見出し画像

自分らしい生き方のつくり方 ~新しい働き方LABに託す想い~

帰国子女で、高校受験で慶應に入って、新卒でマッキンゼーに入社した私は、自分ではそのつもりはなかったけれど、社会に敷かれた人生を歩んでいたんだなと思います。親は私にいろいろと選ばせてくれたので言いなりになっていたというわけではまったくないけれど、私は結局は目の前に見えている選択肢の中から選んでいるだけで、自らの手で選択肢を生み出すということはしていませんでした。
このnoteは、そんな私が「自分らしい生き方」のためにランサーズで「新しい働き方LAB」を立ち上げて、働きながら世界一周とかに挑戦したりして、それでもそのあとに「自分らしさ」とは何かと悩みに悩んできた数年間の話をまとめたものです。

2024年4月、新しい働き方LABが5周年を迎えます。
このタイミングで、私は所長という立場を退き、新しい運営チームにバトンを引き継ぐことになりました。
そこで、久しぶりにnoteを書くことにしました。第一章である本記事では、新しい働き方LABが生まれた理由と大切にしてきた想い、そして第二章では、大好きだったこの仕事から身を引く決断に至るまでの葛藤と学びをまとめています。

はじまりは、生き生きとした大人が増えないといけない、という想い

もともとは「教育」に携わる仕事がしたい、と思っていた社会人3年目の私は、その道を追及するためにスタンフォード大学に留学をしました。でも、そこでの様々な活動を経て、子供たちの目はキラキラしているのに、その親であり先生でありロールモデルであるはずの大人たちの目が輝いていないのではないか…?ということに気づきました。私は、教育よりもまずは、大人が生き生きとするための活動をしたいと思うようになりました。(この時の気づきについてはこちらのnoteにも詳しく書いています)

そんな時に、たまたまのご縁で出会ったのが「誰もが自分らしく働ける社会をつくる」というビジョン(※)を掲げたランサーズでした(※2018年時点)。
ランサーズで働くフリーランスのような「新しい働き方」をもっと当たり前にすることで、より生き生きと働ける人を増やせるのでは!とビビッときたわけです。
ランサーズは、仕事を発注したい人とそれを担える働き手とをマッチングするオンラインサービス。働き手である「ランサーさん」の抱える課題として、1人で仕事をしているためスキルアップの機会がない、というものがありました。そこに対する課題解決ができないか…というところに私が入社し、新規事業として立ち上げようということになりました。

当初は「ランサーズ大学」という教育サービスの案からスタート。
でも、まずはユーザーの声を聞くところからはじめてみた結果、「そもそも何かを学ぼうという発想がない人が大多数」だということが見えてきました。何かは学ぶべきなんだろうけれどどうしたら良いのだろう、と、つまり「教育サービス」にたどり着く手前にいる人たちがほとんど。解くべき問いはむしろ、「どうすればもっと学びたいと思えるようになるのか?」というものでした。そしてたどり着いたのがフリーランス共創型のコミュニティと、「つながり、気づき、学び」というコンセプト、そして「気づきのキッカケを提供する」というビジョンでした。周りに色んな働き方をしている仲間がいれば、それが刺激や気づきやモチベーションを生み、結果としてお互いの成長を促しあえる、という仮説をたてたわけです。

そして生まれた、新しい働き方LAB

北海道から沖縄(+海外)まで、全国各地を代表するフリーランスのコミュニティマネージャーを任命し、彼らを中心としてつながりや学びの場を提供するコミュニティとして、2019年4月に産声をあげました。
コロナ以降は活動の中心がオンラインに移っていきましたが、「新しい働き方」を実現している人としたい人たちが様々な形でつながって、新しい挑戦をするための場であるという点は変わっていません。
これまでに延べ2.8万名以上の方々にご参加いただき、364回以上のイベント等が開催されるようになりました。また、アドビ、グラミン銀行、ベネッセ(Udemy)、レノボ、KDDI、日本HPなどの企業や、多数の地方自治体や教育機関との協業もつうじて、様々な角度からの「学び」や「気づきのキッカケ」を提供してきました(敬称略)。

