『波間』稽古場レポートvol.2
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今日も京都芸術センターでの稽古。筒井さんはUrBANGUILDにて『3CASTS』に出演されるみたいでお休み。前回稽古から空いた期間に作家が書き上げた戯曲を冒頭から読み合わせる。まだ全体像は見えないが、声に出して一つずつ確かめていく。
今回の公演のあらすじは以下のようなものになる。
「死ぬことを決意したある青年が体験する最後のフィクションは、死ぬ日の朝に見た夢。夢の中の見知らぬ街で起こる混沌の一夜を通して、フィクションと現実のねじれながらも有機的な関係を描く。」
前回のレポートでも触れた通り、やはり「夢」が大きなキーワードになるようだ。自殺という超現実的な事象を目前として見た「気がかりな夢」について男が語り始めるところから物語は始まる。
彼の語る夢の中では、ぼやぼやした整合性の取りづらい会話が紡がれていく。彼がやってきたコンビニで出会った女性は、どんよりした天気の雲のように、掴めそうで掴みどころのないことをつらつらと語る。その台詞は彼に向けて話しているようでも、彼女の独白のようにも聞こえる。これは僕が思う、ブルーエゴナクの、そして穴迫の書く戯曲の面白さのひとつだ。それはモノローグとして観客に語りかけているように思えていたのに、次の瞬間には対象を失い、別のどこかの誰かに投げかけていたり、語っている人物が自分自身にしまい込んでいるようにも聞こえてきたりする。一つのセリフの中で対象との距離が巧みに切り関わっていくこの奇妙な遠近感は、これまで僕が観たどの作品にも言えることだが、今回はそれに「夢」というテーマが加わりさらに不思議な印象を抱かせる。まるでしんと静まり返った早朝のようにゆらゆらと靄がかかっているようだった。
前回の稽古同様、男が気がかりな夢から目覚めてコンビニに向かうまでは、音楽に合わせ身体で夢の中を立ち上げていく。同じ音楽を何度も流していくうちに、俳優たちも感覚を掴んできて、起点のようなものを見つけ出しているように見えた。音楽のリズムとは違う、シーン(場面)としての身体のリズムが徐々に見え始めていて面白かった。前回出演していた重実さんも、今回が初参加の今村さんも、どちらもダンサーとしても活躍されているのもあって、2人は音を身体で掴む感度が凄い。稽古場でも、ノンバーバルな空間の立ち上げ方について、音楽と身体の対応のさせ方について積極的に意見をいただく。前から観ていた僕には、2回目のこの段階でもうすでに、曲中の展開と呼応するようにシーンにも波のような展開が生まれつつあるように思った。
(おわり)
本公演は北九州公演もございます。
お時間よろしければ是非ご来場ください。
次回の稽古場レポートもお楽しみに!
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