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あなたのビジュアルコミュニケーションは正しく行われているか?

これは執筆者である江口克のブログ「キャッチボールをするような」の2016.12.1の記事です。オリジナルで読みたい方はこちら

2016.12.1

前回に引き続き、今回も視覚における色の作用について話そうと思う。というのも、目・鼻・耳・口・皮膚の五感のうち、目、つまり視覚から受け取っている情報量が極めて多いことは誰しも一度は聞いたことがあるだろう。それは日常生活でもビジネスシーンでも強い影響力を持っている。
 
デザインやアートを仕事にして街を歩いたり、人と会っていたりすると、色々と驚かされることがある。いい驚きのときは発見になるが、一方で目を疑うような場面と遭遇することもある。奇遇にも今年は別々の場所で、同じ色の使い方について目を疑う場面があった。

色の組み合わせによる作用。

「黄色+黒色」という組み合わせがある。どちらが地でもいいし、図でもいい。文字にするとよくわからないかもしれないが、注意喚起を促すマークや、道路標識の警戒標識で使われる色の組み合わせだ。国土交通省によると警戒標識とは「道路上で警戒すべきことや危険を知らせ、注意深い運転を促すためのもの(※1)」であり、その標識を見た人に危険を知らせなくてはならない。つまり、視覚としてはコントラストがとても強く、眼にとって刺激が強い組み合わせになっている。そして、道路標識や工事現場などで「危険」を知らせるために使われることが多いため、私たちにとっても「黄色+黒色」という組み合わせは、使い方によっては「危険」という意味合いを感じやすいものになる。

一方で、アパレルブランドの「FOREVER 21」や宅急便の「クロネコヤマト」に危険を感じないように、使い方によっては遠くでも視認できるインパクトを与えることができる。それを可能にしているのもこの色の組み合わせが、人間の眼にとって刺激の強いものであるからだ(他にも動物をモチーフにした宅配会社はあるのに、クロネコヤマトだけ怪談話のネタにされるのも不思議な話だ。言うまでもないが、クロネコヤマトのサービスはとても素晴らしく、宅配会社の中でも私は彼らを頻繁に選んでいる)。

ビジュアルコミュニケーションの成否。

そこで私自身が遭遇した事例を二つ挙げる。一つ目は、地域の公民館に訪れた際に見つけたポスターだが、「空き家」を募集した内容にも関わらず、「黄色+黒色」という組み合わせで作られてしまっている。しかも、アイキャッチとして「空き」の字が強調されていることも合わさって、とても刺激が強く、身構えてしまうデザインとなっている。私はこのポスターを一目見たとき、「空き巣」注意を呼びかけるポスターかと勘違いしたほどだ。勘違いの時間はほんの一瞬で、すぐに「空き家」募集だと気付いた。しかし、誤解させることを狙っているわけでもなさそうで、そもそも時間をかけてポスターを見る人がいないように、視覚におけるビジュアルコミュニケーションでは制作時の狙いと異なる結果になっているのではないだろうか。

二つ目の例は、あるプロジェクトで相談に乗った際に参考サイトとして提示されたのだが、障害者アートの認知向上を促す海外のWebサイトであり、色弱者でも見やすいように作られている。ターゲットが合っていれば良きデザインだろう。しかし、色弱ではない私にとっては極めてコントラストが強く、30秒も閲覧できなかった。ただでさえ刺激が強い「黄色+黒色」の組み合わせを、光を発するモニターで全面に使っているために刺激はさらに強くなり、閲覧した後、数分間は眼の調子が悪くなった。もちろん、ターゲットが合っている場合は良きデザインとなり、ビジュアルコミュニケーションは円滑に進むだろう(「背景色変更機能」は欲しいが)。けれども、相談に乗ったプロジェクトでは障害者案件を扱っているものの、ターゲットは健常者だった。それではWebサイトの作りは良くても、誰にも使われないものとなる可能性が高まる(その後、相談されたプロジェクトからは離れたが、企画者にとってもユーザーにとっても良いプロジェクトになっていることをお祈りする)。

色の作用を間違えないことでデザインは強力なツールになる。

先述したどちらの例も、色の使い方によってビジュアルコミュニケーションの成否が左右される事例だが、色の作用を上手く活用できれば、デザインはあなたの事業にとって強力なツールとなる。それは事業の内容、ターゲットの特徴、色の性質の組み合わせとしてほとんど決まってしまうものである。どんなに素晴らしい思想があり、社会的に貢献できる事業だったとしても、色の作用を間違えて使っていればビジュアルコミュニケーションは破綻し、人々は離れていく。そうならないためにも、プロフェッショナルなデザイナーに相談することをおすすめする。それは個人事業でも、スタートアップ企業でも、100年続く老舗企業でも同じだ。あなたの事業には必ず、ふさわしいデザインがある。

※1:引用サイト 「警戒標識の基礎知識」

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