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人生には季節がある ~自分らしさのために、自分らしさから離れることにした理由~

昨年、昔からの友人と話していたら「瑛子は自分の好きな仕事をしてて羨ましいと思ってるよ」といわれました。そうなんです。私は、ランサーズでの仕事は「仕事」と思わないほど大好きで、やりがいを感じていました。
それでも、そんなに好きだった仕事を、辞めることにしました。
ずっと「自分らしい生き方」をテーマにしてきた私がこの決断をするには1年半以上葛藤していました。でも、ある日ふと、「あ、今自分らしく働けてないな」という言葉が頭をよぎったのです。その瞬間、自分の中で答えは見えていました。

前回の記事では、新しい働き方LABを立ち上げた背景と、そこで見えてきた「自分らしい生き方」のつくりかたについてお話しました。そこで本記事では、私自身が「自分らしさ」について悩み、結果として所長をやめるに至るまでに考えたことや学んだことをまとめてみました。

自分らしく生きるって、なんだろう。

自分らしさって、別に「好きな仕事をすること」とは同義ではないと思っています。会社員であれフリーランスであれ無職であれ、得意なことであれ好きなことであれそうでないことであれ、働く目的が何であれ、自分にとって大事なことを踏まえて自分で選択しているのであれば、それは「自分らしさ」なんだと思います。だから、人によって正解不正解はまったくない。
だけど、こと私自身については、スタンフォードを卒業してランサーズに転職したころから、自分は、自分が一番熱くなれる・一番想いが強い「パッション」を軸に生きていくタイプの人間なのだろうとずっと思っていました。

そんな時に訪れた「出産」というきっかけで、すべてが覆る

2021年4月に第一子が誕生し、その一年後には職場に復帰。いわゆる「仕事と育児の両立」をする中で、あれ、なんか、きついぞ、と。子どもと共に倒れるように眠りにつく毎日。繰り返される体調不良。仕事でやり残してることと、子どものためにやりたいことと、限られ過ぎている時間との戦い。そして、認めたくないけど、今までほど仕事にコミットできていない自分、パフォーマンスが落ちてる自分、前よりも楽しめていない自分がいて、嫌気がさす。
自分のこれまでにつくってきた価値観がものすごい揺らいでいることに動揺して、どうしたらよいのか分からないまま日々が過ぎていきました。
加えて、それまでは良くも悪くも「自分」と「今」に全力集中できていたのに、子どもができた瞬間に、「家族」と「未来」の重みが一気に膨れ上がる。自分はこの仕事でよくても、家族は良いんだっけ。子どもをどんな環境で育てたいかを考えたときに、今のままで良いんだっけ。そんな疑問が次々に現実の課題として降りかかってくる。今までは見過ごせた夫婦間のズレも、顕著かつ明確な溝として浮かび上がってくる。
それでも、それこそわが子のように大切に育ててきた新しい働き方LABを離れるというのは想像できなかった。でも、ある日ふと、「あ、今自分らしく働けてないな」と思ってしまったのです。その言葉が頭をよぎった瞬間、自分の中で答えは見えていました。

結局は、この問いに戻ってくる。What matters most to you?

一年半は葛藤し続けていたでしょうか。
家族として作りたい未来を考えたときに、私がこのままランサーズに居続けることは最適解ではないという結論にたどり着きました。
これをこうして文章にするだけで、ちょっと胸が痛みます。それだけ、これを認めるのは辛かったです。なぜなら、「自分らしく生きる」ということを誰よりも推進しようとしてきた自分が、これまでの活動を否定するような決断に思えたから。結局は現実的には自分らしく生きるなんて無理じゃん、と自分で証明してしまったような、失敗作のような気がしたから。
でも、違ったんです。

「あとは任せてよ」

悩みすぎてどうしたらよいか分からなくなっていた私は、素直に自分の状況をコミュニティマネージャーたちに相談しました。すると「それでいいんだよ」という言葉をかけてくれました。「今のいっちーの状況のなかで、一番やりたいと思うことをやればいいんだよ」と。そして、「あとは私たちに任せてよ」という言葉も添えて。
この言葉で、私は、二つのことにハッとしました。

一つは、もうこのコミュニティには、私がいなくとも頼れるリーダーたちがたくさんいるんだということ。私が先頭に立たなくとも、このコミュニティをもっと成長させたい!とオーナーシップをもってくれている仲間たちが。むしろ、私がずっと所長を続けるよりも、この仲間たちにバトンを渡したほうがより良い場ができるかもしれない、そう感じました。

そして二つめは、自分が所長を降りることは決して私らしさを捨てる行為ではなく、むしろそれを追及する行為なのだということ。子どもができ、新しい人生ステージに入った今の自分にとっての「自分らしさ」は、数年前とはまったく違うものに変わってしかるべきだったのです。
2023年10月には第二子が誕生し、今の自分に大切なものは「家族」と「家族と作る未来」であるという意識がさらに強くなりました。そして、そのために、今年の4月から新たな仕事に就く決断をしました。今回は、自分の「パッション」を軸にした選択ではなく、海外転勤の可能性・自身のスキルアップ・福利厚生や経済面の充実・ワークライフバランスなどを総合的に考えた結果の選択です。

人生には季節がある、ということ。

ある日たまたまSNSでこの言葉を目にしたときに、もやもやしていたものがスッと消えていくような感覚になりました。
人生には季節があるんだ。常に春のように希望に満ちていたり、夏のように太陽が照っていたりするわけではなく、梅雨もあれば冬もある。かならず季節は巡ってくる。
前までは、「自分らしさ」というのはブレない軸であり、それが変化することをイメージできていませんでした。でも、人生には季節があるのだから、その季節ごとに「自分らしさ」が意味するものは変わって良い。

この2年間の「冬」のことを自分の中で整理して、言語化して、乗り越えるのには、一年半以上の月日が経ってしまいました。正直まだ、明確な地図の上を歩けている感覚はありません。
でも、意識しているのは、昔とある教授からいただいた「正しい選択肢というものは存在しない。選んだものが正解になるように努力すればいいだけだ」という教え。
今の自分にとって何が一番大切なのかをひたすらに問い続けて、自ら選んだ道なのだから、これが一番自分らしい道のはず。教授の教えのとおり、胸を張って前向きに努力していきたいと思います。きっと次の季節が「春」だと信じて。


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