シャーロット・ウェルズ監督・脚本デビュー作。実に細やかな描写と大胆な省略。

父親カラムを演じたポール・メスカルは英国、米国両アカデミー賞の主演男優賞にノミネート。それくらい繊細な父親を丁寧に演じています。

娘ソフィー役のフランキー・コリオ、800人の中からオーディションで選ばれた俊英というか、カラムの本当の娘にしか見えません。

トルコのオルデニズ、スタルニエなどが主なロケ地。イギリス人に人気の観光客だからスコットランドから父娘が訪れるのには自然な設定。1990年代のリゾート地の雰囲気がよく出ています。

ホームビデオの映像を巧みに使いながら、あの夏を一緒に過ごした父親の思い出を20年後のソフィーがそのビデオを見ながら振り返るだけの映画といえばそうなんですが、映画という記憶装置がソフィーの思い出を何倍にも美しく、そして切なく切り取っていてジーンと来ました。

（追記）日本公開版のポスターのデザインも素晴らしい。