1冊の絵本が出来るまで

一昨年に初めての絵本を出版して去年2冊。今年も新しい絵本を2冊作っています。
イラストの仕事を10年以上やって来たんですが
同じ絵を描くのでも絵本はまた全然違いますね。
まったく違う種類の面白さがあります。

今回は、今までに出版した絵本の1冊「なんにでもレナール!」が出来るまでのお話をしたいと思います。

はじまりは2014年に開催した個展。
展覧会のテーマは絵本。
学生の頃から、いつか絵本を作りたいとは思っていたんですが、自分で文章を考えるのが難しいなと思って、グリム童話やイソップ寓話、日本昔話などの話をいくつか選んでその話の何シーンかを絵にして展示しました。

その時に、せっかくなのでオリジナルの絵本も作りたいなと思っていました。
でもオリジナルの文章を考えるのは難しい。なので絵本が好きで、高校の時に詩や小説を書いている幼馴染みがいたのでその幼馴染みに
「オリジナルの絵本の話を考えてくれへん?」とお願いしたのがきっかけでした。その時は「ありがとうっていいな」というオリジナル絵本の文章を考えてもらって、そのお話の5シーンを見開きで描きました。
その1枚が下の絵です↓

その展覧会を見に来て頂いた出版社「教育画劇」の編集Kさんが、僕の絵を気にってくれて1つお仕事を依頼して頂いた事がきっかけで、2016年に初の絵本「わすれんぼうのサンタクロース」の絵を描くことになりました。↓

この絵本の制作にもめちゃめちゃ濃厚な話があるので、いつかどこかで話たり、書いたりしたいなと思っていますが、今回は、もう1つの絵本の話。

この「わすれんぼうのサンタクロース」がなかなかいい感じに売れまして
そのおかげで同じ編集Kさんが「来年も続けて絵本を作りましょう。何か描きたい絵本はありますか?」とおっしゃってくださいました。

その時にすぐ幼馴染みに連絡をして、絵本を作りたいから「文章を考えてくれ!」とまたお願いをしました。
するとあっとまに、3つほどの話のタネができました。

その話のタネ3つを持って、こんな感じの絵本が作りたいんですが、どうでしょうか?と編集Kさんに見てもらって、二人であ〜だこ〜だと話しました。
そのタネの中に「なんにでもレナール!」の元の話がありました。
もとの話は、公園を舞台にした人間の子どものお話でした。公園でごっこ遊びをしている子どもたちに妖精のようなキャラクターが魔法をかけて、子どものごっこ遊びを現実にする。というストーリーでした。

レナールを読んだ事のある人は知っていると思いますが、レナールは舞台が森で、主人公はモグラ。そして森で遊んでいるのは動物のキャラクターたちという設定でした。
人間の設定でこの話のダミー(下書きのようなもの)を考えていた時は、イメージがあまり膨らまず、どうしようかな〜と悩みながら描いていたんですが
編集のKさんと話をして、その事を言うと「動物のキャラクターにすればいいじゃないですか!」と言ってくれた事がきっかけで
一気にイメージが膨らんでダミーを描き上げる事が出来ました。
最初に思いついたキャラクターのラフはこちら↓

ダミーが出来たので、そのダミーを編集のKさんに見せると「いいじゃないですか〜!」と言ってもらえたので、出版社の企画会議にかけてもらい
出版社からの OKも出たので制作がスタート。

最初に書いて編集のKさんに見せたダミーはこんな感じでした↓

今から考えるとよくこんな感じのざっくりとしたダミーで「いいじゃないですか!」と言ってもらえたなと思いますね(裏紙に書いてるしw)

「わすれんぼうのサンタクロース」を一緒に作っていたので、ぼくの描く絵の仕上がりのイメージがKさんにあったのと一冊の絵本を一緒に仕上げた信頼感があったから「いいですね!」と言ってもらえたんだと思います。

