【二次創作シナリオ】プリティーリズム レインボーライブ 黒川冷 ~クー・ミーツ・モモ~

 ※以下の文章は、2017年1月以降ネット上にて限定公開ならびに即売会にて小数部頒布していた、「プリティーリズム・レインボーライブ」黒川冷シナリオ作品です。黒川冷の過去を、監督の証言を元に(想像をプラスして)形にすることを目的として書いたものですが、2017年6月にKing of Prism ~Pride the Hero~(キンプラ)が公開され、黒川冷の過去が概ね明るみになったことにより、この作品も役目を終えたかなと考え、ここに全文公開致します。お暇があったらお読み頂けると嬉しいです。


【人物】
 黒川冷(20)(16)
 モモ(幼)
 荊千里(28)
 チンピラ1
     2
     3
 新聞屋
 記者1

【本文】

○街・全景(夜)
   ネオンが光り輝く街並み。
   
○同・路地裏(夜)
   ゴガッという打撃音。
   筋骨隆々とした男が泡を吹いて倒れる。
   暗闇から、黒川冷(20)が現れる。
   チンピラたち数人が、怯えながら冷を
   取り囲んでいる。
チンピラ1「おい、どうなってんだよ、こい
 つ、半端なくつええ」
チンピラ2「おい、こいつ黒川冷じゃないか?」
チンピラ3「まじかよ、あのストリートの帝
 王、黒川冷……」
チンピラ1「黒川冷にケンカふっかけて、無
 事で帰ったやつはいねえって聞いたぞ……」
冷「おい」
チンピラ1・2・3・「ヒッ!」
冷「次に気持ちよくなりたいのはどいつだ?
 あ?」
チンピラ1・2・3「ヒエッ、お助け~!」
   チンピラ1・2・3、一目散に逃げだ
   す。
冷「……しょうもねえ」
   冷、タバコを取り出し、火を付ける。
    × × ×
   タバコを咥えながら暗い路地裏を歩く
   冷。
   冷、角を曲がると、野良犬たちが何か
   を取り囲み唸っている。
冷「……ん?」
   犬たちの殺意の目線の中心で、モモ(幼)
が怯えている。
冷「……何だありゃ、ペアともか?」
   モモがモモモモと鳴いている。
   今にも襲いかからんとする野良犬たち。
冷「この世は弱肉強食、運が悪かったな」
   モモは冷を見つめ、モモモモと鳴いて
   いる。
冷「じゃあな」
   冷、帰ろうとする。
   モモモモと鳴き声が聞こえる。
冷「……」
   冷、振り返る。
   モモは冷を見つめ、涙目でモモモモと
   鳴いている。
冷「……チッ、仕方ねえ」
   冷、タバコの吸い殻を足でもみ消し、
   戻って来る。
冷「おい犬ども」
   犬たち、殺意の目線を一斉に冷に向け
   る。
   冷、犬たち以上の殺意を孕んだ目線で、
   犬たちを睨み返す。
   野良犬たち、急に怯え出し、キャワン
   キャワンと鳴きながら去っていく。
冷「助けてやったぞ、じゃあな」
   冷、踵を返し歩き去ろうとする。
   冷の髪の毛を引っ張るピンク色の手。
   冷、怪訝な表情で振り返る。
   モモが空中に浮かび、冷に寄り添って
   いる。
モモ「モモ!」
冷「何だ?お前。ついてくるんじゃねえ」
モモ「モモ!」
冷「ついてくるな」
モモ「モモ!」
冷「……ついてくるなって言ってんだろ」
モモ「モモモ!」
冷「……くそっ、勝手にしろ」
モモ「モモモモ!」
   冷が歩き始め、そのすぐ後ろをモモが
   ついていく。

