記憶
捏造されていない記憶を探るのは
捏造されているであろう僕の頭だ
あの娘はあんな言葉を言っていただろうか
視界の端で風に揺れていたシャツの色
そもそもシャツだったろうか
そもそも風など吹いていたろうか
そもそもあの娘なんていただろうか
辿る記憶の末端は常に揺らいで
過去に首を絞められるのは行き過ぎの追慕だ
そうやって割り切れない不確かさが
しかし確かに何処かに根を張って
無自覚の紗幕に都合の良い色彩と脚本で
投影される記憶とやらは
捏造されていようがいまいがそれが今に真実だ
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