そして、出版社での企画会議までに描いたダミーがこちら↓

最初のダミーよりは少しわかりやすくなりましたね。
このダミーでGOが出たので、いよいよ制作が本格的にスタート。

文章を書く幼馴染みの玉置永吉は、普段は電気工事の仕事をしているので、この作品がはじめての絵本。
文章の事については、その玉置も最近noteを始めたのでここで見れます↓

ぼくは「なんにでもレナール!」の前にも2冊の絵本を作っているんですが
その2つも文章は別の作家さんの文章でした。
まず出版社に文章があって、そこから担当の編集さんからぼくに連絡がきて
この絵本の文章に絵を描いてくれませんか?というような流れでした。

ですが、今回は、絵と文章が同時にスタート。しかもその文章を書くのが幼馴染みの玉置という事で、どんな風に進めて行けばいいんやろか?というところから相談しながら進めていきました。

まずは、玉置が大まかなあらすじを考えて(この時点では細かい文章はなし)そのあらすじを見てぼくが絵を描いて、それからまた玉置が絵を見て文章のイメージを膨らませる。そんなやり方を繰り返しながら制作していきました。

お互いに思っている事を伝えながらの制作は、幼馴染みという関係性だからこそ出来た方法だと思います。
以前に作った絵本は、すでに文章が出来ているものに絵をつけたので
ぼくが文章に対して意見を言う事はありませんでした。

そんなやりとりをしながら、ダミーを何度か描き直しました。

一番上のページのラフは、結構最終的なものに近いですが
2番目のものと3番目のものは、この後何度か描き直したので結構違う仕上がりになってます。

ストーリーが固まってくると、次は色です。
主人公のレナールのカラーリングに関しても、どんな色にも出来るので、考えているうちにぼくが迷ってしまって
何パターンかの色でレナールを描きました。

↑こんな感じで、色違いのレナール9種類ほど描きました。文章の玉置と編集のKさんに見て意見を言ってもらい、最終的なレナールのカラーリングになりました。
最後に色の決め手になったのは主人公感(ぼくの中では赤、青、黄色)のある色と森の中をメインにしたストーリーなので、森の中でも目立つ色を意識した色になりました。

ストーリーもキャラクターも固まって来たところでいよいよ最後の仕上げに進みます。

最後の仕上げは、ダミーと見比べてもらうと雰囲気の違いがわかると思いますが、背景の地面の色とキャラクターたちの体の部分は、絵の具で塗って
背景の木やキャラクターたちの着ている服は、画用紙に色をつけたものを服の形に切り抜いて貼り付けて制作するコラージュという手法で描きました。

ラフで描いているより少し大きめに描いています。
これは最終的に絵本になるときに変な部分でスッパリと切れないように大きめに塗っているからです。
なので絵本で見るのと原画で見るのとでは、原画の方が広がるがあるように描いています。

ここまでくればあと少し。だいたい最後の方のスケジュールは1週間に二枚ずつ仕上げていたと思います。
ダミーを何度も何度も練り直して考えるのもワクワクして楽しいですが
自分で絵を描いているのに変な話ですが原画を描き始めると完成が早く見たくて、ワクワクにドキドキもプラスされてきます。
ず〜っと絵を描き続けてきたのに今でも「いい絵が出来そうだな!」とか「いい絵本になりそうだな!」とか思うと最高にワクワクしますしドキドキします♪

中面の絵が全て出来ると今度は、表紙です。
表紙と一緒に表紙に巻くカバーと帯(本の下の方についてるキャッチコピーとか推薦文とかが入ってるやつ)を考えます。

表紙は絵本の顔なので、ここもかなりワクワクします。
レナールの表紙は、モグラなのでやはり穴の中かなとぼくは、中面の絵を描きながらイメージしていました。
中面は、森の中が舞台で色々なシーンがあるんですが、レナールの家である穴は出てこないので、こんな家に住んでますよ。的な感じの表紙にしたいなと思っていました。
最初に描いた表紙のラフはこんな感じです↓

