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写真日記とその出会いと。

街で見かけた綺麗な花を、私がカメラで撮っていたとき、一人の美しい少女が家の庭に現れた。どうやらその花の持ち主のようだった。少女は少し驚いて、それでも小さなかわいい声で「こんにちは」とかすかに頬を染めながら、私に挨拶をした。思えばそれが初めての二人の小さな出会いだった。

・・・と、書きたかったのだけど、
現実は違っていた。

出会った相手はおっさんだ。しかも強面の。

しまった。空き地に咲いているのかと思ったら、そこはその男性の畑に咲いていた花だったようだ。どうしよう。いや、別に悪いことをしていたわけじゃないんだ。ただ、道沿いに咲いている花を撮っていただけだ。それでも何か勘違いをされたのかもしれない。

おっさんは、いや、その中年男性は、「こんにちは」と私に言うと無表情で私を見つめていた。そんな男性に私は笑顔で「こんにちは」と答えた。

小さな無言の空気が流れた。居心地の悪くなった私は、あわてて男性にこう尋ねた。「とてもきれいな花ですね。これはなんという花ですか?」すると男性はたちまち笑顔になって「フヨウという花ですよ」と明るく教えてくれた。

自分で育てた花を褒められるのは、やはり、うれしいことなんだろう。それから男性は、私にその花について、いろいろと教えてくれた。私は知らない人と話すのが、とても苦手なので、本当はその場から逃げたかったのだけど、しばらく話に付き合いながらも、もう何枚か写真を撮らせてもらった。

「あんたはどっから来たの?」と男性が尋ねてきた。「少し離れたところです」と私は答えた。どうも県外の観光客か何かと勘違いしたみたいだ。さすがに間が持たなかった私は「どうもお邪魔しました」とその場を立ち去ろうとすると「こっちの木もいいぞー!」と笑顔で勧めてきたので「それでは!」と言って走って逃げた。いや、立ち去った。やれやれ、変に気に入られたようだ。

写真を撮るときは、決して他人の迷惑にならないようにと心掛けているのだけど、道沿いに咲いていた花とはいえ、ちょっと反省。まぁ、喜んでもらえたからとりあえずよかった。

この頃、休日や、時間があるときは、徒歩で、あるいは車を走らせて、写真を撮りに私は出掛ける。それがすっかり日課になってしまった。私の愛機はキャノンのコンパクトデジタルカメラ。実は奥さんが4年前くらいに、子供の卒業式などのために買ったカメラで、正確には私のカメラじゃない。(でもわりと高性能だ)それまで私はカメラを持っていなかった。仕事の忙しさで、かつて趣味だった写真から、ずっと離れていたのだけど、noteクリエイターさんたちの美しい写真に、すっかり感化されてしまった。

本当は一眼レフのカメラが欲しいのだけど、このキャノンのコンパクトカメラは、十分に色が美しいし、私の好きな緑色がよく映える。それに手のひらに収まるこのサイズ感がとてもいい。たとえ私が一眼レフカメラを持ったとしても、それはまるで大掛かりな舞台装置を備えたコンサート会場で、下手な私が一人舞台で歌うのと同じで、たぶん、あまり意味がない。それよりも私は誰もいない原っぱで、一人、歌を口ずさむくらいが心地いい。

いつでもどこでも気軽に撮れる。今の私には、それがとても大切だ。

やれやれ、なんだか少し熱く語ってしまった。さて、この週末は3連休。今日もどこかで美しい風景が広がっている。そしてそこには出会いもある。それはなんて素晴らしいことだろう。ワクワクがきっと止まらない。

さぁ、カメラを持って素敵な休日を楽しもう。

最後まで読んで下さってありがとうございます。大切なあなたの時間を使って共有できたこのひとときを、心から感謝いたします。 青木詠一