どうしたら生き生きとした大人を増やせるのか

活動が広がっていくにつれて、「一体どうしたら生き生きとした大人を増やせるのか」という問いに対する答えが少しずつクリアになっていきました。「自分らしい生き方のつくりかた」的なものともいえるのかもしれません。とはいえ、まだまだ研究途中。これが完全版とは思っていないのですが、現時点の答えとして、ここでご紹介したいと思います。

1)自分の人生の運転席に座るという発想

これは私がスタンフォードでハッとさせられたことの一つなのですが、自分の人生の運転席に座っていますか?自分でしっかりハンドルを握って、どの道を進むのか決断をしていますか?という発想。それは決してすべてを自分一人で決めないといけないというわけではなくて、誰かに相談しながらでも、誰かに委ねるというのも、その判断を自分でしたのであれば良いと思います。でも、無意識に、何も考えずにただただ誰かの運転する車の上で日々を過ごしているのは、もったいない。まずはその意識が重要なのかなと思います。

2)行動を促す「実験」というマジックワード

「行動しよう」とよく言いますが、そうはいっても、行動するのってめちゃくちゃ難しい。うまくいく自信もないし、時間もお金もないし、そもそも何から始めたらよいかわからないし。だからその手前で止まってしまっている人が多いんだと思います。
でも、自分らしい生き方をしている人たちは、やっぱり何かしら行動できている人たちだなと思います。「会社辞めたいな」とぼんやり思っているのではなく、まずは副業から始めてみる。「今の環境よくないな」となんとなくもやもやしているのではなく、まずは移住体験をしてみる。自分らしさというのは最初から答えがでているわけではなくって、そういう行動の積み重ねを通して形作っていくのものなのではないかなと思います。

だから、なかなか一歩踏み出せないという方におすすめしたいのが「実験」というキーワード。新しい働き方LABでは、「働き方を実験する研究員制度」というものを2021年に始めました。そこでは、やってみたいけれどまだやれていないようなことを、「実験」として半年間限定でとりあえずやってみよう!というプログラムです。毎年200名ほどの研究員が選別され、「試しにプログラミングを勉強してみていくら稼げるようになるか実験してみる」とか「日本全国を旅しながら働くと生産性がどう変わるか実験してみる」といったような多種多様な「働き方実験」が行われました。

「実験」だから、うまくいってもいかなくても良いんです。ちゃんとしていなくても、できる範囲でやってみれば良いんです。その言葉が魔法のように、それまで動けていなかった人たちの行動を促していきました。
この「実験思考」については、こちらのnoteで詳しく書いています。

3)いろんな生き方や働き方を知るための、いろんな人との出会い

親も、友達の親も、そして自分自身も会社員だった私は、ランサーズに出会ったときにはじめて「フリーランス」という生きざまに触れて、ものすごい(良い意味での)カルチャーショックを受けました。
見たことも聞いたこともない働き方を選ぶのって、相当難しいことだと思います。そして限られた知識のなかで「自分らしさ」を見出すのも、難しいと思うんです。だからこそ、たくさんの生き方や働き方をまずは知って、そこから自分の選びたい道を見つけられると良いですよね。
ただ、選択肢を広げれば広げるだけよいとは限らないとも思います。余計に悩みを増やしてしまう危険性もあるから。生まれた時から「あなたは医者になりなさい」といわれ続けた人は、ほかに生きたい道を見つけてしまうよりは、医者という道に向かってひたむきに頑張っていたほうが悩みは少ないかもしれません。
それでも私は、やっぱり、色んな生き方を知る価値のほうが高いと考えています。そしてそのうえで、自分が行きたい道を考えて、選んで、行動できたほうが幸せにつながると信じています。その途中で色んな苦労があったとしても。
だから新しい働き方LABでは、「つながり」を大切に、本当に多様なコミュニティをつくってきました。

4)What matters most to you and why?

