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絵本の中のほっとする場所 | 『だんろのまえで』で温まってみませんか?



心がほっとして温かくなる絵本、今日はそんな本をご紹介します。


今日ご紹介するのはこの絵本。

1・『だんろのまえで』(鈴木まもる作・絵 教育画劇出版)の紹介

だんろのまえで2

わたしがこの絵本と最初に出会ったのは夏でした。夏だけど、ここの暖かさは心をポカポカと温めてくれて、心地良さを感じました。
今、季節は初夏ですが、この誰もが今まで体験したことのない、コロナと共生していかないといけない時代、人と距離を置かないといけない時代に、心の温かさ、「ほっとする」ことを望んでいる人も多いのではないかと思い、この絵本を選びました。

このお話は、寒い冬、雪が降り積もる中、山の中で迷ってしまった「ぼく」が木についているドアを見つけて中に入るところから始まります。
中には暖かい暖炉があり、うさぎや猫や色んな動物がいました。そこに迎え入れてもらって温まり、いつの間にか、寝てしまうというお話。
読んでいるとお風呂に入っているようで心の中までポカポカと温まってきます。


2・『だんろのまえで』の癒し効果


このお話の中では、なぜ「ぼく」が冬の山で迷ったか、その理由は出てきません。
私は暗示的に受け取りました。現実世界で色々なことに疲れてしまっているという状況を寒い冬の山で迷っていると表していると思ったのです。

お話の序盤、「ぼく」が中に入るとそこは真っ暗。しかし、中から声が聞こえ、ろうそくがあることを教えてもらって、「ぼく」は、ろうそくに火をともして中に入ります。

中に進むとそこにはパチパチと火が燃える暖炉がありました。
その前にうさぎが座っていて、「ぼく」はうさぎに促されるまま、暖炉の前に座ります。

暖炉は暖かく、その空間はとても居心地がいい。

そしてうさぎはこんなことを言うのです。

「つかれたら やすめばいいんだ、
むりしないで じっと してれば げんきに なるさ」
(『だんろのまえで』鈴木まもる作・絵 教育画劇出版より引用)

何という癒しの言葉なんでしょう。
この言葉を読んだ時、それを聞いた「ぼく」がほっとしている気持ちが伝わってきて、私自身も心がゆったりとなり、すごく安らぎました。

この部屋には猫もいて、その猫は話はせず、ゴロゴロと寄ってきます。毛も暖かく、「ぼく」は猫のゴロゴロにも癒されます。
部屋には他の動物もいるようで、「ぼく」はうさぎや猫たち、その他の動物たちと一緒に丸まっていつのまにか寝てしまいます。


この本の中に出てくる、あかりと言えば、ろうそく、暖炉の火。

暗やみの中での、ぼんやりとした灯りが何とも心地よく、隠れ家のような、自分だけが知っている場所のような感じで、絵を見ているだけでも癒されます。
広々した明るいところより、狭い、ちょっと薄暗いところの方がなんだか、居心地よく感じることありませんか?そういう気もちにもピッタリ寄り添ってくれる世界でした。

3・あなたの「ほっとする」場所は?

この後、朝になり、「ぼく」は元気に外に出て行きます。すっかり雪も止んで外は明るい陽のひかりいっぱいです。

陽の光


この絵本を読んで、私は誰にでも無条件で受け入れてもらえる「ほっとする」場所が必要だということを心から感じました。疲れた時、何もかも嫌になった時、何も言わず迎えてくれる人がいる場所があるということはとても大きな心の拠り所になる。

このうさぎのような人がいて暖炉のような暖かさがいつでも待っている「ほっとする」場所、いつでも休んでいい、元気をチャージできる場所があるというのは素晴らしいこと。


私にとっては、この「だんろのまえ」の「ほっとする場所」はやはり自分の家庭です。
「うさぎ」は夫であり、子どもたちだなと思いました。そして、私も家族や誰かの「うさぎ」でありたいと思いました。

現実社会でも、学校や会社をずっと我慢して急に爆発してしまうより、時々、心が疲れたら、自分の居心地のよい場所で休む―それがとても大切なこと。

私は以前、そういう場所が無い(と思っていた)時がありました。その時は本当に辛い時でした。

今は私にはそういう場所があり、いつでも帰って温まることができる。
とてもありがたいことです。

外に出て人と付き合い、活動していくためには「自己肯定感」(どんな自分も自分だと肯定的に受け入れることができる感情のこと)を持っていることが必要です。

その自己肯定感は安らぎの中で持てていくものです。その「安らぎ」とは「ほっとする場所」にあるもの。

どんな自分でも受け入れてくれる、立派な自分でなくていい、役に立たなくてもいい、そんな自分でもそのまま受け入れてくれる、いつでも休める場所、人です。

自分が存在していることを受け入れてくれる人がいる、休んでいる自分でもいいと言ってくれる人がいる、それが自分の安らぎとなる、だんだん元気が出てくる、するとじっとはしていられなくなってくる。何か表現したい、動きたい、人の役に立ちたい、人が喜ぶ顔がみたい、と思い、学業やスポーツ、仕事へと人は動いていける。

だから「ほっとする場所」は人のエネルギ―の源みたいなものです。無くてはならない本当に大切なもの。
皆さんにもそういう場所はあるでしょう。
今は無いと思っても、心から自分が望めばそういう場所がきっと見つかる。
まずは自分が「うさぎ」になって自分自身を癒す、そして人にも温かい言葉を掛ける。

そうすれば、いつでもそこはポカポカと温かい「だんろのまえ」になって居心地のいい空間になる。

そして今は、なかなか外へ出られない現実がありますが、いつか、この絵本の中の「ぼく」のように皆がいつでも元気に外に出られる時が来る。
それまで少し「だんろのまえ」で温まるのもいいかも。

まずはこの絵本の「だんろのまえ」で温まってみませんか?







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