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α40(アルファフォーティ)について

α40(アルファ・フォーティ)という遊び方をご存知だろうか。
オールドスクールより狂った世界(褒め言葉)だ。
この遊び方はMTGの最初の遊び方なのだそうだ。
MTGの始まりの世界を堪能しようというもの。

今回はその狂った世界のルールをお話ししていこうと思う。
実はこのアルファ・フォーティについては、
もっと早く記事にしたかったのだが、
細かいルールを調べるのに時間がかかってしまった。


α40の ルール


まずはルールを簡単に説明していこう。

・デッキの枚数は40枚以上。

・ヴィンテージのような1枚制限のカードは無い。

・デッキに4枚制限は無い。何枚入れても構わない。

・ゲーム開始時の初手7枚を取る前に、
 ライブラリーの1番上のカードを追放する。

・先手プレイヤーに先攻ドロー有り。

・使えるカードセットは1つだけ。α版だけ。

・マリガンが無い。

・・・なにこれ?
と思う人のほうが多いだろう。
そしてデッキを作れないと言う人の数も同じくらいいるだろう。

この遊び方は、
Magic the Gatheringが最初にこの世に出た時のルールらしい。
今から25年以上も前のルールだ。
「最初の頃には先手プレイヤーにも最初のドローがあった」
なんて事、知っている人も限られているだろう。
40枚デッキで4枚制限も無かったという事も普通は知られていない。
補足的に書いたに過ぎないが、
4枚制限も無い時代だ。
1枚制限すら無い。

つまり、アルファ・フォーティでは、
こんなデッキを組んでも怒られないわけだ。
組めるなら。

-インスタント8枚-
8《Ancestral Recall》

-ソーサリー13枚-
5《Time Walk》
4《Timetwister》
2《Wheel of Fortune》
2《火の玉/Fireball》

-アーティファクト19枚-
8《Black Lotus》
6《Mox Sapphire》
5《Mox Ruby》

-土地0枚-

合計40枚

ざっと見て、2019年の価格で、
・状態はそれほど気にしない(EXかそれより下)
・全てα版
という条件で、

《Ancestral Recall》130万円
《Time Walk》130万円
《Timetwister》100万円
《Wheel of Fortune》32万円
《火の玉/Fireball》1万円
《Black Lotus》750万円
《Mox Sapphire》200万円
《Mox Ruby》130万円

ぐらいだとして、
(状態等で多少の変化あり。)

《Ancestral Recall》130万×8=1040万円
《Time Walk》130万×5=650万円
《Timetwister》100万×4=400万円
《Wheel of Fortune》32万×2=64万円
《火の玉/Fireball》1万×2=2万円
《Black Lotus》750万×8=6000万円
《Mox Sapphire》200万×6=1200万円
《Mox Ruby》130万×5=650万円

合計で1億6万円!

1億・・・。
地方の土地に豪邸が建つ値段だ・・・。
それがたった40枚の紙。
自分で書いていて何を言っているのだという気持ちになる数字だ。

日本で作れる人など片手で足りるだろう。
下手したら0人だ。
先に言っておくけれども、
店主はβ中心にコレクションをしているので、
このデッキを作る事は出来ない。

仮にβ版だったら作れるか?と言われても出来ない。
店主の知っている人にパワー9を、
合計で60枚以上持っている人を知っているが、
その人もα版だけでデッキを組むとなったら無理だ。

とりあえずルールの説明に戻ろう。
「ゲーム開始時にライブラリーの1番上のカードを追放」
というルールは、
大昔MTGにアンティ(賭け)ルールが存在した時のものを表現している。
大昔は賭けられたカードは負けたら取られるというルールだった。
このアルファ・フォーティでは実際に賭けはしないが、
大昔の時代を再現するために1枚追放するという仕様にしている。
実際に賭けないという事でフェイク・アンティと呼ばれる。

この追放されたカードは当然公開情報である。
追放したカード次第では相手のデッキがわかるという事だ。
ライブラリーは最低40枚というルールなので、
最初に1枚追放+初手7枚という事は、
残りライブラリー32枚からスタート。

