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【韓国BL】2023年度決算(レジン・ベルトゥーン)

この記事からわかること

  • BOMTOON、Lezhinの親会社Kidari Studio(キダリスタジオ)の2023年度の決算報告

  • 決算報告書からみえる、2024年以降の事業戦略

この記事は2024年3月時点の情報です

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そもそもLezhin(レジン)とは?

レジンコミックス(英:Lezhin Comics)は、(株)レジンエンターテイメントで配信する韓国発のウェブトゥーンプラットフォーム。
2012年から法人サービスを韓国で開始し、2015年から日本向けサービスを展開。2021年にKidari Studioに買収されています。

構造はこう👇
Daou Data Corp.(親):ITコンサルティング&ソリューションサービス
KidariStudio, Inc.(子):ウェブトゥーン、ドラマ制作サービス
 └ レジンエンターテイメント(孫):レジンコミックス、BeLTOON

Lezhin、BeLTOONの運営会社は”株式会社レジンエンターテイメント”で、その親会社は”KidariStudio, Inc.”です。
KidariStudioは、女性向けウェブ小説コンテンツ”BOMTOON”や、欧州向けの”Delitoon”、映像コンテンツ企画などの子会社をもっています。
さらに、KidariStudioの親会社は”Daou Data Corp.”です。

Kidari Studioは韓国市場KOSDAQに上場しており、Lezhinの業績はKidari Studioの決算報告書にて開示されています。

2023年度 決算報告

コンテンツ企業キダリスタジオは、2023年連結基準で売上高1千710億ウォン、営業損失57億ウォン、当期純損失356億ウォンを記録したと26日に公示した。
売上高は前年比0.95%上昇したが、営業利益は2022年42.6億ウォンから2023年-57.4億ウォンで赤字転換し、当期純損失は前年25億ウォンから昨年356億ウォンで1千300%も増加した。
~(略)~
大規模な投資資金執行・映像化事業計画の遅れに加え、海外子会社の業績不振による営業権の減損が反映され、大幅な営業赤字と当期純損失が発生した。

(機械翻訳)ZDNet Korea

Kidari Studio IR情報

NAVER証券


海外子会社の業績状況を見てみました。

海外子会社の財務状況

【日本】2022年度はマイナスだった純資産が2023年にはプラスに転じ、当期純利益も上がっています👏

なかの方たちが、作品数を増やして更新し続けたり、さまざまな改善、プロモーション活動など地道な努力と、読者のみなさんが課金を積み重ねた結果が、数字としてきちんとあらわれていると思います!

日本でのボーイズラブの市場規模は約200億円以上といわれているので、これから伸びしろが十分ありそうです。

個人的に気になるのは、DELITOON🇫🇷のマイナスと、本国🇰🇷の当期純利益がかなり下がっていることです。

外貨

FY2023_키다리스튜디오_(연결)감사보고서_Master.pdf
P.38-39より一部抜粋
papago画像翻訳

表の見方に自信がないですが、資産合計に負債合計が含まれていると思われます。
これを見て、円(現金)を使う大切さをあらためて感じました。
(円のレート、2024年3月現在悪いのですが)


2024年以降の事業戦略

キダリスタジオの関係者は
「2023年に計画されていた自社IPの映像化日程が延期され、映像事業部の売上が減少したが、他の事業部の堅調な成長で過去最大の売上高を達成することができた」とし、
「今年はグッズ、映像などIPを活用した2次事業を積極的に展開し、売上の有意義な成長を実現したい。これと共に、継続的な一部事業部門の効率化執行で黒字基調を維持する予定だ」と述べた。

(機械翻訳)ZDNet Korea

とあるので、オリジナルIP(知的財産)の獲得と、ウェブトゥーンや小説だけでなく、グッズや映像などの二次利用での収益を検討しているようです。

ちなみに、グッズの収益に関して丁寧に説明してくださっている方がいらっしゃいました。

一部を要約します。
あくまで要約なので、ぜひご本人のコメントを読んでいただければ🙇

韓国のグッズ市場規模はまだ小さいんです。

関係者が多く介入して生産・販売するので、それぞれの分け前が小さくなるので、結果、収益率が低くなる。(ロジスティックを維持するには同時に稼働できる人員を確保しないとむずかしい)

だからといって「作家にお金にならないからグッズを購入しない」となると、さらにグッズ市場が縮小し、生産単価が高くなり、結果さらに収益率が悪化する。

X(@4_wonderfullife)

話が脱線しますが、日本市場のこともよく研究・理解されており、
日本の二次創作界でのグッズ販売はあくまで趣味の範囲にとどめておく。
そうしないと公式グッズの売上に影響を与えてしまうため。

