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問題だらけの全国学力テスト

コロナ禍で今年度は中止になってしまいましたが、全国学力テストは開始から10年以上が経ちます。

来年度はパソコンを用いたオンラインでの解答方式の導入が検討されています。

毎年8月頃になると都道府県別の平均点が表され、その順位が報道されます。

文部科学省によれば、全国学力テストは大きく二つの目標を持っています。

一つは国の教育政策に活かすという側面です。全国の児童生徒の学習状況を国がモニターし、教育政策に活かすための基礎資料とするというものです。EBPM(Evidence Based Policy Making: 証拠に基づく政策立案)の重要性が叫ばれる昨今、教育分野でも、こうした「政策のためのテスト」が必要だということです。

もう一つは、個々の学校の指導に役立てるという側面です。そこには、せっかく数十億円もの予算をかけて学力テストをするのだから、その成果を調査に参加した一人一人の子どもに還元できる「指導のためのテスト」として役立ててほしいという思いがあるようです。

この二つの目標を同時に達成するために選択された調査法が、毎年度、すべての小学六年生と中学三年生を対象に、学力テストを実施するという方法です。

子どもたちの学習成果を知るためには、その総まとめである小学六年生、中学三年生の学力を把握すれば十分で、一人一人の子どもの点数がわかれば、テストを指導のために活かすことがです。

そして、子どもの点数を学校ごと、あるいは自治体ごとに平均していけば、個々の学校・自治体の課題もわかるだろうというシンプルな発想があります。

こうした一人一人の子どもの点数を学校(あるいは自治体)ごとに平均すれば、その学校(自治体)の課題がわかるに違いないという考え方は、全国学力テストに関わる議論でも、しばしば目にします。

各自治体(学校)がわずかでも平均点を上げようと必死になって努力しているのも、自治体(学校)の平均点が、その自治体(学校)の学校・教員の質を示しているに違いないと思われているからです。

全国学力テストの点数が振るわないことを問題視し学校ごとの点数を公表すべきだという意見や、点数の低い学校の教員にペナルティを与えるべきだという見解の背後にも、こうした考えが潜んでいます。

しかし、この平均点が学校や教員の質の表れだという考えは誤っています。

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