髙橋海人のソロ曲「ワレワレハコイビトドウシダ」の歌詞が天才すぎた件
King&Princeの5th アルバム「ピース」を聴いた。
髙橋海人くんのソロ曲である「ワレワレハコイビトドウシダ」(作詞作曲・クリープハイプ 尾崎世界観さん)があまりに天才的すぎてエンリピが止まらないので、パッションのままに筆を執った。
邦ロックは実家音楽ジャンルではあるが、今回は音楽性ではなく歌詞について語らせていただきたい。
なお全部自論なので、すべての文の語尾に「と私は思う」がつくと思って読んでいただきたい。歌詞の解釈はなんぼあってもいいもんなので、これが正解ですという意図は全くないということをご了承ください。
そして当然のようにネタバレというか歌詞バレになるため、お気をつけください。
まず声を大にして言わせていただきたいのだが、この曲はモチーフである「扇風機」にまつわる言葉の使い方が本当に上手い。
言葉選び、言葉遊びが上手すぎる。曲を聴きながら五万回くらい天才だと叫んだ。
お前は誰だよという感じだが、それ以外の言葉が浮かばなかった。
わかりやすいところで言えば、冒頭の部分
扇風機の首振りと、「あたし」が首を振って恋人と別れた涙を乾かそうとしている姿をリンクさせている。これは試聴でも言葉選びが凄いと感じた部分だ。
まず扇風機と失恋を掛けようと思えるその発想が凄い。
夏と恋愛までは良いとして、そこから扇風機って出てくるもの?
ピンポイントでその題材選べないよ普通。
海人くんの家で尾崎さんと二人で曲の構想を練ったと聞いたが、どちらが先に扇風機を題材として挙げたのか、いつかどこかで教えてほしい。
(0826追記:テレナビに答えがありました)
また、Aメロの部分で言えば
この「回る」は、扇風機の羽根と一緒にその羽根についた埃が回ることと、二人の過ごした季節が回ることを掛けているのだと気づいた瞬間に、思わず顔を覆ってしまった。
ついでに「降り積もる」という言葉選びで、恋人同士の二人の思い出や記憶なども想起させることができる。ほかにも言いたいことはあるが、端的に言うと情報の詰め込み方がエグイ。
こんな感じで、曲の歌詞の中にちりばめられた言葉のチョイスにセンスがありすぎて震える。
気になった方は私の感想などすっ飛ばしていいので、今すぐにお手元の歌詞カードか歌詞サイトを開いてみてほしい。
それから、歌詞に直接的なことは書いていなくても、言葉の並べ方と対比で、情景や場面、感情が自然と浮かんでくる。
これはやはり尾崎氏ならではというべきか、その文学性が遺憾なく発揮されていると思う。
1番と2番のAメロからBメロまでを引用したが、お気づきだろうかこの綺麗な対比に。
「止めたら」
「点けたり消したり」
「強」にしてから
「中」にしたまま
「ワレワレハコイビトドウシダ」
「我々じゃなくてひとり」
「宇宙人みたいな声で」
「地球人みたいな声で」
「息もできないほどの寒気がするこの幸せ」
「息もできないほどの吐き気がする不幸せ」
美しすぎて変な声が出てしまう。
特に唸ったのは、
「息もできないほどの寒気がするこの幸せ」
「息もできないほどの吐き気がする不幸せ」
いったい何を食べたらこの歌詞が出てくるんだ。
「息もできないほど」までは同じで、そのあとのワードが少し違う。
「寒気がするこの幸せ」
「吐き気がする不幸せ」
このほんの少しの違いで正反対の印象を与える。本当に天才すぎる。
そもそも、「寒気」と「幸せ」を一緒に使うかという話だ。
普通に生きていたら使わないし、自分なら絶対に思いつかない。
どこかの文学作品の一文かと見紛うほどの歌詞。
