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C'È ANCORA DOMANI / まだ明日がある(イタリア映画祭2024劇場公開未定)

きっとこの映画の作り手は『パラサイト半地下の家族』を観て、悔しかったに違いない。今までネオリアリズモという手法で貧乏な国民を散々描いてきたイタリア映画がぽっと出の韓国映画に貧乏家族を描いた映画でアカデミー賞をさらわれたのだから。

パオラ・コルテッレージが監督・脚本(共同)・主演を務めた映画は1946年のローマが舞台。それも貧乏アパート暮らしの主婦デリアが主役。最初1.33:1のアスペクト比画面で映画が始まる。タイトルバックが出た後画面は広がるが、最後までモノクロのまま。

そんな映画がイタリア本国で2023年の最大のヒット作だと。『マーベルズ』や『バービー』を抑えてである。これは大きなニュース。でも観てみたらその内容の面白さに納得の出来栄え。

興行的成功の大きな要因はもちろんパオラ・コルテッレージに負うところが大きいと思うが、いわゆるウーマンエンパワーメント映画的な説教臭さがないからではないか。とにかく楽しいコメディに徹しているからだと。

戦後すぐのイタリアの男性中心社会に起因する女性達の生きにくさが実に豊かなディテールで描かれているから観客は1946年のローマにタイムトリップしたような感覚になるし、特に若い観客は男性社会の醜悪さにきっと驚くと思う。

かといってシスターフッドを中心に持って来たりはせずに、あくまで当時の主婦の価値観を基軸に実に生き生きと登場人物たちを描いている。これってネオリアリズモじゃん!

実に数多くの物語上の仕掛けがどれもセンスがよく、話のオチもあれ以上に清々しいラストはちょっと思いつかないレベルで素敵。

そんな映画が日本での配給は未定。おそらく大ヒットが望めると踏んで海外配給のブッキングフィーがとんでもなく釣り上がっているのだと思います。だから日本で見られるのはイタリア映画祭2024大阪会場のみです。


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