そして、アンディ・コールマンがクラブの新会長に就任し、ジュリアン・ウィンターが退任した。

ポール・ワトソンもニューカマーの一人で、6月末にスポーツダイレクターに就任した。多くの面において、スウォンジーの新たな夜明けの重要人物であり、今までに見られなかった採用活動をマネージメントしている。彼の就任から実務までの期間が短期間だったことを踏まえると、この夏は吸収するべきことが山積みだったと本人も認めている。

「我々は新しい監督、新しい会長、新しいスポーツダイレクターを迎えた。また、多くのスタッフが前監督と共にクラブを後にした。もちろん舞台裏での変化も大きかったが、やりがいはあったし、バックルームスタッフも一丸となることができた」

チャンピオンシップ降格以来、スウォンジーにとって加入選手数が最大となり、デッドラインデーにサインした4名を含む13名の選手が加入。結果的にスカッドは開幕時よりも強固なものになったとワトソンは考えている。

「ここに来た当初考えていたファーストステップは、ひとまず達成できたと思う。どんな状況になろうと、チームを改善することがミッションだ。我々は選手加入によってさらなる強化を目指している。この先2,3回(今冬、来夏の)移籍マーケットに向けて準備を進めつつ、現在の状況を評価していく予定だ」

ここ数年のなかでは、間違いなく成功したリクルートの一つだと言っていいが、ここ数週間は全てが順風満帆というわけでもない。

注目となったジョエル・ピローの退団は、恐らくワトソンと彼のチームの仕事における数少ない痛手のひとつとなった。このオランダ人選手は過去数ヵ月に渡って様々な憶測が飛び交った後、1200万ポンドでリーズ・ユナイテッドに加入した。

ワトソンによると、オランダ人を残留させようとする試みは確かに行われたという。しかし同氏は、主に選手陣営からの要求が残留交渉を不可能にしたと語る。

「ジョエルとはたくさんの会話をしたし、もちろん他の多くのプレーヤーとも話をした。彼らに伝えたのは、今後、私が公平であることと、正直であること、そのことを約束した。最終的にはジョエルを引き留めたいと考えていたが、彼とその代理人が考える未来は、私たちのフットボールクラブの組織(のビジョン)とは重なることがなかった」

「彼は大きな影響力を持っているし、そのことでクラブの構造を壊すことはできないと感じたんだ。そこにオファーが届いた。内部評価を行った結果、(リーズからの)オファーは(クラブの移籍条件の評価を)満たされていて、一部の条件ではそれを上回っていた。ROI(投資対効果)を得るなら、新契約にサインする意向がない選手に対して、パラシュートペイメントを受け取るクラブと交渉で競争することはできない。このクラブにとってベストな選択は自ずと決まっていたんだ。そして我々はその資金を再投資して、チームを強化することができる」

スワンズでは過去2シーズンで40ゴール以上を決めており、ピローの不在は間違いなく打撃だが、ワトソンはチームには今シーズン戦えるだけの創造性が十分にあると確信している。

「より多様性があると思うし、プレーにもあらわれてくるだろう。獲得した選手にはそれぞれ特徴があって、いくつもの方法でプレーすることが可能だ。ピッチ上で改善が見込めず、ゴールが遠のく算段ならば、ジョエルを売ることはなかっただろうね」

(スワンズから)ボーンマスに移籍して2年、前線の穴を埋めるためにジャマル・ロウがシーズン限りのローンで戻ってきた。また1月にマーケットが再開したら、クラブにとって長期的な改善策を講じることも示唆している。

今は夏が過ぎたばかりだが、次の1 月と翌年の夏に向けた計画はすでに始まっているのだ。

「我々は短期的な解決策としてジャマルを連れてきた。ただ1月と来年の夏には長期的な解決策を見つけたい。現在、在籍選手の契約状況を査定して、さらには他クラブの選手の契約状況もウォッチしている。すでにそういったオペレーションを始めているし、2、3手先のウィンドウでどう動くかを考えていきたい。クラブが前進できるように、ウィンドウごとに強化をして、より良いスカッドを作りたいと思っている」

「再投資する資金はある。ジョエルの取引の分もそうだ。ただ、この夏は少なからず出費もした。ポイントでプレミアリーグの選手をレンタルもしている。本来はクラブ所属の選手を揃えたいが、全てを評価してから正しくことを進めていきたい」

スウォンジーは近年、所属選手との新契約締結の動きが遅すぎると批判されている。先ずは全選手の契約状況を確認して評価することが、今後の考え方の重要な要素となるだろう。

ジョエル・ラティボーディエやライアン・マニングは今夏早々にフリートランスファーで退団し、スティーブン・ベンダやオリヴィエ・エンチャムは契約の最終年ということもあり売却された。ジェイミー・パターソンは、現在の契約があと1年となっている数少ない一人だ。

「それは間違いなく我々が改善できる分野だが、その部分はすべてのクラブが改善すべき部分だ。この夏、多くの選手がフリーでクラブを後にした。契約が残り一年になると、選手たちはボスマン裁定の事を意識し始めるんだ。私たちがすべきことはフットボールクラブを守ること、それに尽きる。選手の契約延長がそこに紐づくのならそうすべきだと考える。現在、チームを評価しているところだが、誰が来夏、さらに翌年の夏で契約が切れるのかを把握している。またこの類のオペレーションで、どこかに脆弱性があるのか等含めて確認している」

