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大好きすぎて見落とした話

「最近の絵本で好きなのは?」と尋ねられたら、まちがいなくシドニー・スミス氏の作品と答える。以前、紹介記事の中で「ポケット判があれば、いつも持ち歩きたいほどに好きな1冊に出会えたことが嬉しい」と書いていた自分は、Small in the City に至っては電子書籍版も入手済みで、たとえ病床にあってもスマホで読めるように備えている。なのに、なのに……こんなに好きな作品を読み間違えていたなんて、穴があったら一生出られなくなりそうだ😱【以下ネタバレあり】

By Sydney Smith, Small in the City (Walker Books Ltd., 2019)

少年は寒い冬の日、ひとりバスに乗り、都会の喧騒の中を歩き出す。

思えば「ここは犬がいるから僕なら避けるな」とか、木登りをしながら「隠れ場所はいっぱいあるね」とか、排気口の暖気にあたりながら「丸くなって昼寝ができるね」とか、ヒントは一杯あった。「この通りの魚屋さんはいい人だから、頼めばお魚もらえるよ」なんてのも。

にもかかわらず、少年が「大丈夫だよね」と「きみ」に話しかけていたのは、自分自身を励ますひとり言だと思い込んだ私。ひとり雪道を行く少年の冒険だと早とちりするなんて、いくらなんでもバカでしょ。無理ありすぎでしょ。ちゃんと読めよって話。

まあ、まずはとくとご覧ください。

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ほら、貼り紙、貼ってるじゃん!公園の友だちって、人間じゃ早熟すぎるじゃん。これで気づかない人いるの? 

いたんです……私です😩

恋は盲目っていいますからね。もうこの雪景色やら都会の雰囲気やらに惚れ込みすぎてしまったわけで、自分の解釈ありきでしか読んでいなかった次第。でも、おかげで再び感動を新たにしたという……。

前半に散りばめられたヒントを頼りに、少年が迷子の猫を探していることを読み解く面白さ。猫を心配する少年のことをお母さんが心配して待っている二重構造の巧みさ。雪の日に心がじーんと温まる珠玉の1冊。邦訳はせなあいこ訳で2021年に評論社から出ている。

最後に、今一度、表紙カバーを外した画像を。

By Sydney Smith, Small in the City (Walker Books Ltd., 2019)
本体カバーに少年の姿が刻まれている
これも見事に見落としていた私🤣

以上、大変お粗末さまでございました。
お口直しに、アトリエでの制作風景のデモンストレーションをお楽しみください。

よい週末を!