○黒川宅・中(夜)
   コンクリート打ちっぱなしの内装。
   冷がドアを開け、中に入ってくる。
   モモも入ってくる。
冷「家までついてきやがった」
モモ「モモ!」
   冷、台所まで至り、冷蔵庫を開ける。
冷「お前、何か食うか?」
モモ「モモっ!」
   モモ、冷蔵庫まで飛んで来、冷蔵庫の
   中のシュークリームをムシャムシャ
   と食べ始める。
冷「あっ、てめえ、俺がデザートに食おうと
 思ってたシュークリームを!」
モモ「モモモモモモモ!」
   冷、溜息をつき、シュークリームの皿
   をテーブルの上に出す。
   シュークリームをついばみ続けるモモ。
   ベッドに腰かけ、モモの様子を眺める
   冷。
冷「お前、名前は何て言うんだ」
モモ「モモ!」
冷「喋れる訳ねえか、ペアともだし」
モモ「モモ!」
冷「じゃあ、モモって呼ぶぞ」
モモ「モモ!」
冷「いいんだな」
モモ「モモ!」
冷「……」
    × × ×
   冷がベッドに寝転がり、天井を見つめ
   ている。
   電灯はついておらず、テレビの明りだ
   けが光る。
   冷の傍らのモモは、テレビを眺めてい
   る。
   画面には氷室聖(20)が笑顔で滑走
   する姿。
テレビの声「来週に迫ったプリズムキングカ
 ップ、注目はやはり氷室聖、黒川冷、法月
 仁の3強対決です。今回は氷室聖選手に焦
 点を当てて……」
冷「……聖、今度のプリズムキングカップで、
 白黒ハッキリつけてやるぜ」
モモ「モモ?」
冷「お前には関係ねえよ」
   冷、目を閉じる。

○(夢・回想)学校・保健室
   傷だらけの冷(16)が、荊千里(2
   8)に手当を受けている。
冷「いてて、もうちょっと優しくやってくれ
 よ」
千里「もう、どうして黒川くんは、こうケン
 カばかりするの!ケンカは駄目ってあれほ
 ど言ったじゃない」
冷「しょうがないじゃん、向こうからふっか
 けてくるんだから……イテテ」   

○(夢・回想)河川敷(夕)
   冷と千里が、河川敷上の道路を並んで
   歩いている。
冷「先生、おれプリズムスタァになるよ。と
 いってもお金とかないから学校には通えな
 いけど……ストリートで頑張ってみるよ」
千里「そう、すごいじゃない」
冷「氷室聖っていうすげえ奴がいるんだ、い
 つか、そいつを実力でぶっ倒したい」
千里「頑張ってね!応援してるわ!」
   千里、満面の笑顔。
冷「(照れながら)お、おう……」

○(夢・回想)交差点
   電信柱に追突したトラック。
   冷が、血まみれの千里を抱きかかえて
   いる。
冷「先生、先生!」
千里「黒川くん……プリズムスタァになる夢、
 忘れないでね……」
冷「先生、先生……先生!」

○黒川宅・中(早朝)
冷「はっ!?」
   冷、飛び起きる。
   砂嵐のテレビ画面。
冷「……」
   冷や汗をかいている冷の顔。
   冷、傍らを見る。
   スースーと寝息を立てているモモ。
   聖、机の上にある荊千里の笑顔の写真
   に目をやる。
冷「……先生」

○高架下・全景
   電車が通り過ぎる。

○同・中
   冷が鬼の形相で練習に励んでいる。
冷「うおおおおおお!!ウインドミル・レビ
 テーション!」
   ウインドミルをする冷の体が高く浮き
   上がる。
冷「EASY・DO・バーニング!!」
   冷の体が幾重にも分身し、爆発が起こ
   る。
冷(M)「聖。今の俺はお前と戦うためだけに
 生きている。必ずお前を倒し、プリズムキ
 ングの称号を得てみせる!」
   冷の様子を見つめるモモ。

○街中
   歩道を歩く冷とモモ。
   新聞屋が号外を配っている。
新聞屋「号外!号外!氷室聖選手、ケガによ
 りプリズムキングカップ出場辞退!」
   冷の目が見開かれる。
冷「何だと!」
   冷、新聞屋に駆け寄る。
冷「よこせ!」
新聞屋「わあっ、何ですかアナタは!」
   冷、新聞屋から号外をぶんどる。
冷「……プリズムショー引退の恐れもあり、
 だと……?おいお前、デマこいてんじゃね
 えだろうな!」
新聞屋「デマなワケないでしょ!こうして号
 外配ってる訳ですから……!」
   冷の号外を持つ手が、力なく降ろされ
   る。
冷「聖……」

