見出し画像

Serra Angel / セラの天使について

当店の看板でもある《セラの天使/Serra Angel》。

noteで最初に書くとしたらやはりこのカードのお話から。
このカードが無かったらCardshop Serraの名前は別のものになっていただろうし。
このカードがあったからこそ加藤英宝はハンドルネームをセラ(Serra)にしているのだし。

このハンドルネームはとても良い。
・響きが良い。
・マジックプレイヤーだとわかってもらえる事が多い。
・2文字なのですぐ覚えてもらえる。

たとえマジックプレイヤーでなくとも、
セラ→セラフ(熾天使)というところから、天使を想像してくれる人もいる。

いつの頃からそうなったかは知らないけれども、
マジックを始めて何年かした時、
「セラ=加藤英宝」
というくらいにはなったのも嬉しかった。

画像1

《Serra Angel/セラの天使》
コスト:3白白
クリーチャー 天使(Angel)
飛行
警戒(このクリーチャーは攻撃してもタップしない。)
4/4
アンコモン

ゲームにおける《セラの天使》

マジック最初のセット、αから存在するカード。
当然最初の天使のカードであり、
マジック黎明期ではデメリットを一切持たない最高のクリーチャーとして愛された。
単純なカードパワーでは《Black Lotus》には敵わないものの、
《セラの天使》は《Black Lotus》と並ぶマジックの顔。

最強カードとしての象徴が《Black Lotus》
キャラクターとしての象徴が《セラの天使》

画像2

左 : Black Lotus / 右 : セラの天使

と言えばわかりやすいだろうか。

《Black Lotus》は最強、最高の魔法アイテムという立ち位置。
《セラの天使》は初期の登場人物として最強、最高のクリーチャーという立ち位置。
どちらも過去、これほど愛されたカードも無いと言われる人気カード。
単純な強さでは《Black Lotus》に軍配が上がる事は明白だが、
強さ以外の人気では《セラの天使》は甲乙つけ難いと言える存在。

古き良き時代、今はオールドスクールという呼び名がついているような時代、
この《セラの天使》はトーナメントシーンを席巻出来るクリーチャーカードだった。

The Deckと呼ばれる、
「Type1(現ヴィンテージ)理論上最強」
をこの時代に謳われたデッキがあり、
そのフィニッシャーとして《セラの天使》が採用された事もあった。

このThe Deckの《セラの天使》採用バージョンは、
《セラの天使》2枚と《火の玉/Fireball》1~2枚以外にダメージソースは無かった。
なお、2019年の今でも、オールドスクールというレギュレーションにおいてこのThe Deckは健在で、
フィニッシャーはもちろん《セラの天使》だ。
特にこのデッキに採用されていた《Moat》との相性が良く、
《Moat》で地上クリーチャーを止めて、
飛行の《セラの天使》で攻撃するという戦い方はシンプルだがとても強い。

多くの人に愛されるカード

このカードがいかに多くの人に愛されているかは、

コミックセラエンジェル

画像3

マジック25週年の時に記念カードが作られた。

画像4

というところからも、
プレイヤーから製作者に至るまで、
多くの人がこのカードを象徴として扱っている証拠だ。

たった1枚のクリーチャーカード(とプレインズウォーカー)で、
ここまで特別に扱われているカードは他に一切類を見ない。

なにせこのコミックセラエンジェルには、
大人気画家のRebecca Guayさんが描いた《セラの天使》がオーバーサイズドカードで付いてくる。
このRebecca版《セラの天使》はつい最近まで通常サイズのカード化さえされなかった。
Rebecca版《セラの天使》はFrom the Vault Angelsでカード化されているが、
FoilのみでNon-Foilは存在しない。

画像5

いつかノーマル版が出るかもしれない。

カード化はこのコミックセラエンジェルが刊行されてから20年以上の時間を経てからなのだから、
プレイヤーはどれほどこの天使の通常カード化を待たされたのかという程だ。
なお、オーバーサイズドカードになっているカードで絵違い版が存在するのも《セラの天使》だけ。
そもそもオーバーサイズドカードにまでなっている事だけでもレアな事なのに、
その中で2種の絵が存在するという事は異例中の異例だ。

逆な言い方では、
Rebecca Guayさんに雑誌の付録のためだけに
絵を描いてもらう程の存在が《セラの天使》
だという事。

このコミックセラエンジェルはRebecca版《セラの天使》を欲しがって、
コミックのほうを残す人が少なかった事もあり、
コミックとセットで残っている数は非常に少ない。
まして未開封となるとかなりの希少価値がついている。

