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亀子がうちにやってきた! 犬猫同居生活に備えた「猫選」#いい部屋ペット

冬の終わりに、愛犬2頭を亡くし、ペットロスに見舞われていた白石家。
そこに、年齢不詳(最初は1歳くらいの若猫かと思っていたけど、次は1歳〜5歳と言われ、今は3歳〜5歳かな、と言われている)の、抱っこすると羽根のように軽い、小さな猫を迎えることになりました。
「鶴は千年、亀は万年」のことわざから、健康、ご長寿を願って「亀子」(かめこ)と命名。これから亀子とのハッピーな暮らしが始まります。

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2月中旬にウシちゃん(白黒ポインター。享年1年半くらい)、3月中旬にメル(ボクサー。享年11歳9か月)がいなくなって、白石家に暗黒期がやってきました。

わが家に犬猫がいなくなるのは27年ぶり。娘は23歳半なので、彼女にとっては人生初の体験です。私のお腹の中にいたときから、彼女は犬猫と暮らしていました。当時いたワイマラナーが大きく膨らんだ私のお腹のニオイをクンクン嗅ぐと、中から蹴っ飛ばしていました(笑)。

生まれる前から犬猫がそばにいた娘にとって、誰もいない日がやってくることは前代未聞の心痛でした。とくにメルは彼女が選び、2年も待ち、やっと迎えた「自分の犬」。特別な存在です。今までも彼女は犬や猫との死別は何度も経験していますが、今回はいつも以上にダメージが大きく、情緒不安定気味でした。「この悲しみを乗り越えて、彼女はさらに成長する」と思ってはいましたが、見ていて心が痛みました。子どもの愛犬との死別の心のケアは必要ですね。でも、そうは言ってもそっと見守るくらいしかできません。親であってもほかの誰でも、メルの代わりにはなれません。自分で乗り越えるしかありません。

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そして娘だけでなく、私も夫も、四つ足の家族がゼロになった喪失感は大きかったです。

そりゃそうですね、27年間、毎日リビングに当たり前に犬がいて、帰宅したら毎度毎度歓迎の大騒ぎを見るのが日常だったのです。シーンとした玄関やリビングの空虚感といったらありません。

この間、娘の情緒不安定っぷりを見て、家族会議をし、保護犬を迎えることも検討しました。でも2回断られました。なんでかなー。うちに来たら、けっこう幸せにする自信あるんだけどなー(苦笑)。残念ですが、ご縁がなかったということで。

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そんなとき、捨てる神あれば拾う神あり。かつて白黒ポインターのウシちゃんを譲ってくれた保護主で今となってはよき友人が、繁殖場崩壊現場から2頭の猫をレスキューしたと聞きました。SNSで見ると、あら〜、可愛い♥ しかも彼女が保護した日は、たまたまメルを火葬した日でした。こじつけだと自分でもわかっているのですが、人間、なんでもいいから「これは運命だ」と信じたくなるものです(笑)。

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友人がレスキューした2頭。下段にいるのが当時の亀子

犬を迎えたとき、猫にストレスを感じさせたくない

しかし、私にとって犬は、公私ともに必要な相棒です。いつかは必ず犬を迎えます。しかもまたポインターのような大型犬、猟犬種がくるでしょう。何かといろいろとかなりハードルが高い。となると、猫と犬が同居生活することを想定し、いろいろな障壁を検討して、同居が大丈夫かをよく考えて迎えなくてはいけない、と強く思ったわけです。人選ならぬ「猫選」です。

今まで黒猫2代分、犬猫同居生活をした経験はありますが、個体差が大きいのでよくよく見極めなければいけません。「犬と猫との同居に憧れる」という人は多いそうなのですが、迎えたあとにやっぱり無理だった、とか、犬が猫を襲うから、などと手放す人が少なくないと聞きました。失敗は許されません。

はたして友人がレスキューした猫はどんな子なのかしら?