○プリズムキングカップ会場・全景
   巨大なアーチ状のスタジアム。

○同・入口
   「プリズムキングカップ」の看板。

○同・中
   記者たちに囲まれる冷とモモ。
記者1「冷さん、氷室選手がケガで欠場との
 事ですが!」
冷「……聖を倒すことなくして、キングの価
 値なし!」
記者2「冷さん!」
記者1「欠場するんですか!?」
記者2「コメントを!」
   冷とモモ、記者たちを置き、去ってい
   く。

○黒川宅・中(夜)
   冷とモモが入って来、ドアを閉める。
冷「……」
   冷の顔が、激しい怒りの表情になる。
冷「……くそっ!」
   冷、そこらじゅうの物に当たり散らし、
   暴れはじめる。
   慌てるモモ。
冷「くそっ!くそっ!」
   ソファから綿が飛び出し、宙に舞う。
冷「俺とお前の大会だった筈だろ!聖、くそ
 っ!怪我で引退だと!?ふざけるな!勝手
 に俺の前から居なくなりやがって!」 
   ガラスが割れ、破片が飛び散る。
   飛んでくるものを慌てて避けるモモ。
冷「聖……」
   冷、ズタズタになったベッドに腰かけ、
   頭を抱える。
冷「俺は、俺はこれから何を糧に生きていけ
 ばいいんだ……」
   冷、机に立ててある荊千里の写真に目
   をやる。
冷「先生……、俺は一体どうすれば……」
   冷、荊千里の写真まで這い寄り、手に
   取る。
冷「先生……逢いたいよ、先生……先生……」
    × × ×
   冷、血走った目で、溶接作業をしてい
   る。
   怪訝な表情でそれを眺めるモモ。
    × × ×
   完成した、等身大の荊千里の人形が部
   屋に置かれている。
   対面する冷。
冷「先生、俺やっぱり先生が居ないと駄目だ」
   無言の人形。
冷「先生、俺はこれから一体どうしたらいい
 んですか」
   無言の人形。
冷「先生、何か答えて下さい……」
   無言の人形。
冷「先生!」
   無言の人形。
   冷、はっとし、頭を激しく左右に振る。
冷「俺は一体何をやっているんだ!バカか俺
 は……!」
   冷の様子を眺めるモモ。
冷「先生……」
   モモが飛んで来、荊千里人形の背後に
   隠れる。
冷「お前、何をやって……」
モモ「元気出すモモ」
   冷、驚きの表情。
モモ「元気出すモモ」
冷「モモ、お前喋れるのか!?」
モモ「モモじゃないモモ、先生モモ」
冷「お前……」
   千里人形の陰に隠れたモモが喋り続け
   る。
モモ「あちし、先生モモ。冷くん、元気がな
 くなったときは、おいしいもの、いっぱい
 いーっぱい、食べるといいモモ。そうすれ
 ば、また、元気が出てくるモモ。あちしは
 ショートケーキが食べたいモモ」
冷「……」
モモ「元気出すモモ」
冷「……先生は語尾にモモなんかつかねえよ」
モモ「……ごめんモモ」
冷「もういいよ、出てこい、モモ」
   モモが千里人形の背後から出てくる。
   冷、モモを抱きしめる。
モモ「モモッ!?」
冷「ありがとう……」
モモ「……元気出たモモ?」
冷「ああ、出たよ」
   モモの体に、涙が一滴、二滴落ちる。
   写真立ての中の、笑顔の千里の写真。

○街・全景(早朝)
   朝日が昇り、街を照らす。

○黒川宅・中
   千里人形の胴体を溶接作業する冷。
   モモがその様子を眺めている。
冷「本当にこの体でいいのか?」
モモ「喋れるペアともなんて前代未聞モモ。
 大騒ぎになるモモ、人になりすます身体が
 必要モモ」
冷「いや、何か、その、先生の体だと、お前
 に申し訳ないというか……」
モモ「冷の心が休まるなら、あちしは喜んで
 先生のかわりを務めるモモ」
冷「でも……」
   モモ、千里人形の体の中に入る。
モモ「思い出と一緒に生きていくことは、決
 して悪い事じゃないわ。良かったこと、楽
 しかったことを思い出せば、また、生きる
 希望が湧いて、お腹もすいてくる」
冷「モモ……」
モモ「さっ、早速お腹がペコペコよ。甘いも
 のを頂戴。冷蔵庫にケーキが入っていたわ
 よね?」
冷「……仕方ねえなあ」
   冷、笑顔で立ち上がり、冷蔵庫へ向か
   う。 

