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読み出したらとまらない

Louis Sachar,  Holes  (A Yearning Book, 2015)

人生の穴を埋め合わせる1冊(※個人の感想です)

なぜこんなに面白い本を今まで知らなかったのだろうと思ったら、20周年記念版の本書の初版は1998年。次男が生まれたこの年、私は出産を機に退職する予定が、インフルエンザをこじらせて入院、そのまま出産へと続き、立つ鳥跡を濁す大失態を演じたのだった。その後のドタバタは省略するとして、人生の空白を今からでも埋め合わせることができて幸せに思った1冊。

なんといっても話の展開がはちゃめちゃに上手い。10歳以上対象とはいえ内容は大人でも十分に楽しめる。人生の不運からの脱却はよくあるテーマだけれど、これはどう考えても絶体絶命だろうというピンチの連続。無実の罪を穴掘りの刑罰で償わされて、祖先から続く呪いなのかとわが身の運命を恨みたくなる少年に感情移入したまま一気に読んだ。

そしてこれはあれだ! かつて新聞広告で誰もが知っていたオーソン・ウェルズ朗読の英語学習教材『追跡』(The Chase)と同じだ!と思った。善と悪の対決。最後は正義が勝つのパターン。テキサスが舞台だから尚更だろうけれど、保安官みたいな大人の存在がいかにもアメリカらしい。でも、だからこそ、こどもは安心して冒険できるのだろう。

平明な文体の英語で書かれているので、ぜひ原書で読むことをお奨めしたい。
和訳もルイス・ハッカー著、幸田敦子訳『穴』として講談社文庫 に入っている。