私は、猫の性格、年齢、健康状態など、綿密にいろいろ尋ねました。保護猫だろうが、ブリーダー譲渡だろうが、ペットショップ購入だろうが、受け入れる前に動物のことを根掘り葉掘り質問することは欠かせないと思います。ひとつの命の人生(猫生・犬生)に全責任を持つという重大案件なのですから。あとから「やっぱり無理。いらない」となるくらいなら、しっかりその動物について知っておくことが大事です。それがお互いの今後の幸せにつながると思うので、お時間をいただくことになりますが、躊躇することなくバンバン教えてもらいましょう(逆を言えば、質問に答えてくれないところは、その動物の将来の幸せについては無関心なのかもしれません)。


さて候補予定の2頭のうちの1頭は、丸顔の鼻ぺちゃさん(=亀子)。このタイプの猫種はおっとりした性格のことが多いです。保護された子も、おっとりのほほん不思議ちゃんタイプだそう(それくらいの方がこちらとしては好都合)。もう1頭の方は食欲もしっかりあり、健康体だけど、神経質とのこと。元気でよく食べるのは魅力的だけど、神経質で繊細な子は、わが家には無理です。うちに犬が来たとき、その子の心は乱れ、強いストレスがかかるでしょう。猫に負担をかけるような同居生活を強いてはいけません。みんなが幸せになれないとダメです。

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保護宅にて。左が亀子。当時は食が細く、食べるのも遅く、食べ物への執着も乏しいので、おとなりさんに食べられてもそのまま譲る。温和というか、どんくさいというか

うちの場合、いちばん重視したのは、猫の性格・気質です。友人宅にはダルメシアンがいます。犬との関係性はどうかを尋ねました。大型犬がいる保護主さん宅でなかったら、犬と接する様子を観察することができないので、そもそもこの話は実現しなかったでしょう。もちろん友人には今後できればウシちゃんのような犬を迎えるつもりだということも伝えていました。

鼻ぺちゃちゃんは、ダルメシアンにも動じることなく、マイペースとのこと。やったぁ!これは、白石家に適している猫だと思いました。

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スコティッシュフォールドは病気が多いけれど、覚悟を決めた

鼻ぺちゃの方なら犬との同居は大丈夫かもしれない……そう内心、心躍らせていると、その子は、スコティッシュ・フォールドとのこと。なんと!! スコ!!?(略称でよくそう呼ばれます)。スコって……遺伝性疾患が多い。あの愛らしい垂れ耳は、実は軟骨の奇形。じきに足の関節やしっぽの付け根に骨のこぶができる「軟骨異形成症」になる確率が高い。垂れ耳スコなら100%その遺伝子を持っています。そのためヨーロッパではスコの繁殖を禁止しようという国もでてきているほどです。立ち耳の場合、垂れ耳よりも少し確率は減りますが、やはりかなりの高確率でその遺伝子を持っています。その病気は、進行性で、疼痛を伴い、治療法はありません。うーー。痛いのは可哀想だ。立ち耳だからスコとは気がつかなかった。スコティッシュュ・フォールドは垂れ耳が人気だけど、そういえば立ち耳も生まれるんだった。スコは可愛いけれど……医療費などが大変だぞぅ。

またすでに流涙症(涙が鼻に抜けずに外に溢れ、涙焼けになっている)、外耳炎など、小さな問題もいろいろありました。

さらにレントゲンを撮ったら、股関節形成不全症であることも判明(涙)。こちらも遺伝性疾患です。すでに関節痛がありそうですし、脱臼もしやすい。脱臼したら骨頭切除のような外科手術が必要になるかもしれません。痛いのは可哀想だし、お金もかかります。

さらにスコは、ウシちゃんと同じ腎不全になる子が多いと獣医の友人が助言してくれました。体質的にいろいろ弱いから長生きできないケースは多いと……ううう、ウシちゃんと同じ病気で早逝したら立ち直れない……。かなり考えました。ちゃんと自分たちが責任をもって、その子を一生幸せにできるのか。うちに来てよかったと思ってもらえる環境を用意できるのか。

でも、でも、でも。少なくとも私は長年、獣医さんを取材している動物ライターだから、病気のことはわりと詳しい。獣医さんの専門医との人脈もある。亀子の病気のことも調べた。概要は掴めた。

病気が多いことも納得のうえで「うちに来い! 全力で幸せにしてやる!」と腹をくくりました。友人も、私の病気の知識や飼育管理の経験値などは知っているので、亀子を託してくれることになりました。

体重が2㎏なくて、避妊手術がすぐにできなかったけれど、1か月半ほど友人宅で愛情を注がれ、少し体重が増えてきました。無事に避妊手術をし、抜糸をすませ、落ち着いたところで、

5月中旬、ついに亀子がわが家にやってきました! 

