見出し画像

一等とかわいい笑顔のお客様。

その日はとても忙しく、店のレジも込んでいて、私はレジの応援に入っていた。レジで待たされることほど嫌なものはない。人員が足りておらず、心から申し訳なく思うが、なかなかうまくいかない。

そんなとき、ちっちゃな男の子が駄菓子を持ってきた。(もちろん、母親もいて。)

そのお菓子だけレジを先に通して、私が店のシールを貼ってあげたら「どうもありがとうございますぅー!」ってとても元気な声を出したので体が1センチ動くくらいビックリした。

実はそのとき、その少し前に、レジで小さなトラブルがあって(とても忙しくて、レジも長蛇の列で、マシンガンのようにレジを操作するおばちゃんも、一度、タイミングがずれると何がなんだかわからなくなって・・・みたいな状態になって。)レジのおばちゃんがお詫びをして、私もお詫びして、そして次のお客さんが、この小さな元気のいい男の子。

ほっぺにバンソウコウを貼っている。
やんちゃな笑顔がにくめない。

とっても不思議。

それだけで、人の心って救われるんだから。だって、もう笑顔になってるんだもの。イラついてたレジのおばちゃんも、レジで待ってるお客さんたちも。

そんな優しい光景に、なんとなく、私は思った。

何かにせかされ、忙しそうにしてる私たち大人の、なんと、なんと小さなことか。急がなくてもいいように、早い乗り物を大人は作り、いつでも連絡が取れるようにと、携帯電話なるものをつくり、いつでも調べられるようにと、インターネットの環境を整え、これ以上、どんな便利があるんだ?ってくらい便利になっても、結局いつも、みんな急いでる。イラついてる。

進歩しても進歩しないのは、
どうやら私たち大人だけみたい。

何をやっているんだろう?
何が忙しいのだろう?

そしていつも、何を急いでいるのだろう。

どんなに急いでも人生には、必ず信号機のようなものが存在している。長い目で見れば、みんな誰も、あんまり変わらない。

人々に勇気を与えるような一等。それはとても素晴らしいことだ。でも、心を失くしたような一等は、それはまた、違ってくる。それで一等になったからと言っても、言い換えればそれは、誰かを置き去りにしたと言うこと。そしてそこには、一人しかいないと言うこと。空を見上げれば誰にも同じ、美しい空が広がっている。それを美しいと思う心があれば、誰かと寄り添い歩けるのだと思う。

・・・なんて、心がとても素直になった。

あのね、こんな大人だけど、
それでもいつも、急いでしまう僕らだけど、
心から、ありがとう。

せめて君だけは、そのままに。
かわいい笑顔の小さなお客様。

最後まで読んで下さってありがとうございます。大切なあなたの時間を使って共有できたこのひとときを、心から感謝いたします。 青木詠一