当たり前の話なのだが、
オーバーサイズドカードを付録に出来るという事はこの本は公式の品だ。
勝手にどこかの誰かが作りたいと言って作れる代物ではない。
公式が作り、販売したもので、
しかもその本のためだけに新絵を用意するという。
これは原画を持っている、または見た事がある人しか知らないのだが、
このRebecca版《セラの天使》の原画は、
Douglas Shulerさんの描いたαからの絵の《セラの天使》の原画よりも大きい。
こういった事からもWizards of the Coast社Rebecca Guayさんの本気度がわかる。

天使という存在が良いイメージを持った事と、
マジック初期の最高コストパフォーマンスクリーチャーという事もあるが、
やはり、最初にこれを描いたDouglas Shulerさんの力は大きい。
《セラの天使》が最初にこの絵であったからこその人気なのだろうと思う。

自分がマジックを始めた頃も多くの人が、
「1枚は持っていたいクリーチャーカード。」
と言っていた。

《Black Lotus》も
「1枚は持っていたいカード。」
と言わしめる魅力と強さだが、
あまりにも高額で諦める人が多い。
(2019年の現在の時点でUnlimited版でも約100万円。)
その点、《セラの天使》のDouglas Shulerさんの絵はα版から第四版まで再録された。

その後にアンソロジーセットに再録。
これだけあればどれか1つくらいは簡単に手に入る。
多くの人の手に渡る事が出来るマジックの象徴カードという事だ。

そしてメルカディアン・マスクスの時に
「アメリカで英語版のボックスを買うともらえる。」
というプロモーションカードでFoilで登場。
このメルカディアン・マスクスの時代に
Wizards of the Coast社が販売促進のために《セラの天使》のFoilを作った事からも、
多くの人々にFoil化を望まれ、Wizards of the Coast社もこの天使に期待をした事がうかがえる。
そのわりにこの《セラの天使》のFoilはカットが甘く、
状態の良いものが結構少ないのが問題だ。

その後、《セラの天使》はMTGの歴史とともに歩み、
そしてマジック25周年を迎えて25周年プロモーションカードでさらに再登場。
この25周年の《セラの天使》はScott M.Fischerさんが新絵を描いている。
この《セラの天使》も日本語版しか存在しないプロモーションカードのためだけに描かれている。
こんなところからも25年経っても《セラの天使》の人気が揺るぎないものだとわかる。
マジックというゲームは《セラの天使》無くしては語れないと言っても過言ではない。

Douglas Shulerさんの描かれた《セラの天使》


さて、第四版までの絵、Douglas Shulerさんの描かれた《セラの天使》について、
もう少し薀蓄を述べてみよう。

《セラの天使/Serra Angel》はα版の時からお話の種に困らないカードで、
最初にカードがデザインされた時、
あの左手に剣を持ち、空を見上げている天使のデザインではなく、
崖に立った天使の絵が初期のデザインだったと言われている。

ところがその天使を描いたDouglas Shulerさん本人が納得がいかず、
「もう一度描かせてくれ」ということで描き直して完成したものが、
マジックの顔として活躍するあの天使になった。

しかし話はこれだけでは終わらず、
この原画(オリジナル)はこの後消息不明になる。

Douglas Shulerさんが引越しの際に紛失したと言われている。
盗難にあったのか、引越しの際に間違って棄てられてしまったのか、真相は謎のまま。

現在まで見つかったという話は1度も聞いていないので、
このオリジナルはもうこの世に無いものと考えても良いかもしれない。

その後、Douglas Shulerさんは《セラの天使》をもう1度描きあげた。

つまり、《セラの天使》にはDouglas Shulerさんの描いた原画が3枚存在した事になる。

1枚目と2枚目は残念なことに現存するかどうかも不明。
1枚目はDouglas Shulerさんが自分で気に入らないと言った絵なので破棄した可能性も。
2枚目は完全に不明。
3枚目は我が手元に。