このフェイク・アンティルールにより、
「デッキに勝ち手段は1枚だけ」
が出来なくなっている。
1/40の確率でフェイクアンティの1枚追放に勝ち手段が消えたら、
そのデッキは一切勝ち目が無くなるからだ。
どうあっても勝ち手段は2枚は仕込む必要がある。
いや、1/40の確率で初手負けが確定しても構わない人は、
デッキに勝ち手段を1枚にしても良いが、
さすがにそんな人はいないだろう。

そして、使えるカードセットはアルファのみ。
この遊び方は、

「オールドスクールよりさらに前、
 MTG発売直後のアルファだけで遊んでいた世界をそのままに!
 真の究極がここにある!」

というものが趣旨なのだそうだ。
追記で、アルファのみという事は、
どういう事かと言うと、
ある2枚のカードが使えない。
多少知識のある方ならわかるだろう。

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《Volcanic Island》
《黒の防御円/Circle of Protection: Black》

の2枚だ。
この2枚は印刷のミスにより、
アルファ版には封入されなかった。
そのため、この2枚はアルファ版がこの世に存在しない。
青赤のデッキを組みたい人はちょっぴり大変。

ここまでの基本はご理解いただけただろうか。
ここまで読んで、

「よし!デッキ作って遊ぶぜ!」

という人は全読者の1%未満だろう。

ただ、この加藤英宝、MTGの色々な遊び方と楽しみ方を広げるためには、
どんなにディープな世界も詳しく書いていきたいのだ。
(他にこんな事を書く人などおらんのも理由だが。)

これを読んでやる気がある人が1人出るだけでも、
これを書いた価値があると思っている。

さらにディープな世界へ

というわけで、
もっとアルファ・フォーティのルールを掘り下げて説明をしていこう。

・マリガンについて。

なんと、マリガンが無い。
どんな初手でもやらなければならない。
アルファの時代にはマリガンすら無かったという事。
ちなみにマリガンとは、
「最初のチャンスが不運や失敗によって失敗した後に、
 再度やり直しを行う事。」
という意味で、ゴルフの用語として使われていた。
ただし、ゴルフでも正式なルールでは採用していないらしい。

・アンティカードについて。

ルールがフェイクアンティなので使えるのかと思ったら、
アンティカードは禁止だ。
《Contract from Below》
《Darkpact》
《Demonic Attorney》
の3枚が禁止カード。

・エラーカードについて。

アルファのエラーカードは4種ある。
1つ1つ書いていこう。

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まず、《エルフの射手/Elvish Archers》は、
本来のパワータフネスは2/1なのだが、
アルファ版はエラーで1/2になっている。
この《エルフの射手》は1/2ではなく、2/1で扱う。

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《オークの軍旗/Orcish Oriflamme》は、
本来のコストは3赤なのだが、
アルファ版ではエラーで1赤になっている。
この《オークの軍旗》は本来のコスト3赤で扱う。

余談だが、
モダンホライゾンのカード、
《ゴブリンの軍旗/Goblin Oriflamme》は全く同じ効果で、
コストが1赤になっている。

このカードが実際にゲームバランス上、
1赤のコストで問題無いと判断され、
さらに
「アルファ版の《オークの軍旗》に対するオマージュ」
として作られている事がわかる。

画像4

《オーク弩弓隊/Orcish Artillery》は
本来のコストは1赤赤なのだが、
アルファ版ではエラーで1赤になっている。
この《オークの軍旗》は本来のコスト1赤赤で扱う。

画像5

《Cycropean Tomb》は、
本来のコストは4なのだが、
アルファ版ではエラーでコストが全く書かれていない。
この《Cycropean Tomb》は本来のコスト4で扱う。

・マナバーンについて。
マナバーンはある。
知らない人のために書いておくと、
フェイズの終了時に使っていないマナがあると、
そのマナの数だけライフを失うというルール。
MTGの最初からあったルールだが、
基本セット2010導入時のルール変更により廃止。
(基本セット2010の発売は2009/07/17。)

MTG発売が1993年なので、
15年以上も使われていたルールを廃止したのである。
これは賛否両論が相当にあった。
今から考えてもまだマナバーン廃止から10年しか経っていないのだ。
そして、このマナバーンというルールは、
オールドスクールやアルファ・フォーティのような、
昔の遊び方を再現する際には採用される。