恋人と二人でふざけて扇風機を「強」にして、体を冷やしながら、顔を近づけて宇宙人の真似をする。扇風機の風が強すぎて息ができないほどで、「強」だから寒気すら感じる、それでも幸せな一瞬。
一人遊びのように扇風機のスイッチを弄っていたら、いつの間にか「中」にしたまま寝てしまって、タイマーが切れた扇風機の前でいつかのように声を出してみる。でも「強」じゃないから宇宙人の声にはならなくて、今は物理的に息ができるはずなのに、心が苦しくて息ができないくらいの吐き気がする。
あまりに文学的すぎる。何食ったらこのシチュエーションが浮かんで、その歌詞になるんだ(2回目)この語彙力、ほしい……
おまけで書くと「不幸せ」の音の切り方が「ふ・しあわせ」なのも、この曲の中で凄く効いているポイントだと思う。
上手いなと思ったところを挙げるとキリがないのだが、1番の「羽根に降り積もる埃」では、埃をかぶった扇風機を押し入れやクローゼットから出す頃。つまり、二人でいた頃は夏の始まりだということを暗に示している点。
それからセリフの括弧の有り無しで、扇風機の風の強弱と「あたし」の発した声の強弱を表現している点。
このあたりも含めて、Aメロ・Bメロの歌詞の完成度が凄すぎて天を仰いでしまう。
もちろんラスサビの歌詞もとことん美しい。
この「風」は扇風機の風であることは、もうおわかりかと思う。
「夏」と「秋」
「強くなる風」と「弱くなる風」
「吹き飛ばされそうな」と「吹き飛ばせないから」
「ズットスキダヨ」と「全部好きだよ」
「やっと言えた」と「小さくて聞こえない」
最後まで言葉の対比を貫いて、夏の終わりと共に曲も終わる。本当に美しすぎる……
そしてタイトル。
ここまで来たら普通は「扇風機」とつけたくなる。自分だったら絶対にそうしている。
ところがどっこい、この曲のタイトルは
「ワレワレハコイビトドウシダ」
もう天才かと(n回目)。
このタイトルには、いくつか引っかかりがあると思う。
これは歌詞にも共通するが、普通に書くならば「我々は恋人同士だ」となるところを、あえてすべてカタカナで書くことでの違和感。
タイトルを見ただけで、まずなぜカタカナなのだろうという疑問が生まれる。聴く側はその疑問を解決するために、必然的にいつも以上に歌詞に耳を傾けることになる。
そして、タイトルの意味。言葉を額面通りに受け取ればハッピーエンドの恋愛ソング。それにもかかわらず、蓋を開けてみれば失恋ソングというこのギャップ。
我々は恋人同士だ、という音だけ聞いて失恋ソングだと断言できる人はそう多くはないと思う。かくいう私もすっかり騙された一人だ。
だが、曲を聴き終わった後にタイトルに立ち返ってみると、この曲を包括できるタイトルはこれしかないと思い知らされる。
やっぱり天才だよ……
どういう思考をしていたらこの曲を作れるのか、尾崎氏の頭を覗いて見てみたい。
正直、この曲を自分のために作ってくれたという事実に、私だったら震えて声も出せずにひっくり返る。どういう感情?と思われそうだが、邦ロックのオタクからしたら一周回って羨ましいとすら思ってしまった。
歌詞も演奏も、それだけヤバい。そして海人くんの歌声との親和性が凄まじい。邦ロック好きは良かったら聴いてくれ。
R側で鳴ってるギター超良いよね。特にBメロのサビに向かっての音の並びが良すぎて死んでしまう。わかる!と思ったそこの貴方、握手しましょう。
今更ながらこの曲って、アイドルのソロ曲としては異端では……?
という話はさておき。
髙橋海人くんへ
この曲を世に出してくれて、歌ってくれてありがとうございます。
最高すぎたので、いつか生バンドで歌ってくれたら泣いて喜びます。
オタクより。
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