この手元にある原画には
1994年10月とサインが入っている。

正確には、

「"SERRA ANGEL Ⅱ"
 DOUG SHULER
 10/94」

というサインが原画の裏側に書いてある。

マジックが最初に発売されたのが1993年の後半だったので、
紛失から再度描きあげまでの時間は短かったことがわかる。

この《セラの天使》のDouglas Shuler版
次の《セラの天使》のRebecca Guay版

この2つの原画は大切に額に入れて保管されている。

余程の事が無い限り、
これを手放す事は無いだろう。
いつか自分がカード博物館を作るくらいになれたら、
そこに常設展示したい逸品だ。

全種コンプリートの壁

それから不要なる知識として、存在する《セラの天使/Serra Angel》の種類も紹介しておこう。
(Douglas Shulerさんの絵のものだけ。)

英語版:α版、β版、Unlimited版、Revised、Summer、4th、
アンソロジー、Foil、Collecter's Edition、International Editon、オーバーサイズド
World Champion Deck、4thアルターネイト(それほど貴重ではない。)

日本語版:4th黒枠、白枠

中国語版:4th黒枠

ドイツ語版:Revised黒枠、白枠、4th白枠(Revisedとほぼ区別つかず)

フランス語版:Revised黒枠、白枠、4th白枠

イタリア語版:Revised黒枠、白枠、4th白枠

ポルトガル語版:4th黒枠、4th白枠

スペイン語版:4th黒枠、4th黒枠エラー、4th白枠

韓国語版:4th黒枠

と、最低でもこれだけ存在する。

スペイン語の黒枠エラーは《時の精霊/Time Elemental》の絵になっているものの、
《セラの天使》コレクターは必ず入手するものなので、
絵は違うもののこの欄に。
《時の精霊》のイラストレーターはAmy Weberさん。

見たことが無い人いるかもしれないので、
ここに画像も載せておこう。

画像6

セラ メンタル


こうしてカウントしてみると、
《セラの天使》のコレクションは非常に難しい。
同じ絵だけでも相当な種類があるうえに、
さらにFOILまで存在しているカードなんて実はそんなに存在していない。
同じαから存在していて同じくらい種類があるとしたら、

《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》
《放蕩魔術師/Prodigal Sorcerer》

あたりが思いつく。
多言語までコレクションするとこの2つも結構大変。
(どちらもαの絵のままでFOILまで存在する。)
あとは絵柄が変わっても構わないのであれば、

《暗黒の儀式/Dark Ritual》
《解呪/Disenchant》
《対抗呪文/Counterspell》
《稲妻/Lightning Bolt》

あたりも色々な種類がある。
ざっと挙げた6種のカードのうち、
《解呪》だけがオーバーサイズドで存在するが、
αからの絵ではない。

そして当たり前と言えば当たり前なのだが、
αからRevisedまでに存在しているカードにはSummerというハードルがある。

上記6種+《セラの天使》は全てSummer版が存在している。
店主はSummer版《セラの天使》を持っているがたった2枚だ。

頑張ったらあと1~2枚買う機会はあったが、
状態が良くなかったのでやめておいた。
《セラの天使》のコレクションは全種コンプリートがかなりハードなのだ。

《セラの天使》にまつわる2つのエピソード

そういえば、2019年には《セラの天使》について2つ程お話がある。

1つは皆も知っているかもしれないお話。

2019年の1月27日、
《Black Lotus》の原画が売り出されたという情報がネットを飛び交った。

少々調べてみたところ、
《Black Lotus》
《Mox Jet》
《Mox Emerald》
《Farmstead》

の4枚の原画が売られているようだった。

画像7

値段を調べてみたら、
《Black Lotus》$6,500,000 USD(約7億850万円)
《Mox Jet》$750,000 USD(約8175万円)
《Mox Emerald》$750,000 USD(約8175万円)
《Farmstead》$85,000 USD(約926万円)

(2019年1月27日の時点で1ドル=約109円)

なお、半年経った現時点で、
店主が知る限り、買い手が現れたという話は聞いていない。
そして、この売り手の人はこうも言っていた。

画像8

「Also, if someone has the original Serra Angel
or can direct me to its owner I'd happily pay
$250,000 or more for the art and
I'd pay $25,000 for anyone who makes the connectionfor me.
I'ts my favorite painting in Magic the Gathering!」

「《セラの天使/Serra Angel》の原画を$250,000(約2,725万円)以上で買いたい。
 この金額なら喜んで払う。
 誰か持っている人とのコネクションをつなげてくれたら、
 その人にもお礼として$25,000(約275万円)を払おう。(おそらく約定時)
 私はマジックの中で《セラの天使》の絵が一番好きだ!」


