糸卜たえ

糸卜(いとうら)たえと言います。 いととたえではないです。 主に小説や、音楽レビューを…

糸卜たえ

糸卜(いとうら)たえと言います。 いととたえではないです。 主に小説や、音楽レビューを書いています。 最近ロキソニンにハマってます。

マガジン

  • 頼んだぞ、沢村。

    私は高校に通っている。進学を目指している。沢村くんも同じだ。彼はいつも数学を勉強している。そんなある日、突然始まったデスゲームに、私の高校生活は一変した。

  • いろいろな音楽の感想文

    聴いた音楽について思ったことを書きます。 大抵は歌詞について書きます。

  • ぎこちなき哉、人生!

    恋愛回想小説。 僕は中学校で初恋を経験する。 好きな人にどう接していいかわからなかった僕は、霧の中を進むように彼女に近づこうとした。

最近の記事

頼んだぞ、沢村。 #2

では、みなさん。教室に残ったのは12名といったところでしょうか。男子は、沢村、朝長、松尾、成沢、荒柳、の5名。女子は、皆川、高松、大久保、佐々木、日村、ブレナン、の6名。 黒板には音もなく再び文字が羅列され始める。 私はそれを見ている。教室に残った、人数が三分の一以下になってしまった同胞たちとともに。 「朝長くん、やっぱり、これは……現実?」 朝長くんは歯をくいしばる。 「わからない……。ただ言えることは、俺たちはこの黒板に出てくる文字に従うのが、今は懸命らしいって

    • 頼んだぞ、沢村。 #1

      ガラガラ。 教室に入ると今日も沢村くんは勉強している。 なにやら数学Ⅲというのをやっているらしい。 この高校から進学なんて、よく思いついたものだというくらい、私たちの高校は偏差値が低い。 だから進学を目指すのは、三年四組には沢村くんと私しかいない。 私は文系だから、正直言って沢村くんが毎日何をやっているのかさっぱりわからない。 「おい、沢村ぁ、パン買ってこいよ」 あーあ、また野田くんだ。 また渋々買いに行くんだろうな、と思った。 しかし、今日は訳が違った。

      • ぼくりりの曲を聴いてきて思ったこと。

        ぼくのりりっくのぼうよみ (ぼくりり) というアーティストがいた。 その人の音楽を聴いて思ったことを書こうと思う。 ただし書き方は、私の書きやすいように回想形式にする。そうでないと私の文章力では伝える自信がない。 私が初めて聴いたのは主観と客観をテーマにした曲だった。 そのMVのなかで主人公は自分の主観を刺し殺す。 それをぼくりりは他人事のように眺めている。 ぼくりりはひとまずこの世界を見ていた。 ぼくりりは、様々な曲を作りながら何を考えていたのだろうか。たぶ

        • ぎこちなき哉、人生! #4 《ブックカバーと紐について》

          僕はよくSさんに、あの本読んだ? と話しかけた。 Sさんは読んでいないことの方が多かった。それは始め、僕と彼女の趣味が違っていたからだった。 当時、僕は純文学やファンタジー、恋愛ものを好み、彼女はミステリーやホラーを好んだ。 ある時僕は「ノルウェイの森」を彼女に薦めた。そして、かいつまんであらすじを説明した。 「ノルウェイの森」は、ある日突然恋人を失った直子と、その旧友ワタナベによる恋のお話だと。そして、僕はその本から生死観を学んだと。 「それ、何ページくらい?」

        頼んだぞ、沢村。 #2

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        • 頼んだぞ、沢村。
          2本
        • いろいろな音楽の感想文
          1本
        • ぎこちなき哉、人生!
          4本

        記事

          ぎこちなき哉、人生! #3 《Sさんとピアノについて》

          僕の初恋の人はSさんだ。 彼女はピアノが上手かった。最近は彼女のピアノを聞いていないけど、今もたぶんそうだ。 告白する一年と半年前の話だ 秋には合唱コンクールが開かれる。担任のT君(君で呼ぶのは生徒間での慣習だった)は優勝を狙っていた。 そんなT君の熱意が伝わり、僕たちのうち8割くらいは闘志燃えていた。 僕やSさんもそうだった。 僕たち二年二組は、ほとんどのクラスと同じように混声四部合唱だった。僕はテノール、Sさんはアルトだった。 クラスには、それぞれ、指揮者と

          ぎこちなき哉、人生! #3 《Sさんとピアノについて》

          ぎこちなき哉、人生! #2 《班ノートについて》

          中学一年生の時、僕は交換日記というものに出会った。 それはとても楽しいものだった。 必ず返事が返ってくるし、自分の好きな言葉で好きなことを書いて、次の人に回す。 そして、みんながそれを読む。 僕たちは交換日記を五人で回しあった。 日記のタイトルは○○班ノート。 実を言うと、これはクラスのみんなが班ごとに必ず作るもので、いわばクラス活動みたいなものだった。 筆不精なクラスメイトたちはこのシステムをひどく嫌っていた。 でももちろん、僕のように班ノートを愛する人もい

          ぎこちなき哉、人生! #2 《班ノートについて》

          ぎこちなき哉、人生! #1 《初恋について》

          ぬかるんだグラウンド。 僕は中学校を卒業した。昔の話だ。 いろいろなことがあった。わがままな自分がいた。 好きな人に告白した話をしよう。 僕には好きな人がいた。初めて人を好きになることを学んだ。だから彼女は僕の師だ。何と呼ぼうと自由だろう。僕は彼女を師と呼ぼう。 彼女は優しい香りがした。決して世界で一番いい香りというわけではなかった。僕はその香りをおばあちゃんの匂いと言った。 「○○さんっておばあちゃんの匂いがするね」 「え? なに?」 彼女は表情を曇らせる。

          ぎこちなき哉、人生! #1 《初恋について》