「チャラい」考

先日、このような半分ネタで半分まじめなツイートをしました。

すると何人かの方々に「ちげえよ」と総ツッコミを受けました(実際にはもっと優しく否定されました)。

チョロいはともかく、チャラいの意味は余りよく分かっていなかったのでこの機会に勉強してみました。

私がこの言葉に出会ったのは恐らくオリラジの藤森慎吾がチャラ男を自称し出した辺りです。そこから「口が上手い」「ノリが軽い」プレイボーイのような男をチャラ男と言うのだと理解しました。

Wikipediaのチャラについての曖昧さ回避のためのページにも「チャラい」の例文として藤森慎吾が挙げられていました。しかし、そこでは

上記チャラチャラを略したチャラに形容詞化する接尾語「い」をつけた若者言葉

という説明になっており、その上に書かれた「チャラチャラ」の説明は

小さな金属が触れ合う音から、アクセサリーなどで着飾った様子

というものでした。更にWikipediaのチャラ男の項を見てみますと、

ピアスなどのアクセサリー類を身につけていることから「チャラチャラしている」という表現が生まれたとする見方もある

という説明が。これだけを見ると「チャラい」の「チャラ」は金属が擦れ合う擬音語だということになります。

さきほどの曖昧回避のページでは「ちゃら」の項に

ちゃら - <俗> 出鱈目、出任せ、いい加減な取引・態度・発言、すぐにバレる嘘。転じて、契約・貸借関係などの取引が「チャラ(いい加減なもの)」であると判明した場合に、その取引をご破算(帳消)にすること。江戸期から現代にまで受け継がれている俗語。 「ちゃらぽら」・「ちゃらんぽらん」とも。 例:「あの男の言うことは ― 事(チャラごと)だ。」「こんなイカサマ勝負は ― (チャラ)にしろ。」

という説明があり、私としてはこちらの方がチャラ男のいいかげんな雰囲気に合っていると思ったので「擬音語から派生」説は納得がいきませんでした。

そこで、更にコトバンクを当たってみました。

ちゃらちゃら
( 副 ) スル
① 小さな、薄い金属性のものが互いに触れ合ったり、固いものに触れたりして鳴るさま。 「小銭を-いわせる」 「雪駄せつたを-(と)させて歩いてくる」
② よどみなく話すさま。べらべら。 「よくまあ-(と)しゃべる人だ」
③ 安手で派手な服装をしているさまや、浮ついた振る舞いをするなど軽薄なさま。 「 -(と)していけすかないやつだ」
出典 三省堂大辞林 第三版

やはり最初に挙げられているのは擬音語でしたが、更に多弁性と浮ついた振る舞いという要素が出てきました。更に同じコトバンクのページの日本国語大辞典からの情報を見ますと、

④ 女性がはでにしなをつくってふるまうさまを表わす語。また、女性の服装が安手ではでなさまもいう。
※滑稽本・七偏人(1857‐63)四下「蒟蒻のやうな形(なり)で、〈略〉ちゃらちゃらちゃらと駈出しまして」
※野菜売りの声(1969)〈坂上弘〉「そんなちゃらちゃらした服を着てたって」
⑤ 軽薄でうわついたさま、また、男女がなれなれしくじゃれ合うさまを表わす語。
※新西洋事情(1975)〈深田祐介〉舶来女房、愛すべし「フランス女とちゃらちゃらしたって、別に問題ないんですよ」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版

④は女性に限定している点が特徴的ですね。以前から「チャラ男」には身だしなみや、女性に対する接し方が女性的であることも含まれるのかもしれないという気がしていたので、これは興味深いと思いました。更に言えば、チャラ男は英語のmetrosexual(美意識が高く、見た目や生活様式にお金をかける男性のこと)に通じるものがあるのかもしれません。眉毛や爪のケアに余念がないとされる藤森慎吾の美意識へのこだわりはまさにmetrosexualだと言えるでしょう。

しかし、ここで気になるのは「女性の服装が安手ではでなさまもいう」という部分。チャラ男にはどうしても派手さと共に安っぽさが付きまとう気がします。そうなると自己投資を怠らないmetrosexualとは対極の存在になってしまいます。実際にお金をかけているかどうかより、その浮ついた雰囲気が薄っぺらい・安っぽいということなのかもしれません。どんな高価なアクセサリーでも身に付けすぎると安っぽく見えるということもありますし。

また、「多弁性」という要素も日本の古典的男性像と照らすと「女性的」だと言えるかもしれません。また、しゃべりの量だけでなく、質的に「チャラい発言」とされるものもある気がします。それは例えば、女性の服装や髪型を褒めるといったことです。私見ですが、こうした内容は女性同士では頻繁にやり取りされますが、男性が女性に対して言うことは相対的に少ないと思います。そういった意味で「チャラい発言」は「女性的」だと言えそうです。この論理展開は少し強引かもしれませんが。

最後に、まとめに代えてことばさあちから「ちゃら」の付く言葉をいくつかピックアップしてみました。

おちゃらけ
ふまじめな態度や、おちゃらけた言葉。「おちゃらけを言ってしかられる」→おちゃらける

へっちゃら
[形動]《「平」は平気、「ちゃら」は冗談、でたらめなどの意》
1 ものともしないさま。気にかけないさま。平気。へっちゃら。「これくらいの雪は平ちゃらだ」
2 たやすいさま。容易にできるさま。へっちゃら。「こんな問題は平ちゃらさ」

ちゃらんぽらん
(1)こぎれいさ、または秩序のない
(2)慎重な考えを表していない、あるいはそれに特徴づけられない
(3)熟考の欠乏の提示
(4)精神的に遅い
(5)結果に対する注意の欠如を示す
(6)繰り返し殴られて、または、繰り返し殴られたようボーっとしている

おまけ:チョロい

URANARUというサイトに「【男女別】ちょろい人の特徴・いい意味で使うのか・語源」という記事があり、そこに「チョロい」の語源が載っていたので紹介します。チャラいとの関係は皆無でした。

「ちょろい」という言葉の語源は「ちょろ」という小さな舟が由来とされています。湾内のみを素早く走る「ちょろ」を負かすほどに機敏な動きをすることを「ちょろまかす」と言いました。人目を盗んで釣銭を胡麻化すようなことを「ちょろまかす」と言うのはここから来ています。

素早く誤魔化すことは割と簡単だったことから「ちょろまかす」が「ちょろい」に発展して「簡単・たやすい」という意味をもつようになりました。

これを人にも当てはめて「簡単に扱いやすい人」も「ちょろい人」と言うようになりました。


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