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ひとりぼっちで寂しいと思ってしまった時、読んでほしい絵本 |『ふゆのはな さいた』を紹介します。

絵本紹介士のkokoroです。 “絵本紹介士”とはその字の通り、絵本を紹介する活動をしています。
幼い頃から読書が好きで、大学は児童文学科で学びました。またここに至るまで、挫折を経て心のことに関心を寄せ続けてきました。
ある時から絵本の楽しさに改めて気づき、多くの絵本を読んできました。
絵本は子どもが読むもの、と思われがちですが、大人の心にこそ響きます。
楽しくなり、癒され、深く心が動き、考えさせられる。
そんな風に心惹きつけられた絵本を1冊ずつ紹介しています。
実際にその絵本を手に取って頂き、思いを共有してもらえたら、こんな嬉しいことはありません。

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『ふゆのはな さいた』安東 みきえ 文 吉田 尚令 絵 アリス館

1・ストーリー

あるさむい日、こねずみが池のほとりにたち、涙を落としました。
そこへ来たのが一匹の金魚。

泣かないでよ、と叱られます。

でもこねずみはひとりぼっちなんだ、といいます。
実はこの金魚もひとりぼっちでこの池に捨てられたのでそれを聞くと嬉しくなります。

こねずみは今までともだちだと思っていたのに離れていった人たちのことを話します。
そして自分のことをキライになったのだと。

つばめは飛んでいってしまった。
ヤマネは今は寝てしらんぷり。
花も枯れてしまった。

金魚はつばめは渡り鳥だから、ヤマネは冬眠の時期、花も今は咲かない時期だといいます。
そしてまた春がきたらつばめも戻ってきて、ヤマネも起き、花も咲くよ、といいます。

こねずみはそれを聞いて元気を取り戻します。
そしてまた明日会おうねと約束するのでした。

ところが、次の朝、池の氷は凍って、金魚は顔を出せない。

こねずみはまた嫌われたのだと思い、泣きます。

それを見た金魚はなんとかして外に出ようとしますが、出られない。

金魚は生まれてはじめて泣きます。
その様子に他の金魚が集まってきて話を聞いてくれます。

そして、みんなでしたこととはー

この最後のシーンはとても美しいので読んでのおたのしみとさせてもらいます。


2・この絵本が伝えたいメッセージとは

①嫌われた、と思いがちな人への優しい言葉

この絵本が伝えたいメッセージは、嫌われた、と思ってしまいがちな人へ、そんなことないんだよ、と教えてくれていることです。

こねずみは仲良くしていたのに急にいなくなった、相手にしてくれなくなったと嘆きます。
でも、客観的に話を聞ける、物知りな金魚からすればそれは正当な理由があるからで、一つ一つ教えてくれます。

つばめは渡り鳥なので、冬になると暖かいところへ行くこと、ヤマネは冬は冬眠する習性があること、また春になれば、戻ってきたり、目がさめたりして会えること。

そして、花も今は枯れているように見えるけど、春になればまた咲く。

そのことを聞いたこねずみは、せっかく仲良くなったのに、離れていって嫌われたと思い込んでいたのが、そういうことではなかったのだとわかるのです。

そして金魚とも友達になる。

金魚も実は池に捨てられたので、寂しい、と思っていました。

でも、こねずみとコンタクトを取れるように他の金魚が協力してくれたことで、ひとりぼっちじゃないと気付くのです。

だから、人が離れてしまった、嫌われたのかな、と思いがちな人に、そうではないこともある、色々な事情で離れていったこともある、そしてまた会えるかもしれない、ということを教えてくれています。

自分ひとりが勝手に嫌われた、寂しい、ひとりぼっち、と思ってしまい自己憐憫に陥りがちな人もいると思います。

私も前はそういうところがありました。自分に自信がなく、自己肯定感が低かったのだと思います。
そして、人に固執してしまっていました。自分を好きでいてくれると、自分も価値がある、自分が嫌われると自分も価値がなくなる、と。


でも、自分が自分でいるだけで価値がある。そのままでいい。

そして人には色々と事情もある。

また、そんなに簡単に人は人を嫌ったりしない。

そういうことがわかったとき、

人は完全ではないし、合わないな、と思うこともあるかもしれない。そういうところもその人の個性として受け入れられた時に、人との関係を楽しめるのではないかと感じました。


そしてお互いの事情を推し量りながら、付き合えるということが人との関係で大事なこと、そのようなことも改めて気づきました。

そのことをこの絵本も教えてくれます。


②ひとりぼっちではないということ

私なんてひとりぼっちだ、と思ってしまいがちな人も意外と心を開いて、目をあたりに向けてみれば、そうではないことがわかる。
ただ、自分の気持ちを伝えていないだけ。自分から殻をかぶってしまっているだけ。
ちょっと自分も心を開いてすぐ隣にいる人に話しかければ、言葉も返ってくる。
人は基本、人を元気づけたい、助けたいと思っている。

金魚がこねずみを元気づけたい、と思ったことで、またそれを他の金魚に助けてもらったように、素直に心を開いて話せば、周りの人は助けてくれる、仲良くしてくれることだってある、

私自身もひとりぼっちだ、と感じた時もありました。
でも、自分から心を開いて人の中へ入っていけば、心通じる人との出会いも必ずあるということがわかりました。

まず自分から話したり、声をかけたりすることが大切なこと、そういうことを教えてくれる絵本です。

3・まとめ 

この絵本はとにかく絵が可愛い。色調が優しくて、こねずみや金魚の表情がすごく伝わる。最後の場面は本当に圧巻です。

またこの絵本は1ページ、1ページ、おしゃれなポストカードみたいな雰囲気だな、とも思いました。
デザインされた方がいらっしゃるようで、デザイン 椎名麻美さんとあります。
ストーリーや絵もさることながら、全体の雰囲気もとても素敵です。

ひとりぼっちだ、寂しい、と思ってしまいがちな人はこの絵本を読んでみてください。
きっと気づきがあり、ふわっと心が温かくなるはずです。

そして、この絵本の世界観を存分に味わってください。
おすすめの絵本です。





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