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見たくないもの、ありませんか?思いきって見てみたら・・そんなことが描かれている絵本|『くらやみ こわいよ』を紹介します。

絵本紹介士のkokoroです。 “絵本紹介士”とはその字の通り、絵本を紹介する活動をしています。
幼い頃から読書が好きで、大学は児童文学科で学びました。またここに至るまで、挫折を経て心のことに関心を寄せ続けてきました。
ある時から絵本の楽しさに改めて気づき、多くの絵本を読んできました。
絵本は子どもが読むもの、と思われがちですが、大人の心にこそ響きます。
楽しくなり、癒され、深く心が動き、考えさせられる。
そんな風に心惹きつけられた絵本を1冊ずつ紹介しています。
実際にその絵本を手に取って頂き、思いを共有してもらえたら、こんな嬉しいことはありません。


見ないようにしているものが私たちの心の「くらやみ」だとしたら
その「くらやみ」が何かを見てみたら案外怖いものではなくてホッとするかもしれません。
そんなことを教えてくれる絵本『くらやみこわいよ』(レモニー・スニケット作 ジョン・クラッセン絵 蜂飼耳 訳 岩崎書店)紹介します。
(※この解釈は私kokoroが考えたことなので、この見方が絶対でなく、他の解釈もあるであろうことをお伝えしておきます)


1・絵本のストーリー


主人公はラズロという男の子。大きな家に住んでいます。
ラズロは家の中にあるくらやみが怖い。クローゼット、風呂場のカーテンの陰、
でも一番よくいるのは地下室。
夜になると「くらやみ」は地下室から出てくる。
朝、ラズロはくらやみに声をかける。
そうして、きっと自分のところには来ないと思っていた。

ところが、ある夜、ラズロが寝ているベットのそばにくらやみがきた。
「ラズロ」って。そして見せたいものがあるという。

ラズロはくらやみに案内されてついていく。
とうとう地下室に連れていかれた。

地下室の奥へ。そこには一つのタンスがあった。
くらやみは言う。くらやみはきみを怖がっていないよ。
いつもきみのそばにいる。
そして暗い場所の階段やクローゼットも必要なものなんだ、という。

そして下の引き出しを開けて、という。
ラズロは開ける。
何が入っていたかー。

これは見てからのお楽しみにした方が楽しいかも。
私もこの場面までドキドキしてページをめくったから。

とにかく最後にはラズロはくらやみが怖くなくなったということだけ伝えておきます。

2・この絵本に惹かれたところは「暗い」ところ

この絵本は表紙からもわかるように(文末にアマゾンの紹介があるので、そちらを見てください)色彩的に暗い絵でラズロ(主人公)が階段の上に立っている様子が描かれています。この階段を下りて行ってどんどん話が展開していくのです。
私自身は、小さい頃から暗い狭いところがなんとなく好きでした。二段ベッドの下やタンスとタンスの間など。狭いところに隠れたい、という気持ちが常にありました。(今でもそうです。おかしいでしょうか?)
暗いところには何か秘密、といったちょっとワクワクする感覚がありませんか?
特に子どもだったら、暗いところは怖いけど、なんか行ってみたい、惹かれる、という気持ちがあるはずです。その心理がうまく描かれている絵本です。

3・この絵本をおすすめする理由は「陰」が描かれているから

この絵本の中で

もし、クローゼットが なかったら、
くつを しまうところが ないよ。
ふろばの カーテンが なかったら、そこらじゅう みずびたしだ。
そして、くらやみが なかったら、どこも かしこも あかるくて、
でんきゅうが ひつようだって きづくことは ないだろうな

『くらやみ こわいよ』レモニー・スニケット作 ジョン・クラッセン絵 蜂飼耳 訳 岩崎書店より引用

という文章があります。
「くらやみがなかったら」という視点から書かれている文章です。

みんな、明るいところが好きだと思うけれど、ずっと明るいままでは夜も寝られないし、落ち着かない。寝る時はたいていの人は明かりを消して寝ます。(ちなみに私は真っ暗でないと眠れません)

この絵本の中の「くらやみ」って何だろう、って考えました。
それは「自分の中の嫌なところ、忘れたいけど忘れられないところ」そんなところと共通しているような気がします。

忘れよう、見ないようにしているところに「ちょっときて」とある日「くらやみ」の方からやってくる。めちゃくちゃ怖くありませんか?

でも、意外とこの絵本の主人公、ラズロは落ち着いています。そして「くらやみ」に聞くのです。

「どうしたいの?」
ラズロは
きいた。

『くらやみ こわいよ』レモニー・スニケット作 ジョン・クラッセン絵 蜂飼耳 訳 岩崎書店より引用

どうしたいかと聞くのは「怖がっている自分に対して、どうしたいか聞いている」のだと思います。

この世は陰と陽があるように、明るい世界があれば隠している暗い世界もある。
それと、とうとう対面するときがきたのです。


4・この絵本からのメッセージは見ないようにしていることは意外と見てみたら怖くないかも?ということ。

皆さんは普段、気になっているんだけど、見ないようにしている、なんてことないでしょうか?私はあります。それが自分が本当はどれくらい気になっているのか、自分でもわからない。だけど、何かモヤモヤと重い気持ちになる。

この間、そのことを人に話してみました。そこにいた人は一生懸命、そのことについて考えて解決策を答えてくれました。そして共感もしてくれました。
私はホッとしました。そして、同じようなことを思っている人もいるんだ、私だけでないんだと安心しました。また、それからそのアドバイスを元に自分なりの前向きな解決策を考えました。とても気持ちがラクになり、元気になりました。

自分だけで悩み、見ないようにしていることも、明るいところ(=人に話す)に出すと意外とそんなにドロドロしたことではない、何か解決策もある、ということを学びました。

で、私はこの絵本のストーリーの展開でラズロが「くらやみ」に連れられて暗い地下のタンスまで行き、中に入っているものを見る、という展開で同じようなことを感じました。
いつも暗いところが怖い、と思っているラズロ。
でもその「くらやみ」から呼び出され(!)最も暗いところへいく。しかもタンスの中のものを見る。

・・・結果、ラズロは怖くなくなったのです。

いつもモヤモヤとして、怖いと思っていることを敢えて見てみる、すると意外と怖くないことがわかる。それで一つ殻が取れていく。成長していく。

そういうメッセージが読み取れました。

だから、見ないようにしているもの、怖いと思っているものはその人の成長のために必要なものなのかもしれません。
何かモヤモヤしている、怖いものがある、と思っている人はこの絵本を読んで、それが何なのか見てみる勇気が持てるようになります。

ぜひ、読んでみてください、おすすめです。




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