これは、スタンフォード大学MBAの入試エッセイのお題です。このお題の秀逸さについては散々過去noteに書いています(し、私の当時のエッセイの内容まで公開しています)が、やっぱり、迷ったときはまずこの問いについて考えてみることをおすすめします。
自分らしさって、働き方の話だけではありません。人によっては趣味が一番だったり、家族が一番だったり、お金が一番だったりします。正解不正解というのはなくて、でも、この問いに対する答えが分かっている人のほうが、「自分らしい生き方」を実現しやすいと思います。あ、でも、正確に言うと、最初から分かっているわけではなくとも、いろいろと行動をしていった結果として答えられるようになっていく、というほうが近いかもしれません。
しかも、第二章でも述べますが、この問いに対する答えは変わって良いんです。むしろ、人生ステージが変わっていくごとに、たびたびこの問いに戻っていくことが大事だなと思います。

そんな想いで立ち上がったLABが生んできたもの

そんな思想が根底にある新しい働き方LABは、この5年間で、本当にたくさんの人にかかわっていただきました。
設立当初は「あたらぼのおかげで人生が変わりました」という声をこんなにも聞くことになるとは思っていませんでした。専業主婦がメタバースクリエイターになっちゃう、みたいなドラマチックな変貌を遂げる方もいれば、何事も前向きに行動できるようになって自分のことが好きになりました、というような方まで、そのビフォーアフターも多種多様です。(本当は、こういう成果をもっとちゃんとまとめてアピールしたかった…やりきれなかったことの一つです)
コミュニティマネージャーを中心に紡いできたつながり、気づき、学びが、少しずつ、でも確実に、「自分らしく生きる大人たち」を増やしてこれたことに、感謝と感動の気持ちでいっぱいです。

新しい働き方LABのこれから

冒頭でお伝えしたとおり、私はこの度所長という立場から退きます。でも、上に書いたような思い、思想、考え方は何一つ揺らいでいないし、むしろ自分の中でどんどん強くなっているように思います。(それなのになぜ退くことにしたのか?については第二章でお話ししたいと思います)
これからの新しい働き方LABは、新しいメンバーが担います。これまでコミュニティを支えてきたコミュニティマネージャーの滝沢紘子さん(通称もんちゃん)が新所長に手を挙げてくれました。そして彼女を全力でサポートしたいという気持ちをもったほか数名のコミュニティマネージャーと、このコミュニティを愛してくれているランサーズ社員という、強固な運営チームを構成することができました。
先日、このメンバーによる「活動報告会」が行われました。そこで私が目にしたのは、新しい働き方LABをより皆さんにとってワクワクできる場所にするためにすでに全力で走り出している仲間の姿でした。軽やかに組織をアップデートし、コミュニティを一気に進化させようという強い意志を感じました。もはやそこで私が「ありがたい」とか「安心した」というのはおこがましいくらい、オーナーシップをもって進めてくれています。そんな彼らを私は心から尊敬、そして信頼をしています。

このコミュニティで当初から大切にしてきた価値観として、

  • 「共創」=ランサーズ社(だけ)がやりたいことをやるのではなくコミュニティメンバーの皆さんとともに作る場であるということ

  • 「生き物」=コミュニティは生き物のように常に変化し成長していくものであるということ

というものがありました。今回の体制変更は、まさにこの価値観を体現しているものなのではないかと感じています。

これからは、上に記したような根底思想を大切にしつつ、でもそれに囚われすぎることなく、新メンバーがつくりたい世界を自由に目指していくことになると思います。私は、そんな新・新しい働き方LABが楽しみでなりません。そして、ぜひ皆様にもその仲間としてコミュニティを盛り上げていただけるとうれしいです。


次の記事では、なぜ所長を降りる決断をしたのか、私にとっての「自分らしさ」とは何かを考えに考えた過程についてお話をしています。もしよかったらそちらも併せてご覧ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?