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心電図検定対策講座【問題1】

対策問題001 (出題: 2024/3/4)

61歳,女性。高コレステロール血症に対する投薬を自己中断中(3年間通院歴なし)。めまいを主訴に救急受診した際の心電図を示す。

【図1-1】61歳,女性の心電図【対策講座001】

【問題1-1】心拍数の概算値として最も適切なものはどれか。

(a) 43/分
(b) 56/分
(c) 63/分
(d) 75/分
(e) 84/分


【問題1-2】上に示した適切な心電図診断(所見)はどれか。

(a) 下位心房調律
(b) 異常Q波
(c) 反時計方向回転
(d) 低電位
(e) 正常範囲


~ぜひとも応援よろしくお願いいたします~

解答・解説の公開は3/6(水)予定です。お楽しみに!

えかげますたぁ|Dr.ヒロによる
『心電図検定対策講座』
記念すべき1問目です。まずは,問題のような“殺風景”な心電図ではなく,通常われわれが目にするフォームに近い形の心電図を示しておきましょう。今回は心電図の基本的な内容を問う問題にしました。

【図1-1+】61歳,女性の心電図【対策講座001】再掲

【解答1-1】 (c) 63/分

皆さんは心拍数をどうやって求めていますか?

「300の法則」ですか?あるいはその変法ですか?ボクはこの法則をアレンジしたやり方(近似法)として「はさみうち等分足し引き法」というケッタイな名前のオリジナル手法を拙著などでは紹介しています。
・・・ただ,毎回ここまで細かく(正確に)心拍数を求める必要性は低く,概算値がわかればOKです。このような場合,次の2択がオススメです。

 1)カンニング法:自動計測値を参照
 2)検脈法/新・検脈法

1)は省略して,今回は2)だけ少しご紹介。
日本では次のようなA4サイズに6行・2列が標準的ですよね。加えて標準的な紙送り速度が25mm/sならば,左半分の肢誘導も右半分の胸部誘導も各々5秒間ずつ記録されることになります。
心拍数は1分(60秒)間の心収縮回数(bpm=/分)ですから,どちらかの誘導だけ(5秒間)でQRS波の個数を数えて12倍すれば良いですよね。いわゆる“検脈”と同じ考え方なので,これを「検脈法」と呼ぶわけです。

R-R間隔の不整などが強い場合に左右両方(10秒間)で数えた方が正確性は高まります。今回のようにR-R間隔:整(レギュラー)の場合は,5秒でも構いません。しょせん概算値と割り切りましょう。

【図1-2】検脈法のカラクリはこれ!

今回の心電図に戻ると,
 肢誘導=5個  胸部誘導=6個
のQRS波があるので,心拍数は60~72/分くらいと考えられ,したがって(c) 63/分が正解となります。

自動計測値も「65/分」となっていますね。良い線だと思います。

なお,個人的には「QRS+T」で1心拍(ビート)と考えるのが好きで,胸部誘導の最後はT波が途中で切れてしまっており,これを“0.5拍”とカウントするのが「新・検脈法」になります。この手法なら胸部誘導から求まる心拍数は「5.5✕12=66/分」となりますよね。選択肢は,左右10秒間で「10.5拍」とカウントした数値(✕6)を採用してみました。


【参考文献】

・杉山裕章.心電図のはじめかた.中外医学社,2017.
 ◇Amazon:https://bit.ly/3r6fPeI
 ◇楽天ブックス:https://bit.ly/3OaeSeJ
 ◇Yahoo!ショッピング:https://bit.ly/449aJwR
→第9章(心拍数計算は検脈みたいなもの〜一番カンタンな計算法を伝授〜)参照
・杉山裕章.心電図の読み“型"教えます! Season 1.中外医学社,2019.
 ◇Amazon:https://bit.ly/3pAu0Z7
 ◇楽天ブックス:https://bit.ly/3CY3JqD
 ◇Yahoo!ショッピング:https://bit.ly/44clQ8l
→Ch.3(心拍数を求めよう),Ch.7(心房細動の“心拍数”,どう議論する?)参照

【解答1-2】 (e) 正常範囲

2問目はX/Twitterで公開してみました。まずは気になるアンケート結果から示します(62名の方,ありがとうございました!)。

解答状況(X/Twietter):問題001


心電図を読む時,ボクは“型”を重視します。動悸なら不整脈だけ,とか胸痛はST-T変化をまず・・・そういう場当たり的な“読影”(心電図に果たしてこの表現が妥当なのかは置いておきますw)では,本当の心電図力は身につきません。

なお,心電図検定など試験の類では,ある程度このようなアプローチでも対応できるかもしれません。実際,1級やマイスターを自称する人でも実臨床の現場でそれこそ“お話にならない”レベルの心電図の読みをしている場面に遭遇したことは一度は二度ではききません。

ただ,そんな力は正直何の役に立つものかと思います。ですから,最初は時間がかかっても,一つ一つのプロセスを確認してゆく方が良いかと思います。そのための礎を示します。

【図1-3】心電図の読み“型” by 杉山裕章

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