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小さい。だけど、めちゃくちゃ可愛い。

白石家のリビングが、急にハッピーオーラで包まれました。何なんでしょう、この破壊力というかインパクトは。
猫1頭がやってくるだけで、こんなにも幸せを運んでくれるなんて。
猫の威力は、偉大です。

ひと月ほどでだんだん表情が変わり、猫らしく

私たちにとって2年ぶりの猫との暮らしが始まりました。猫トイレを引っぱりだし、階段から落ちないように細工をし、股関節に悪いので滑らないように絨毯を敷くなど、亀子のための環境整備をしました。

2㎏ちょっとしかない亀子は、抱き上げると羽根のように軽く、猫ってこんなに小さかったっけ!?と、少々びびりました(先代の黒猫まめちゃんは6kgくらいあり、ずしりといしていました。トイプードルより重かった。笑)。

最初のひと月ほど亀子は、撫でられるのも好きじゃないし、呼ばれても来ないし、ごはんはあんまり食べませんでした。後ろ脚は弱々しく、ときどき足を引きずります。大丈夫かな。そこで疼痛管理や、筋肉や筋を強化するサプリメントを与えることにしました。涙焼けもひどいので、雑菌が繁殖したり、色素沈着しないように1日3-4回、こまめに目の下を拭きます。お耳の掃除もします。あと、ヒヨヒヨした長い毛が飛ぶので、スリッカーとコームも買ってきました。長毛種を飼うのは初めてなので、新鮮です。

だけど、猫って(犬以上に)ケアを嫌がりますね。亀子への愛情ゆえのケアなのに、涙を拭くと、悪者扱いされ、私を見るとスーッとソファーの下に隠れる始末(涙)。爪切り、耳掃除なんて、家族3人総がかり戦です。無理強いして暴れて、股関節がはずれたらどうしよう、とビビりながら慎重に行います。

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でも、だんだん涙拭きも諦めたのか、私たちに心を許してくれたのか、おとなしく拭かせてくれるようになりました。またごはんも工夫をして、食欲がわくようなものを用意し、ドライフード、ウエットフード、生肉、なんでも食べられるように食の社会化も頑張ったら、案外受け入れてくれました。環境適応力は高そうです。よしよし。

亀子は、今までどんな生活をしていたのだろう。
ずっと狭いケージの中だったのかな。
涙を拭いてもらったり、ブラッシングしてもらっていたのかな。
オモチャで遊んだこともなかったのかな。
人間といっしょに寝ることもなかったのかな。

ふと、いろいろ想像し、切なくなったりもします。でも、うちに来て1か月半、毛量もふわふわになり、毛艶もよくなったし、体重も3㎏近くになりました。羽根のように軽い、食の細い亀子はもういません。「ごはんください」「おなかすいたにゃ」といっぱしに自己表現もできるようになりました。顔も丸くなり、体に厚みもでて、猫らしくなりました。そして、なにしろ表情がよくなりました。以前は、感情の鈍麻というか……何を考えているかわからない、無表情っぽかったのですが、今では嬉しそうに床でコロンコロン転がったり、目を輝かせながらトンボのオモチャに飛びついたりしています。

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ポインターがお泊まり。亀子、嬉しそう

また5月の終わり、ポインター友達のご実家でご不幸があり、急なことでいつものペットホテルに泊まれなかったとお困りだったので「もしよかったら、うちで預かろうか?」と、私が立候補しました。犬に飢えている白石家にしてみれば、棚からぼた餅、久しぶりにポインターがうちにやってくる!と大喜びしてお預かりしたのですが、さてさて亀子は大丈夫かな、と様子を見ました。

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トーマスくんは、優しい性格であることを私は知っていたので、おそらく大丈夫だろうと思って引き受けたのですが、しかしそうは言っても万が一事故があってはいけません。
だけど、そんな心配をよそに、ふたりはまったく問題なし。むしろトーマスくんがタジタジなくらい(笑)。亀子は、犬に全然動じてない。「猫選」は成功だ!

