純粋なものと生きる証。
純粋なものに目を凝らしても、純粋なものは何も見えないから、誰にも何も気付かれずに、ただ、純粋なままでいる。
だからね、そんな存在もいいと思うけど、やっぱり私は少しくらい汚れていてくもっている方がいいと思うんだ。だって純粋であることは、ただの孤独でしかないもの。
冬の朝の窓ガラスのように、誰かが暖かな息を吹きつけて、そうして手のひらで大きく線を描くような、そんなやさしさが私には愛しい。
誰かがしてくれることで、純粋になれることのほうがいい。何かを与えられることで、素直になれることのほうがいい。孤独はそうして去ってゆく。憎しみはそうして、やさしいものに変わってゆく。
透明すぎるガラスだったなら、私はあなたに気づかなかった。たぶんあなたのガラスを割って、私もあなたも驚いて、ひどく怪我をしたのかも知れない。
くもりガラスのあなただからこそ、私はあなたを見つけられた。くもりガラスのあなただからこそ、私はあなたのことを覚えた。
私はこの手のひらで、そっと、あなたの心に触れてみた。そこだけ何度もきれいにしてみた。すると純粋なあなた自身が、もっとその奥にいた。ひとりで泣いていたけれど、膝を抱えて震えていたけど、とても美しいあなたがいた。
こんなあなたは私しか知らない。
私しか本当のあなたを知らない。
それは私のたしかなことだ。
守るべきものは、大切な誰かだけでいい。
純粋でないことを、僕らは何も恐れなくていい。
僕らが生きてる証はきっと、そんな場所にあるのだから。
最後まで読んで下さってありがとうございます。大切なあなたの時間を使って共有できたこのひとときを、心から感謝いたします。 青木詠一