見出し画像

『いま、反転のまっただなかで』プレレビュー Vol.2 ― 咲良

咲良(会社員)
1997年生まれ。福岡県出身。 京都芸術大学(旧 京都造形芸術大学)舞台芸術学科を卒業後、東京を中心に活動。現在は福岡市在住。

ささやかな日常に紛れる“事件”
街を歩けば、ブルーエゴナクの物語に巡り逢えるかもしれない。
そう想起させる今作品『いま、反転のまっただなかで』
生ぬるい涙が頬を伝う一瞬を、どうやって作り上げているのか


2024年1月20日(土)18:30
@北九州市立生涯学習総合センター3階
稽古場では、音が流れていた。

挨拶。賑やかな会話。机を動かす音。ピアノを弾く音。舞台の場ミリを引く、メジャーの音。電子機器から流れる音楽。その音に紛れて、寝息をたてる人。ご飯を食べる人。靴下でモップをかける。絶え間なく、リレーのように鳴り続ける音たち。

赤テープで区切られた3.5×3.5間(約6.3×6.3m)の正方形の舞台の上で、人々は物語を動かし始める。

稽古場での1シーン
(撮影:岩原俊一)

演出家・穴迫信一氏による新作『いま、反転のまっただなかで』
人間の空虚さと、本質的な甘さと弱さから得る安堵感。
その奇妙さに楽しくなってくる。
俳優を知り尽くし、当て書きされたからこそ生まれるリアルさ。

舞台は、冬の鬱然とした地方都市。アイ(小関鈴音)が失踪した事をきっかけに、物語は非現実な展開へと進んでいく。

「本当の事(現実)はなかなか動かないから。アクションとリアクションという言葉があるように、“状況を変化させていく”という事を、意識的にやってみてほしい。テキストはあくまで文字でしかないので、場面を動かすつもりでやってもらえたらなと思います。」

稽古の振り返りの場で、演出家・穴迫信一氏が述べた言葉が、心に残った。
観客の心を動かすために必要な何かを、穴迫氏は俳優陣に求めているように感じた。

稽古場での1シーン
(撮影:岩原俊一)

メンバー5名と、客演4名。
どの俳優も役に真摯な印象を受けた。

テツヤ(悠太)は世渡り上手。甘え上手で末っ子感を醸し出していた。マアチ(姉川華)の姉御肌とギャルっぽさは、本人から出る雰囲気が役柄に生きていて気持ちいい。川上(高山実花)は凛々しい風格に惹かれる。ユーモアの振り切りも素晴らしい。小橋巡査(加茂慶太郎)は人の良さ、実直さが身体から滲み出る。予想外の面白さも良い。アイ(小関鈴音)は不思議さを身に纏う、気になる存在。アイママ(内田ゆみ)は人間の甘さと弱さ、そして愛を象徴するキーパーソンを演じる。また、男(寺田剛史)の冒頭モノローグがとても印象的だった。雪解けのように会場を溶かし、物語が動き出す瞬間を感じた。

まだ稽古は中盤であり、本日演じている場面を見ることができなかった、田中凜、なかむらさち、の登場も楽しみだ。

ブルーエゴナク 新作本公演
『いま、反転のまっただなかで』

作・演出 穴迫信一

出演
悠太   小関鈴音   なかむらさち   加茂慶太郎   田中凜
内田ゆみ   寺田剛史   高山実花   姉川華

2024年
2月2日(金)19:00 
2月3日(土)14:00 / 19:00
2月4日(日)14:00

会場:J:COM北九州芸術劇場 小劇場

公演詳細・予約
ブルーエゴナク 新作本公演 『いま、反転のまっただなかで』 | ブルーエゴナク (buru-egonaku.com)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?