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2019年7月31日 今日の一枚 「9秒98が出たときのこと」

ロンドンダイヤモンドリーグで記者の方が
「どこで観ましょう?」と。

EKIDEN Newsはカメラマンとしてビブスをもらい
グラウンドレベルまで入ることができるのですが、
ペン記者と呼ばれる記者の方々は
ミックスゾーンから先、つまりグラウンドレベルには
立ち入ることができないのです。

記事をつくるためには、レース直後の選手から
コメントを引き出さなければならない。
コメントがとれる場所はグラウンドから出口の間にある
ミックスゾーンといわれる通路だけ。
このミックスゾーンはいわゆる出口ですから、
そこからいくら頑張ってもレースそのものを観ることができない。
そのため屋内のプレスルームにあるモニターで確認して
レース結果がわかったら、
急いでミックスゾーンにかけつけるしか方法がない。

つまり、どういうことかというと、
わざわざロンドンまで取材に行ったとしても
実際のレースはモニターで映像を観るしか手立てがないのです。
厳密には客席にある記者席から観ることができるけれども、
そこからミックスゾーンまでの移動が手間取って
コメントを逃すこともありえる。
ロンドンまで取材しに来た記者たちは筋金入りの陸上好きだけに
それはもったいないよなぁと思ったのです。
小池選手が9秒98を出したときも、
モニターで確認して、記者のみなさんはダッシュへミックスゾーンへ。


ゴールしてから、記録が出るまでの空白の時間が長かった。
ロンドンで記者の方と飲みながら
「こんな感じでしたよ」という話をここで。

これまでの日本選手権の走りやロンドンでの予選を観て、
「これは好記録が出るに違いない」
そう確信めいたものがありました。
ポイントは小池選手が2レーンに入ったこと。

去年のロンドンDL 200mに出場した小池選手は
走路コンディションの悪い1レーン。

昨年の200mはDL種目でもなかったですし、
DL種目で予選を経て、このレーンを掴んだ小池選手は
昨年とは違う景色が見えてるんじゃないか。
これは来る。来るに決まってる。
桐生選手が9秒98を出したときもそうなんですが、
同じ選手を見続けていると
「ここで来るに決まってる」みたいな
根拠のない自信と確信がうまれてくることがありまして、
そういうときはなぜか妙に冷静だったりするのです。

小池選手がゴールした後も
そのまま順位と記録を確認するためにビジョンの前まで走っていくはずと、これまでの走りで予測。
好記録が出たときのリアクションを押さえるポイントはここ。とあたりをつけて、
そのポイントまで他のカメラマンとぶつからずに最短距離で動けるポジションを探し、
「ここは絶対ゆずらない」という覇気を
周囲のカメラマンに振りまきながら、
2レーン一択でカメラを構えます。

そして、スタート。悪くない。悪くない。いや、むしろかなりいい。

最後まで崩れない。崩れない。これは来る。来る。

ゴールした瞬間、「これは9秒台入った!」と確信して
ゴール前の撮影ポジションから抜け出して
小池選手を追いかけます。


映像は1位のSIMBINE選手を追いかけ、
会場はイギリスのHUGHES選手
9秒95で2位に入ったことで大盛りあがり。
4位の小池選手のリザルトがなかなか出ない。

出ない。出ない。

出た!9秒98!

グラウンドでは1位のSIMBINE選手と
2位のHUGHES選手インタビューがはじまり、
この記録にスタジアムは当然ながら無反応。
小池選手もどう反応してよいやら戸惑っているようす。
プレスディレクターに小池選手が
「あの金髪のところに行け」と言われたみたいで(笑)
こちらに向かって歩いてきました。

金髪はこういうときに役にたちます(笑)

「9秒台おめでとうございます!」
「いや、なんて言っていいかわかんないです(笑)」
と、戸惑いながら見せたこの笑顔。
このあと、ミックスゾーンでは、
クールにレースを振り返り、分析をする小池選手がいたそうです。
グラウンドレベルというのは感情が。
ミックスゾーンでは知性がうまれる場所なんですね。
近いうちに小池選手は
この9秒98を超える記録が出るんじゃないかなーと思ってます。
「出し切った!」という感じじゃなかったですから。

と、このようなことをOTT TALKで話していこうと考えてます。

真夏のOTT TALK~キヌクロからMGCまでたっぷりと~
2019/8/12(月) 15:00~16:30(若干延長もあるかも)
出演:EKIDEN News 生島淳 をはじめとした駅伝・陸上語り部たち。
明治ホールディングス株式会社 B1講堂
一般 2,000円 大学生・専門学校(学生証受付提示)1,500円
小中高生 1,000円

ぜひ、会場へどうぞ!


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