ワトソンは近いうちに新契約を結ぶ可能性がある選手の一人としてネイサン・ウッドを挙げた。21歳の彼も現契約が1年となっている選手(2024年6月30日まで)だが、クラブにはさらに12か月延長するオプションがある。

ウッドに対しては、夏のウィンドウ終盤にサウサンプトンから2度の入札があったが、結果セインツのトライは失敗に終わった。一部報道では彼がクラブを去ることを要求したとさえ報じられたが、ワトソンはその主張を否定した。

「我々はすべての選手と話すことになる。彼とも(新契約についての)会話は出てくるだろう。ネイサンは若手イングランド人CBで、非常に需要がある選手だ。彼に対する(セインツからのオファーに対しての)評価は、決してクラブの評価を満たすものではなかった。私はジョエルの時と同様、ネイサンと話をして、彼にも公正かつ真摯に対応すると誓った。彼の将来を見据えて、このクラブで成長して欲しいと伝えた。最終的に彼は『OK、ここが僕の居場所だ。残留してプレーできることはハッピーなこと』と言ってくれたんだ。ジョエルのように、行ったり来たりする長引く会話はなく、とてもシンプルなものだった」

ウッドは昨シーズンのラッセル・マーティンのプランにおいて重要な役割を果たしていたが、ダフもまた彼を同様に高く評価している。

ウッドだけではなく、マーティン時代の"生存者"は元バーンズリー監督のダフの下でいくつかの調整が必要だった。彼のメソッドは前任者のそれとは違うものだったからだ。

しかし、ワトソンはダフのリーダーシップの下でも、伝説的な「スウォンジー・ウェイ」のベースは継承されると主張する。

「目指すべきところは変わっていない。その哲学には、さまざまなバリエーションがあるということだ。今シーズンを見ても、我々はポゼッション、パス数、シュート数が(相手より)上回っている試合のほうが多い。過去2年間はある意味極端だったと思う。本当は柔軟性と(戦術の)進化が必要だった。毎試合同じような展開になることはないからね」

「5試合消化したが、まだまだこれからだ。やるべきことはたくさんある。もちろんそれは、相手よりも多くのパスを回して、より多くのチャンスを生み出すポゼッションベースのチームになるというスウォンジー・ウェイの原則を持ってやるべきだ。そのことは分け隔てなく理解する必要がある。マイケルも含めてみんなそう思っている。プレーにはバリエーションが必要だが、流れるような攻撃を見せてファンの目をくぎ付けにしたい。攻撃的なフットボールを目指したいんだ」

「スウォンジー・ウェイについて語るとき、ファンはウインガーやセンターフォワードのことを思い浮かべるだろう。彼らを魅了してきたスタイルだ。これが今後まさにやりたいことで、つまり目的を持ったポゼッションが必要だということだ。バルセロナのジョゼップ・グアルディオラのチームを振り返ってみれば、それが本来のティキタカだった。今の彼のチームを見ると、ピッチには6フィート4インチ(195cm)のディフェンダーが3、4人いて、ボールを頻繁に動かしている。フットボールは日々進化しており、それにアジャストして前に進まなければならないと思うが、ポゼッションベースのアプローチは間違いなく我々が目指すところだと思う。それは直近5試合でも証明されたと感じる」

彼の仕事(SD)のことを考えると、ダフのピッチでの成功のために選手編成をするのが彼の仕事と考えるのが普通だ。だがワトソンは選手をチームに迎え入れるプロセスが、チーム全体にとって重要であると考えている。

スウォンジーはチャンピオンシップのライバルより先に、まだ見ぬ原石を発掘しようとしている。データ分析は今後の採用活動の中心となる。適切な人材をメンバーに加え、成果が出せることを証明しているクラブもある。

「誰もがブライトンの採用方法について話している。彼らは選手を500万ポンドで買い、1億1,500万ポンドで売っている。その数字を差し引けば、採用方法の原則とその過程はとても洗練されており、素晴らしいプロセスを持っているんだ。彼らはスポーツディレクター、データサイエンティスト、リサーチャー、CEOのトニー(ブルーム)が一体となって活動している。私たちもプロセスを重要と捉え、自身のバージョンを構築したいと考えている」

「だから、決して一人の人間に(決断を)丸投げするべきではないし、監督や一人のスポーツダイレクターの採用に際しての権限を集中させてはならない。全員にとって、そして最終的にスウォンジー・シティにとって最高の選手だと言えるかどうか。一人の人間の決定ではなし得ないが、(クラブの)プロセス上のことあれば、もう少し視野を広げることができる。ブライトンが獲得した選手を見てみると、ファンがその(リクルートの)プロセスを理解しているのが分かる。なぜ?どのように?誰を獲得するのかをみんなが理解しているんだ。最終的に目指すところはそこだ。それを目指してチームを組み立てていきたいと思っている」


*元記事は下記のリンクからご覧ください。


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