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折田くんと青学。

「よし、そこだ。ここで切り替えるぞ!」
「いいぞいいぞ。しっかり粘れ!」

西京極競技場のスタンドでスクリーンに映し出される全国高校駅伝を観ているとスタンドミックスゾーンから1人の少年の声が聞こえてきた。フィニッシュまでまだ3区間ほどある。誰もいない寒空のスタンドミックスゾーンで立ち上がり、柵から身を乗り出して、ときに叫び、ときに喜び、祈るようにレースを見続ける少年がとても気になった。

エントリーから外れた熱心な高校生かなと思った。グラウンドコートの胸には「SUMA」と書いてある。目を凝らして、その少年をみると見覚えがあった。ついさっき、烏丸紫明でラストスパートを決め日本人区間記録タイを出した須磨学園の折田選手にとても似ていた。柵から身を乗り出してレースの行方を見守るその少年のもとに、中学生くらいの少年が近づいてTシャツにサインをもとめた。Tシャツにはきれいな楷書で「折田」と大きく書いてあった。

あれが折田か。都大路1区のラストスパート以上に驚いた。1区を走り終えたほぼすべての選手が競技場に戻るとダウンをし、チームテントなど温かい場所で過ごすなか、折田選手はダウンもそぞろにミックスゾーンのスタンドでたったひとりで選手の帰りを待つ。その姿に彼の競技志向が見て取れた。「個人だけでなくチームで勝ちたいんだな」と。

フィニッシュ地点でひとりで待ちながら、自分のグラウンドコートをアンカーにかけ何度も頭をポンポンたたきながら、その走りをねぎらった。

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