・再録カードについて。

アルファ・フォーティは再録カードは使用不可。
と現時点では決められている。
β版やUnlimited版のカードはダメだという事。
完全にα版のみの構築である。

何よりこの遊び方のハードルを上げているのは、
言うまでもなくこの、
「デッキの全てをα版のカードで作れ。」
である。

・その他のルールについて。

基本的には現在のカードのオラクルを参照してゲームを行う。

と、こんな感じだ。


 ”α40”を広めるために・・・

普通のプレイヤーはα版のカードを持っていない。
買う人もあんまりいない。
ほとんどの人が1枚もα版のカードを持っていないはずだ。

さすがにこのルールを聞いた時に、
「どこの貴族がこんなデッキを組めるんだよ。
 貴族を通り越して冗談抜きに石油王の遊びじゃないか?これ。」
と普通の人よりはカード資産を持つ店主ですら思った。

これを書いている今もそう思っている。
一般的な人が組めるのは、
「シールド戦のデッキよりちょっと強い」
くらいのレベルらしく、
少々頑張ったくらいのデッキでこんなものだ。

-クリーチャー14枚-
4《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》
4《鉄爪のオーク/Ironclaw Orcs》
4《ハールーン・ミノタウルス/Hurloon Minotaur》
2《大蜘蛛/Giant Spider》

-インスタント4枚-
4《巨大化/Giant Growth》

-ソーサリー4枚-
4《分解/Disintegrate》

-土地16枚-
8《森/Forest》
8《山/Mountain》

合計40枚。
全てコモンカード。

これを構築するだけでも一万円払っても作れない。
α版と同じイラストで同じデッキを組むなら千円でおつりが来るのに。

ルールを理解していただいて、
デッキを作る気になった人は何人いるのだろう。
下手したらゼロだ。

オールドスクールも最初のルールで遊べる人なんて少ない。
オールドスクールの最初の純正ルールは、

α、β、Unlimited
Arabian Nights
Antiquities
Legends
The Dark

しか使えず、しかも再録カードを一切認めていなかった。

その後、チャネルファイアボール・ルールと呼ばれるものが作られた。
チャネルファイアボールは、
アメリカの大手カードショップの名前。
このルールはチャネルファイアボール(Channel Fire Ball)の頭文字をとり、
CFBルールと呼ばれる。

CFBルールでは、上記のセットに加えて、
Fallen Empireが入り、
1994年発行のブックプロモ(《闘技場/Arena》《Sewers of Estark》)
の2枚も使用可能になり、
禁止カードも少々違う。

CFBルールでは再録カードを許可している。
また、日本ではエターナルウィークエンド等のイベントにおいても、
CFBルールが採用されており、
オールドスクールをプレイする人達の中では、
このCFBルールが主流となっている。

純正オールドスクールは多くの人にとってはデッキが作れないのだろう。
再録カード使用許可のCFBルールは、
多少のルール変更はあれどもプレイヤーの裾野を広げる事に成功した。

ただし、
やはりオールドスクールという世界は、
「古き良き時代を楽しむ。」
という事を念頭にヨーロッパの人が作ったルールだ。
オールドスクールという名が示す通りというべきか、
古き良き時代を楽しむ気持ちを持つという、
"入学資格"が必要になる。
そしてそれはアルファ・フォーティでも同じだ。

ただ、
純正オールドスクール同様に、
一般人にはあまりにも難しい遊び方である事は否めない。
そこで、自分はこのように緩和ルールを提唱したい。

「β版とUnlimited版を使う事を許可する。」

と。

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ここまで緩和する事には意味があるし理由がある。

まず、発売日だ。

α版発売日:1993年08月05日
β版発売日:1993年10月04日
Unlimited版発売日:1993年12月01日
Revised版発売日:1994年04月01日

Revised版は1994年発売である事に加えて、
他セットからの再録、パワー9が再録されなかった等の違いがある。
α版、β版、Unlimited版は、
ミスによりα版に
《Volcanic Island》
《黒の防御円》
が無いだけで、他は全て同じだ。
発売年も3つとも同じ1993年。