だから、二次創作は同人誌が主流。

いや、さすがです、そうなんです。
ほとんどのファンのかたは趣味の範囲で最小ロットで頒布してらっしゃると思いますが。

あと、証券会社の冷静なレポートが印象的でした。
中国ファンのかたは、検閲のため作品を公式で購入しづらいでしょうし…。
すごく悩ましい問題です。

中国市場への展開について。
「中国は検閲が厳しくコンテンツを流通させるのに適した市場ではないが、"海賊版"によって流通したコンテンツを通じて、ファンにグッズを販売し収益化することは可能」

구조적인 체질 개선|하이투자증권



今後もグローバル展開を強化していくようですが、
ウェブトゥーンを公式サイトで課金して読む文化を根付かせるのが重要だと思います。
なぜなら漫画大国の日本でも、読者に無料から有料に転換させるのに苦心しているからです。

また、作家、スタッフ(内部・外部含む)などステークホルダーの多くは韓国のかたなので、本国の財務状況を健全にするのが大事だと思います。

そのため、グループ会社の銀行出身のホ・フンボム氏が、Kidari Studioの社内取締役として2024年3月26日付で就任。
エンタメ企業と金融出身の食い合わせ、どうでしょうね🤔


作家の労働環境の改善へ

作家の労働環境の改善に韓国政府が取り組みはじめるそうです👏

韓国政府がウェブトゥーンをはじめとするウェブコンテンツ標準契約書の制定・改正でクリエイター保護に取り組む。
~(略)~
急速に成長するウェブ小説分野にもクリエイターの権益を保護し、公正な契約慣行が定着できるように6月に標準契約書を導入する。
ウェブトゥーン標準契約書に入る収益配分条項、休載権保障などの内容も反映する方針だ。
~(略)~
政府はまた、ウェブコンテンツクリエイターが職についたときの年齢の低さ、失敗する可能性の高さなどでキャリアチェンジも多いため、進路教育・職業相談を提供するキャリアチェンジ支援プログラムも用意し、今年末からサービスを開始する。

AFP/BB News


ここまで見れるの!?

今回いろいろ調べてみて、韓国では企業のさまざまな数字が開示していて、すごいです。たとえば毎月の従業員数の推移。

NICE bizinfo



サステナビリティ(持続可能性)が高い業界へ

オタ活をそれなりにやっていると、事業の財務状況がコンテンツやサービス維持にとても大切だと身に沁みています。急にサービス終了してしまったり🥲

企業のひとつを例にあげてお話しましたが、私は
ファンだけでなく、作家、従業員、外部パートナー含む人たちが、健全な活動が続けられることが大切だと考えています。

そのために、お金がどのようにめぐっているのを知ることが大切なので、自分で分かる範囲ではありますが情報をまとめてみました。


購読させるコツは?

ここからは、対プラットフォーム(特に日本企業)に向けて個人的な感想です。

読者に「顧客満足度アンケート」を作品やサイトごとに聞いてみるのがおすすめです。

「読者がなぜ離脱するのか」の原因を知り、穴を塞ぎ、小さなストレスを減らす。地道な改善を続けることが大事です。

日本人の特性は<協調性>のため、悪いことは表にはあまり出てこないです。だけど如実に数字に跳ね返ってきます。

ですので、レビュー、SNSの口コミも参考にしつつ、購入者の多くはサイレントマジョリティですので、その方々の声も拾っていく。
アンケート結果を開示しなければ、作家を傷つけることはありません。

☑課金をし始めたきっかけ
☑作品を読まなくなった場合、その理由
☑作品を読んでいる理由 など

無課金勢の声はあくまで参考、大切なのは有課金勢の声です

ちなみに某プラットフォームでは、サービス向上アンケートを実施していました。


マイナスなことはSNSで話題になり<見える化>されやすいですが、
ポジティブなことは<当然>のこととして、あまり見えにくいです。
ですので、一人ひとりの静かな声を丁寧に拾っていく仕組みづくりが大切です。


👇️過去の記事もあわせてどうぞ(2023年10月)

👇️レジンエンターテイメント:会社概要


👇️Webtoon制作の解説動画です


👇️【韓国BL】2023年度決算(RIDI)


参考記事

韓国の「NAVER」や「カカオ」にとって「縦読み漫画(ウェブトゥーン)」は、どれくらいの規模なのか(2024.3.28)


個人作家よりも制作スタジオの力が強い「韓国のウェブトゥーン業界」で「作家」が感じている「不公正行為」(2024.2.29)


クリエイターに過度な負担が…「韓国の縦読み漫画業界」で起きている「意外な現状」(2024.2.29)