見出し画像

穴迫信一×多田淳之介(東京デスロック主宰)|ブルーエゴナク 『ふくしゅうげき』アフタートーク①

ブルーエゴナク『ふくしゅうげき』東京公演
9月13日(木)19:30はゲストに多田淳之介さん(東京デスロック主宰・富士見市民文化会館キラリふじみ芸術監督)をお迎えしてアフタートークを行いました。
トークの抜粋文章となります。
※作品の内容について話しております。ご注意ください。

~挨拶後~

多田 今までの作風と「ふくしゅうげき」は違うと聞いて。この芝居からブルーエゴナクはちょっと真面目になったというか、ちゃんとした演劇を作るようになったみたいな話を聞いたんですけど、それはホントですか?
穴迫 誰から聞いたんですか 笑。そんなイメージがあるんですね。
多田 うん、あるみたい。
穴迫 
でも「ふくしゅうげき」は他の作品と違うというか、異質な感じはあります。
多田 ラップ合戦してるようなイメージです、エゴナクって。
穴迫 やったことはありますね 笑。ただ、歌唱法としてのラップを取り込んでも、もうみんなやってるし、作品自体の構造に取り入れられないかなって。ちょうどそういうことを考え始めた時の作品です。

多田 「ふくしゅうげき」は初演からこんな構成なの?
穴迫 変わってないですね。クラブミュージックで進んでいく1場、静かな2場、波の3場、の3場構成です。
多田 今回のメンバーは、北九州の人がほとんど?
穴迫 そうですね、ゆかりのある方だったり。
多田 国内の色んな地域の方々とお話する機会があるんだけど、国内でも地域によって特色があるような気がしていて。北九州は飛ぶ劇場が活躍してるからその影響を受けている人は多いと思うけれど、穴迫君は自分の演劇って、何に影響を受けていると思いますか?
穴迫 僕はそもそも「お笑い」とか「音楽」が好きで。そこから演劇に興味が広がっていきましたね。演劇を見て演劇を知ったわけではなくて違うところから。
多田 演劇を始めたきっかけってなんですか?
穴迫 17の時に、文化祭でやってみて。
多田 あ、高校の文化祭なんだ。
穴迫 それから友達集めてライブハウス借りて公演し始めました。最初は暗転が20回近くあるコント公演でした笑。なんの知識もないから。
多田 転換するなら暗転だろ、みたいな笑。
穴迫 そうそう、全部暗転にしてましたね。それでその後に、北九州芸術劇場でKAKUTAの桑原さんのリーディング公演「甘い丘」に18歳で受かって。
多田 そうか、そこからもう桑原さんなんだ。
穴迫 そうなんです。そのリーディングに参加させてもらって、あ、こんな場があるんだっていうのを初めて知って。それから劇場にお世話になることが増えていきましたね。

多田 どういう気持ちでこの演劇を作ったのか作り手として気になって。みんなでやってる波みたいな動きはなんで作ったの?
穴迫 あの動きは、振付の吉元良太君によるものです。「ふくしゅうげき」の初演から彼と一緒に作品を作るようになって。その公演はエゴナクが北九州芸術劇場での初めての公演だったんですよ。
大きいところだから、画というか、ビジュアルを意識して演出していこうと最初からそういう思いがありました。今までやってきたライブハウスのサイズ感だときっと通用しない。だから振付の方と一緒にミザンスだったりを細かく作ろうってなった時に、画的なインパクトとして出てきたのが波の動きだったんです。作品のテーマが海ということもありました。

多田 僕も演劇をやりたくて始めた訳じゃなくて、バンドとかやってて、ある意味演劇のアンチというか、正面向いてお客さんを見ちゃいけないとか考えたことなかった。今回の舞台もマイクが2本立ってますね。
穴迫 再演する度に「マイクなくすか今回は」って話になるんですけど、いや、あった方がいいって毎回戻ってきてるんで必要なものなんだと思います。
多田 頑張れば地声でも聞こえるんだろうけどね。
穴迫 そのラインでやってます。
多田 僕もハンドマイク好きで、ピンマイクはなんかいさぎ悪い気がして嫌いなんですけど。
穴迫 僕もハンドマイク持ってる画とか、マイクに訴えかけてる画とか好きですね。
多田 この段差も気になりますね。これさえなければ舞台作りやすいのにね笑
穴迫 その通りですね笑。この段差は初演の時には無くて今回からつけたんですけど、浜辺と中華料理店を両立させなくちゃいけなくて、平らな床だけでやるにはアクセントが必要だなって。俳優さんの波の動きは決まってたから、あの動きに負荷がかかるようにも作りました。
多田 カーテンも今回から?
穴迫 そうです。
多田 絶対あった方がいいね。
穴迫 ありがとうございます。

多田 結構こういう復讐ものというかそういうのって、最終的に人間って愚かだよねってなりがちだけど、そうじゃない感じが好感がもてました。
人ってどうせ腹黒いじゃんって話をしても、あまり劇的じゃないなって。
かといってピュアな訳でもないけどね。で、最後のシーンはなんなの?笑。
結構なクエスチョンマークがアゴラに飛び交ったと思いますけど 笑。
穴迫 それも狙いのひとつではあります 笑。前回までのラストシーンを改めて見直したら、格好つけてる感じがしてちょっと気持ち悪くて。なので新しいエピローグを作りました。
「ふくしゅうげき」という作品が期せずして不幸になっていく人々の話だとするならば、エピローグだけは期せずして楽しくなっていくっていう時間を描きたいなと。こういう時間も不幸の時間の中に含まれていたのかもしれないという希望のつもりです。

多田 いや面白かったな。自分も作品を作るので人の作品は「なんなんだろう、この時間」って過ごす方が楽しいから。
穴迫 地域性について何か感じましたか?
多田 作家性は作家ごとに違うし、俳優さんは知ってるパーツはあるんだけど、組み合わせ方が違うなって印象はありました。
で、すごい細かい話なんだけど、着替えるのに小道具を使わないとことか、その辺が結構好きで。特に水たまりを飛び越えるシーンは秀逸だなって。
それを見た時に演劇力というか嘘をつく力って大切だなって。サブリミナル的な効果もあった。わかりやすく、なおかつカッコつけずにやる時とかに必要な基礎的な筋肉というか。鍛えてるなあと。
それは、北九州でいろんな人と作品を作っている中で鍛えられたものなのかな。
穴迫 それは恐怖でもありますね。北九州では小学生とか高校生とか、普段お芝居を見ない市場とかでお芝居することも多いんです。なので多田さんが仰ったように、カッコつけずに、なるべく演劇の根本の部分からどう遊べるか、飛躍できるかを考えることが多くなっていくんですよね。そうすると、もっと尖ってていいのに気付かぬうちに丸くなっちゃう部分とかがあるのかなって。本当はもっとエッジが効いてないとなとか思ってました。でも今仰られたように、北九州を拠点に全国でも通用するものを作るときに、この力は必要なものだと思っています。だからとても嬉しいです。
多田 使えるもんはなんでも使った方がいいよ。
穴迫 そうですね
多田 強度とかエッジとかは全然もっと違う部分でいけると思う。
まだ20代でしょ。モノレール公演何年目?
穴迫 5年目です。
多田 23歳から、運行するモノレールの中で作品を発表する、って経験はなかなかできないから。
いろんな地域で作品を作る人達が、東京で地域の劇団を応援する企画で、東京の人達が見るって、いい関係だなって。もっとそうなっていくといいな。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?