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心電図検定対策問題011

問題011 (2024/2/12)
65歳・男性。特別な既往なく,現在の内服などもなし。10日ほど前に咳嗽などの感冒症状あり。その後,2日前から胸痛を自覚するようになった。一時的に軽快したが,再発したため内科外来を受診。胸痛は吸気時に増悪し,体位で程度が変化する。

65歳,男性の心電図【問題011】

問題:胸痛を訴える60代・男性の診断は?

(a) 急性肺塞栓症 Acute pulmonary embolism
(b) ST上昇型心筋梗塞 STEMI
(c) 急性心膜炎 Acute pericarditis
(d) 早期再分極パターン BER/benign early repolarization
(e) 非ST上昇型心筋梗塞 NSTEMI


解答状況(X/Twitter):問題011

【正解】 (c) 急性心膜炎 Acute pericarditis  (正解率60%)

2日前からの胸痛を訴え受診した60歳台の男性である。症状は間欠的で,労作ともあまり関係性は低く,呼吸(特に吸気)による増悪を訴えた。バイタルサインは,安定していた。

急性心膜炎自体は,心電図のみで診断する疾患ではないが,病歴や症状の性質からは典型的といえる症状ではある。しかしながら,実臨床では急性冠症候群との鑑別も含め,心電図所見を正しく理解することが重要である。
心拍数87bpmの洞調律で,何と言ってもI,II,aVF,V1~V6でST上昇(concave型:下に凸)があり,おおむね同様の誘導でPR低下も認められる。

さらに,急性心膜炎特徴づける所見の1つとして,感度は低いが,胸部誘導でSpodick's sign(徴候)があり(V4で顕著),V6でのT波平低化に関連したST/T比も0.25以上となっており,いずれも心膜炎として矛盾しない。また,aVRで軽度ながら,“knuckle sign”(PR上昇・ST低下)も認められている。
唯一,心膜炎では,STレベル(J点)が5mm以上にはみにくいとされるが,不完全右脚ブロックなためもあるが,V2ではこれに違反している。臨床的にも,65歳・男性・胸痛・ST上昇ならば,最後まで心筋梗塞(広範囲)は除外する気持ちで臨む必要がある。

Dx: s/o Acute pericarditis, IRBBB, prolonged PR interval

【診断タグ】
#急性心膜炎 #ST上昇 #Pericarditis (2024/2/16)


【補遺1】別の症例(#おさらい心電図 No.11)

急性心膜炎の患者への遭遇頻度は,決して高くないため,一例ずつを大事にしたい。既にX/Twitterで扱った症例へのリンクを示すので,参考にされたい。
・第11回【78歳,男性:前胸部痛】
出題:2023/10/27(正解率37%)https://x.com/ekagemaster/status/1717745961408352642?s=20
まとめスライド【微修正】だけ提示しておく。

急性心膜炎のまとめ(#おさらい心電図No.11より)

【補遺2】急性心膜炎の心電図上の計測ポイント

意外と“適当”(雰囲気)になっていませんか?別の記事では丁寧に解説しますが,一括して簡易的ながら示すことにします(本症例における計測)。


from えかげますたぁ|Dr.ヒロ @ekagemaster (on X/Twitter)

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