なんと《セラの天使》の原画が約3000万円!
コネクションをつなげてくれた時の手数料(10%)や、
$250,000以上で買いたいという言葉から、
低くみても3000万円の価値を《セラの天使》につけたという事だ。

先程の《Black Lotus》や《Mox Jet》は売り手がつけた金額だ。
《セラの天使》は買いたいと言っている人の言い値なので、
《セラの天使》の原画が約3000万円という数字は、
売り手(つまり店主)がOKを出したら即約定されるという事なので、
最低でも3000万円は適正と判断出来る。
とはいえ、《Farmstead》に約1000万円つけているのだから、
《セラの天使》もっと高いんじゃない?という気もする。

この《セラの天使》の原画はどれを指すのか。
1:店主所有の"SERRA ANGEL Ⅱ"
2:失われた"SERRA ANGEL Ⅰ"
3:最初に描かれたDouglas Shukerさんがボツにした"SERRA ANGEL ZERO"

多分1だ。
2と3にあまりにも現実味が無さ過ぎる。
つまり店主の持っているものに約3000万円の値がついたのだろう。
売るか?
と言われても売るつもりはないのだけれども。

ここでのお話としては、
《セラの天使》の原画に最低3000万の値がついた事も驚きだが、
《Black Lotus》の原画を持つ人が、
「私はマジックの中で《セラの天使》の絵が一番好きだ!」
と言っている事でもある。

《Black Lotus》の原画の所有者が言うのだから、
やはり《セラの天使》はマジックにとって特別なのだろう。
《セラの天使》の原画を持つ自分が言うのもなんだが、
「おまえ、《Black Lotus》の原画持ってんだから満足だろ?」
とツッコミたい気持ちもある。

だが、
「じゃあ、おまえ《Black Lotus》の原画欲しくない?
 欲しいだろ?
 でも、《セラの天使》の原画持ってんだから満足だろ?」
と言われたら、
「いや、満足してないよ。
 俺、《Time Walk》の原画も欲しいし。
 Guru Landの原画全部揃えたいし。」
と回答してしまいそうなので、
そんなツッコミは飲み込んでおくしかない。
これが1つ目のお話。

2つ目はほとんどの人が知らないお話。

この話は親しい人には話した事があったが、
こうして公で話すのは初めての話。

2019年の初頭にRebecca Guayさんから店主に連絡が来た事がある。

話を要約すると、
「あなたは私が描いた《セラの天使》を持っていますか?
 もし持っているのなら買い戻したい。
 私はあの絵を自分のアトリエに飾りたいと考えています。
 いくらなら売るという考えはありますか?」

とRebeccaさんが言ってきた。

店主は
「私には夢がある。
 それはカード博物館を作り、
 そこに貴方の絵を飾る事だ。
 そのため1億を積まれても売る事はしないと思う。」

と返信した。

Rebeccaさんからは
「私の絵をそれだけ愛してくれる人がいるなら、
 私は買い戻す事はしません。
 貴方のような理解者がその絵を持ってくれているなら安心です。
 ただ、もしもの時、
 誰かがその絵を買いたいと言ってきた時、
 その時に手放す事を考えるのなら、
 私に一報ください。」

と返信が来た。

ところでRebeccaさんはいくらで買い戻す気だったのだろう?
Rebecca版《セラの天使》はどのくらいの価値があるのかさっぱりわからない。
Rebeccaさんがこの話の時に数字を提示してくれたら、
最低でもこの数字だと言えたのだが。

こちらのお話では、
《セラの天使》を描いたRebeccaさん自身が買い戻したいというところから考えて、
イラストレーターの人からの視点で見ても、
《セラの天使》に特別な気持ちがあったのではないかという事。

特別な存在


やはりマジックにとって《セラの天使》は特別なのだろう。
これだけの人が愛してやまないカードなのだから。

これが店主だけが気に入って収集しているだけの存在だったら、
こんなふうにRebeccaさんから連絡が来たり、
《Black Lotus》の原画所有者が約3000万円を提示したりしないはずだ。

いかに上位互換のクリーチャーカードが出たとしても、
マジック30周年、50周年という時間になった時に、
《セラの天使》は色褪せる事の無い立ち位置を持つ登場人物のままでいてほしい。

ではまた。



【Magic:the Gathering専門店 Cardshop Serra】

【Cardshop Serra Twitter・質問箱】

【加藤英宝 Instagram】


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?