これを編集のKさんに見せたところ「黒い表紙の本は売れないんですよね〜」と言われてしまいました。
ですが、穴の中は、やはり周りが黒い方が穴っぽくなるので
そこは譲ることが出来ず、どうしても黒に近い色がいいんです!と伝えるとKさんが「それじゃ〜帯の幅を広くしてそこは明るい色にするのはどうですか?」とアイデアを出してくれました。
そのアイデアから出来たのがこの表紙と帯です↓

これは、ほぼこのままに近い感じで最終的に仕上がりました◎

気づいた人がいるかもしれませんが、タイトルが下に入るのは珍しいですよね。これも編集のKさんのアイデアです。帯が太くなる分レナールが隠れてしまうので、タイトルを下に入れましょうと。
ぼくも玉置も絵本を作り始めたばかりなので、ベテラン編集のKさんのアイデアに何度も何度も助けられました。本当に素晴らしい方です。
イラストは一人で描いたものをデザイナーさんに渡してデザインをしてもらうという感じで一人一人個別に仕事をしている感じの仕事が多い。
でも絵本はチームで作るという感じ。この感じが絵本作りの魅力で、みんなで作った絵本を世界中のみんなに知ってもらいたい!と一致団結する部分です。
制作期間も、イラストの仕事の場合はラフを考える時間も含めて
短いものだと1週間くらいの時もあったりするんですが
絵本はラフを考えてる期間も入れると半年とか長いものだと2年、3年とかかる場合もあります。
それだけ長い時間かけて制作すると当然思い入れも強くなりますよね。

本屋さんに並んでいる絵本の一冊一冊にこんな感じのドラマと思い入れが詰まっているのかと思うと、絵本を読む時も、選ぶ時も真剣度も変わってくるんじゃないかなと思いまして
こうして一冊の絵本が出来るまでのお話を書いてみました。

そしてそして、ありがたい事に「なんにでもレナール!」の増し刷りが決定して、現在2刷り目が印刷中です!!!本当にありがとうございます!嬉しいです♪
1年間に出版される絵本は約2000冊その中で増し刷りになるのは約40冊だと言われています。。。なんと2%・・・
残念ながらそのほかの絵本は初版のみ。
これは絵本に限らず、本全般にも言える事らしいです。

なので増し刷りになるのは本っっっっっ当に嬉しいです!

もしこれを読んで少しでも「なんにでもレナール!」が気になったとういう方は、amazonでも本屋さんでも探してみてください。

長い文章を読んでくださってありがとうございました。

最後にもう1つこの絵本を少しでも多くの人に知ってもらうために何か方法はないかなと考えて
SNSでシェアをしてもらいやすい90秒ほどのアニメーションも作りました。
出来たてほやほやのレナールのアニメーションをYouTubeにアップしていますので、こちらも見てもらえると嬉しいです♪

そして出来ればツイッターやフェイスブックでシェアしてもらえると嬉しいです。

今後ともよろしくお願いします。

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やったぜベイビー
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中川 貴雄

1つの仕事が出来るまで

「1冊の絵本が出来るまで」という記事を書いたことでたくさんの人に興味を持って読んでもらえたので、これを機に今までやったお仕事で面白かったものや大変だったものをまとめてみようかなと思いまして、気の向いた時に1つの仕事が出来るまでをテーマに記事を書いていきたいと思います。
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コメント28件

>矢田さん その記事は9月8日の「絵しりとり 86」ですね◎読んで見てみてください〜♪
てんきゅーゆう!
本作りって楽しいですよね。
文章や絵を仕事にしてるので、いつか絵本作ってみたくなりました。
>7flowerstudioさん 7flowerstudioさんが絵本を作るとカッコいい絵本が出来そうですね♪見てみたいです◎
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