やはり古き良き時代を楽しむというものには、
それなりのハードルは残すべきだと思う。
Revisedにはイタリア語版、ドイツ語版、フランス語版がある。

古き良き時代はやはり英語版でプレイしてこそではないかと思った。
このアルファ・フォーティはオールドスクール以上に変わった遊び方だ。
もし、Revisedまで使用可としてしまったら、
多くの人がデュアルランドを使えるようになるが、
それは言い方を変えれば使えてしまうのだ。

アルファ・フォーティを純正で組む人達からすれば、
対戦相手からRevisedのデュアルランドがセットされる事を望まないのでは無いだろうか。

そんな事を考えつつ、
ギリギリの妥協ラインはどこだろう?
と考えた結果は、
発売年が同じであるUnlimited版までという案が思いついた。
基本土地であろうと最低ラインがUnlimited版。

もちろんのこと、
《Volcanic Island》
《黒の防御円》
この2枚は使えない。

仮に純正アルファ・フォーティをやろうとすると、
どうしてもα版のカードを入手しなければならない。
これは金銭的にも入手難度も厳しい人が多い。
同様に、緩和版アルファ・フォーティをやろうとすると、
デュアルランドですらUnlimited版の入手を要求される。
このくらいの代価があって遊ぶべきものではないか?
と考えた。

そして、このアイデアをヴィンテージをやる仲間に言ってみた。
ほぼ全員・・・と言っても合計しても8人くらいだが、
ある程度乗ってくれた。

「αは無理。でもパワー9をまがりなりにも持っているので、
 Unlimited版ならなんとか。40枚だしね。」

と言ってくれた。

そのうち2人は一週間程で、
「Unlimited版限定デッキに等しいけどデッキ作った。
 基本土地と一部のカードが無いから買う。」
と言ってきた。

さすがヴィンテージを一緒にやる人達だ。
緩和版アルファ・フォーティだと、
パワー9や一部のカードをUnlimitedで持っていれば、
買い足すカードは十数枚で済む場合もある。

その買い足すものの3割くらいは基本土地なので、
それも含めてそれほどハードルの高いものでもない。
デッキが40枚ということもあり、
Unlimited版までを許可するならば、
入れなくはない世界ということだ。

ちなみに店主は純正α版オンリーで作っている。
店主の場合はβ版のカードをコレクションの主軸にしてきたので、
α版のカードをそれほど持っていない。
そのため、Unlimited版までの相手におそらく勝てない。

仮にRevisedを解禁したら、
多くの人にデュアルランドが簡単に使えるようになるので、
やっぱりRevisedは解禁しないほうが良いと思った。

実際にUnlimited版を解禁して組んでいる人達が、
「これでRevisedのデュアルランド使えたらもっと楽なんだけど、
 さすがに解禁すると面白みが無くなるのがわかる。」
と言っていた。

ただ、それを周囲に向けて、

レッツプレイ、アルファ・フォーティ!

なんてさすがに言えない。

誇り高きカードゲームとして


長々と説明をしてきたけれども、
多くの人がアルファ・フォーティに対して、
「誰がこんなもので遊べるの?」
「デッキを作れたとしても周囲に遊べる人いないでしょ。」
「無理。一生かかっても無理。」
と思うはず。
それが普通だと思う。

けれども、
大切な事はそこではない。
MTGはそんな貴族の遊びのようなものが、
確立出来た世界なのだという事を認識し、
そして誇ってほしい。

これを読んでくれている人達の趣味であるMTGに、
それだけの歴史が出来始めている事を。
今MTGをプレイしている人達は、
これから先、MTGがさらなる発展を遂げて、
より深みのある世界に変わっていくところを見る事が出来る。

たかがカードゲームと言われたものが、
誰もが予想もしない形で今後も発展していく。
多くのプレイヤーには、
その歴史を生で見ながら、
それを趣味にした事を心から誇りに思ってほしい。

MTGは世界最高のカードゲームだと。

そしてほんのひとかけらの人にだけ。

レッツプレイ、アルファ・フォーティ!!

店主、いつでも対戦相手募集中!

ではまた。


【Magic:the Gathering専門店 Cardshop Serra】

【Cardshop Serra Twitter・質問箱】

【加藤英宝 Instagram】


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