                  <了>







【読まなくてもいい・妄想的・あとがき】
 この本では、アニメ「プリティーリズム・レインボーライブ」に登場する黒川冷の過去の話、そして黒川冷とモモの交流(所謂COOモモ)を、オリジナル設定足し完全二次創作シナリオででっち上げてみました。如何でしたでしょうか。今まで3本ほどプリリズで二次創作シナリオを書きましたが、今回は特に大変で、全く自信がありません……が、一生懸命書いたことは事実です。何とか単位ぐらいは来てくれると有難いなあ……などと思っています。
 いつものように、何故この本を書いたのかということをつらつらと書き連ねたいと思います。
 COOモモについて考えた場合、一番の問題は「なぜ黒川冷はモモに、かつての恩人(恋人?)である人の姿のアンドロイドを着せているのか?」という事だと僕は勝手に思っています。
 監督が語った設定(あくまで非公式ではありますが)によりますと、「冷は横浜にたむろしていたゴロツキであったが、ある恩師の女性との出会いをきっかけに更生し、プリズムショーの世界へ入った。後にその女性の容姿をモデルにロボ千里を作った」であるそうです。
 COOモモを描こうとするとき、どうしてもそこが引っかかる所でありまして、「モモを愛しているならば、言ってみれば過去の女性の姿のロボットを着せてるってどうなんだ?失礼じゃないか?モモはそれを承知しているのか?」と僕個人としては、疑問符が湧いてきてしまうのです。まあ、「男は父親になったとき、娘には初恋の女性の名前を付けたがる」なんて話もありまして、モモに千里ロボを着せる冷の精神構造もそれと同じようなものなのかもしれないのですが。出来れば、モモへ作ったロボットがかつての恩人の姿であることの明確な理由を、きちんと捏造したい……そう思って、そこに辻褄があう説明をすることを第一に、この本を書きました(その結果、冷が恩師に逢いたい一心でロボットを組み上げてしまうという割とアブネーやつになってしまいましたが……)。
 しかしながら、こうして書き始め、冷の精神状態について妄想を膨らませてみると、まず、割と聖冷というか、宿命のライバルである聖とプリズムキングカップで決着を付けられなかった落胆というのが、冷にもそれなりにあったのではないか、と思い至りました。そして、荊千里の姿をした恩師というのも、恐らくは既にこの世には居ない(まだ生きていたら生き写しのロボットなんて作らないでしょう)。そうすると、愛する?恩師に先立たれ、聖との決戦も果たせずで、冷の心にはかなりの空白が出来ていたのでは、と想像でき、それを埋めてくれたのが、モモなのではないか、という風に、妄想に妄想を重ねていくことが出来ました。
 あと、意外と書いていく上でネックになったのが、「モモは冷のペアともとして過去に表舞台に姿を現してるのに、何で荊千里という人間の姿を借りて姿を隠さなきゃいかんのか?」という所でした。そこは、苦し紛れのでっちあげで「あのRLの世界では、ペアともという動物が普通に空を飛んでいることは割とあることで許容されるが、ペアともが喋り出すと大問題になる(動物が喋った!ってなる)」という事にしました。そうすると、表舞台に出ていた時のモモは単なるペアともで言葉が喋れず、後に喋れるようになった、という解釈になっていきました。何故喋れるようになったか……それはモモの冷に対する愛が奇跡を起こした、という事にしました。愛ですよ、愛(ごめんなさい)。
 あと、冷を勝手に甘い物好き設定にしてしまいました。冷の好きな食べ物嫌いな食べ物設定ってどこかで公表されていましたっけ?ちょっとそこまでは確認できませんでした。もし冷が甘い物嫌いだったらすみません。
 ……以上のような感じで、今回COOモモ二次創作シナリオが一本仕上がりました。
 また何かパッと思い浮かんだら、突発的に書いてみようかと思います。


                          2017.1.11 eifonen

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