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もうひとつ興味深かったのは、トーマスくんが来て以来、それまでベッドの下で寝る(安全地帯だったのでしょう)ことしかしていなかった亀子が、トーマスくんがリビングで悠々と寝ている姿を見て触発されたのか、床の上でコロコロ寝転がったり、ソファベッドの上でのびのびとお昼寝したりするようになったのです。

トーマスくんのおかげで、白石家は心を許してもいい安全な場所だと、亀子にわかってもらえたのかもしれません。犬と猫は異種ではありますが、何か通じるものがあったのかしら、と思っています。あるいは、保護主さんのお家にいたダルメシアンを思い出して安堵したのかもしれません。トーマスくんは3泊4日でお帰りになったのですが、亀子はそれ以来、変わりました。この家に対する警戒心が薄れ、どんどんうちの子になってきたような感じがします。トーマスくんありがとう。

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いつか来る、犬家族とも仲良く

犬と猫の同居生活は、個体差が大きいので「こうすれば絶対誰でもうまくいきます」とは言えません。猫側の条件(性格、年齢など)と、犬側の条件の両方がうまく合わさって、相性がよいか、互いに譲歩してくれるかなどが見えてきます。
とりあえず、おおらかな亀子側の「猫選」は現段階では成功したと思っていますが、でもトーマスくん以外の犬ともうまく暮らせるかはまだわかりません。

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あとから来る動物は、トーマスくんのような優しい性格で先住猫を攻撃しない子、あるいは社会化期(生後3か月〜半年くらい)で猫のことを獲物と認識していない子犬などがよいだろうと思っています。

またどんなに猫と犬を吟味していても、何かいさかいがあったときに、ガツンと諭す(ぶったり蹴ったりする体罰のガツンではなく、迫力のオーラといいましょうか)飼い主の指導力なくしてうまくはいかないと思います。「うちの仲間同士で喧嘩したら、私が許さない」という静かな気迫のようなものがきちんとあれば、たいていはうまくいくのではないかと思っています。が、この気迫のオーラはけっこう経験者じゃないと難しいかもしれません。犬を見て、猫を見て、両方の性格、動きなどを見抜いて、事故が起きる前にビシッと止める観察力、指導力が重要ではないかと思います。

亀子は、股関節が悪いですし、じきに四肢の関節に痛みがでる可能性があるので、すばやく逃げることはできないですし、ケガにつながるので急な動きはさせたくありません。なので、犬を迎えるときは全集中で観察し、お互いの動きがわからないうちは慎重に見張り、亀子を守りたいと思います。ちなみに亀子はどんくさいので今のところ、猫パンチもしないし、噛むこともありません。でも今後、栄養をつけて筋肉がつき、サプリメントがマッチして、すばやい動きができる亀子に覚醒する可能性もあります。

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とにかく、亀子がわが家に来てくれて、白石家は息を吹き返しました。動物がお家の中にいるって、それだけで本当に幸せです。そして日に日に白石家の子になっていく亀子が愛おしくて仕方がありません。

犬も可愛いですが、猫も可愛いです。犬みたいに呼んでもすぐ来ないし、玄関に「おかえりなさい!」はまだしてくれませんが、それでも亀子が家にいるだけで、家族の笑顔が増えました。

亀子、うちに来てくれてありがとう。
幼い顔しているから若いかと思って子猫用フードを用意したけど、プリンセスではなく、クイーンだったのかもしれないね。年齢不詳だから、いつからシニア用のごはんにしたらいいのか、いつくらいに老猫検診したらいいのかわからないし、いつか天に召されるときに享年が何歳なのか数えられないけれど、亀子は亀子。鶴は千年、亀子は万年。少しでも長く、少しでも痛くなく、のびのびと生きてほしいと思います。

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仕事に出るとき、亀子が上から見ていると、出勤したくなくなると娘が言っています。
プロフィール
白石かえ
広告のコピーライターとして経験を積んだ後、動物好きが高じてWWF Japan(財)世界自然保護基金の広報室に勤務、日本全国の環境問題の現場を取材する。
その後フリーライターに。犬専門誌や一般誌、新聞、webなどで犬の記事、コラムなどを執筆。趣味は、犬と野山へ行くこと。
▶執筆サイト:dogplus.me 犬種図鑑
▶ブログ:バドバドサーカス
▶主な著書:
『東京犬散歩ガイド』
『東京犬散歩ガイド武蔵野編』
『ジャパンケネルクラブ最新犬種図鑑』(構成・文)
『うちの犬—あるいは、あなたが犬との新生活で幸せになるか不幸になるかが分かる本』

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