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プロが教える、ゲーム企画書の作り方【就活/会社】

 薄暗いバーの片隅で、男がショットグラスの液体を傾けている。

「ふうん、お前さん、見ない顔だね。ああ、大丈夫。わかっているさ。お前さんも言われたクチだろう……企画書を書けってな。この時期なら多分、就活ってトコか? あるいは──いや、いい。

 お前さんみたいのを見ていると思い出すのさ。八年前、企画書の作り方を求めて三日三晩電子の海を彷徨ったヤツのことをね。だが、その作り方は……どこにも載ってなかった。ゲームを作る秘伝ってモノは、誰も語りたがらないんだ。(グラスの液体を飲み干す)

 おっと、昔話は聞きたくないって顔だな。まあ、いい。要するに、オレの仕事はこうして、迷い込んできたお前さんみたいなのに、オレの死に物狂いの人生の一辺を伝えることなのさ。酒の一杯と引き換えにね。
 さあ、本題に入ろう」

(茶番終わり)

記事の内容について

ゲームの企画書の作り方/TIPSを説明します。
ゲーム以外の企画書にも応用可能です。
テンプレートとサンプル×3を頒布・解説します。(有料部分)
企画を魅力的にするための三つの魔法を紹介します。(有料部分)
希望する方には企画書のレビューを行います。(追加料金)

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↑企画書サンプル

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まず、企画書を作る前に。

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◆ ゲームの面白さは伝わらない。

 まず、大前提としてアナタの脳内にあるゲームは面白い。完膚なきまでに面白い。実現したら百万本セール、大ヒット間違いなし。それは良いとしましょう。

 じゃあ、その魅力をA4一枚で余すことなく表してください。
 できますか?

 無理です。天才的な企画書マンならできるかもしれませんが、大抵は無理です。天才的な企画書マンになる努力をするなら天才的なゲームデザイナーになる努力をすべきなので、つまりは無理です

 ゲームの面白さは企画書一枚では殆ど伝わりません。まずそれを理解しましょう。
 その上で我々は、極限まで贅肉を削ぎ落とした「面白さ」の原石をペラ一枚に詰め込み、「これでなんとか理解して頂けますでしょうか」と相手に差し出すわけです。
 なので、どんなに面白いゲエムがアナタの頭の中にあっても、それを相手に伝えるというのは全く違った技術であり、かつその労を惜しんではならないのです。たとえアナタの企画書が「つまらない」と一蹴されてもそれは高確率で企画ではなく企画書がダメなのです。

◆ 想像を掻き立てよ

 A4一枚に一体どれほどの文字を書けるでしょうか?
 みっちり文字だけを書けばショート・ショートの小説くらいはいけるかもしれませんが、文字で埋まった企画書を読む人はまずいません。アートや、レイアウトを考えると、ほんの一言や二言しか書けないと思ったほうが良いでしょう。

 なので、企画書は「いかに読み手の想像を掻き立てるか」が大事です。

 幸い、読み手は少なくとも生まれてこの方ゲームをやったことがない、なんて人ではないハズですので、「2Dアクション」と書けば「ステージがあって、敵がいて、アイテムが落ちてて、ボスを倒して、面をクリアしていくんだろうな」と分かってくれます。「ロボットを作って大会に出る」と書けば、「ああ、大会に出て賞金を手にして、ロボットのパーツを手に入れるんだな」とまで推測してくれるかもしれません。

 文字やアート、そして記号の全ては「読み手の想像を掻き立てる」ために使いましょう。1枚のペラからそれ以上の内容を引き出してこそ、魅力的な企画書と言えるのです。

◆ 要素の積み重ねよりワンアイデア

 ただのRPGならず、モンスター育成要素もあるし、カジノもある。ギルドもあるし、家作りもできる。要素盛り盛りのAAAゲームは確かに楽しいものですし、ユーザ側も漏れなく相当のボリュームを望んでいます。

 が、企画段階においてそれらはただの贅肉です。

 要素の積み重ねという肉付け部分は、真に骨太いコアの部分がしっかり出来てこそ活きてきます。なので、企画書ではまずワンアイデア。誰もが唸るアイデアを叩き付け、肉付け部分は相手に想像させてしまいましょう。どうしても書きたいなら想像を誘発する一言を付け加えておけばOK。ぶよぶよと太った企画書ではなく、スタイリッシュなものを目指しましょう。

◆ 見た人を楽しませる

 これはゲームの企画書なのですから、いかに洗練とされていて良くできた内容の企画書でも、パッと見の印象が良くなければ、読み手は魅力を感じづらくなります。

 見た人を楽しませることを意識しましょう。モノクロよりはカラー。文字の羅列よりはイラストと矢印。
 ゲーム画面のサンプルが添えてあってもワクワクします。

 もう少しデザインの心がある人は、例えば中世を舞台としたゲームだったら羊皮紙風にしたり、スチームパンクだったらフレームを錆びたパイプで作ってみたり、そういった演出も喜ばれます。それでいて企画書には「~~の世界観です」とわざわざ書かなかったら高等テクニック。ただし、あまり凝ったことをすると逆に見難くなってしまうので、注意して下さい。

◆どうしても企画書にしにくい企画はある

 どうしても企画書にすると面白さの伝わりにくいゲームはあります。これは、素直に諦めましょう。就職活動の企画書はいわば人生を決める一枚ですから、伝わりやすい企画を選ぶべきです。

 例えば、マインクラフトをやったことがない人にマインクラフトの面白さを伝えるのは至難の技です。
 ひぐらしの鳴く頃に、のようなストーリーや世界観に魅力があるものも難しいですね。ポケモンGOはどうでしょうか。各地でポケモンを捕まえられる、は少し魅力的な響きはありますが、その後の爆発的な流行を企画書から読み取ることは困難でしょう。

 企画書にしやすい企画とは、読み手が想像しやすい企画です。実際に触ったときの面白さは全く別の所にありますし、企画書を作らず試作から積み上げたようなゲームは、多くが企画書向けではありません。(まあ、宣伝する時にまたゲームはペラ1まで圧縮されるので、そういう意味では企画にしやすいゲーム=宣伝しやすいゲーム→売れやすいというのはあながち間違いではないかもしれませんが……)

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 なんとなく、企画書というものがどんなモノか分かってきましたか?
 それでは早速、書いてみましょう。

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