Stonemaier Games新製品紹介+α

Stonemaier Gamesからリリースされる新製品について、同社の代表であるJamey Stegmaier氏にいろいろ聞いてみましたよ、という記事です。デザイナーへのインタビュー、というつもりだったのですが、あまりデザイナーインタビューという感じではなくなってしまいました(Jameyの単独デザインの製品はないので)。

Scythe: The Rise of Fenris (大鎌戦役第三拡張:フェンリス襲来)

『Scythe/大鎌戦役』の第三拡張が2018年Q3にリリースされます(GenConで先行発売)。先日、ルールブックに収録される背景設定を語るストーリーが先行公開され、謎の超技術都市ファクトリーがトランシルヴァニア中央部にあることと設立者がニコラ・テスラであることが明らかにされました。純粋に技術の進歩に邁進したテスラは自分が開発した技術が戦争に利用され殺戮をもたらしたことに絶望してファクトリーを閉じたのだとか……そしてこのThe Rise of Fenrisはストーリー志向のキャンペーンモジュールなのです!

Q:The Rise of Fenrisはどんな拡張なのですか?
A:The Rise of Fenrisは『Scythe/大鎌戦役』の最後の拡張です。8つのゲーム(シナリオ)からなるキャンペーンとして遊べる他に、この拡張には11のモジュールがあってそれらを組み合わせて遊ぶこともできます。

Q:どのような物語になるのでしょうか?
A:『Scythe/大鎌戦役』とその拡張『Invaders from Afar/彼方よりの侵攻』『The Wind Gambit/風の一撃』を通して体験できるような物語です。The Rise of Fenrisは『Scythe/大鎌戦役』の時点から始まります。

Q:The Rise of Fenrisはレガシーゲーム(一回限りのプレイを想定したシステム)なのでしょうか、それとも通常のキャンペーンゲーム(複数回遊ぶことができるシステム)なのでしょうか?
A:やり直せないような変化(書き込む・シールを貼る・破るなど)は一切ないのでレガシーゲームではありません。言うなれば“発見のあるキャンペーンゲーム”でしょうか。ゲーム中には秘密の要素もありますが、やり直すこともできます。

Q:それぞれのゲーム/シナリオを別のプレイヤーが遊んだり、異なる人数で遊んだり、あるいはプレイヤーが担当する陣営を変えて遊ぶことはできますか?
A:同じプレイヤーで遊ぶ方が良いと思いますが、必ずそうしなければならないわけではありません。キャンペーン中に陣営を変えることができる(場合によっては変えなければならない)タイミングもあります。

Q:キャンペーン中に分岐はありますか?
A:あります。8つのゲームの内2つでは、プレイヤーのそれまでの決断によってまったく違うシナリオが用意されています。

Q:キャンペーンを遊び終えた後も、The Rise of Fenrisを遊ぶことはできますか?
A:リセットして最初からキャンペーンをやり直してもいいですし、キャンペーンの間に登場した(アンロックした)モジュールを好きなように組み合わせて遊ぶこともできますよ。

Q:The Rise of Fenrisを遊ぶのに以前の拡張は必要ですか?
A:必要ありません。5人でキャンペーンを遊ぶのに必要なものはすべて揃っています(基本セットである『Scythe/大鎌戦役』は必要ですが)。6~7人でキャンペーンを遊ぶ場合は『Invaders from Afar/彼方よりの侵攻』が必要です。

Q:The Rise of Fenrisに含まれている11個のモジュールはどのくらいの規模のものになりますか?
A:いくつかはそれぞれ大きいTuckbox【訳注:小箱のことですが、トランプ1組~カードゲームの小箱サイズくらいではないかと思います】に入っています。残りは拡張に入っている6枚の打ち抜き板から構成されています。

Q:ゲームの開発過程について教えてください。
A:大鎌戦役の世界の歴史や伝説については、(世界設定とアートワークを担当する)Jakubが以前から考えていたものです。ゲームデザインはファンが作ったキャンペーンからアイデアを得ています。そのコンセプトが気に入ったのでデザインしたファンに連絡をとって一緒にこの拡張を作ろうと提案したのです。

Q:これが『大鎌戦役/Scythe』の最後の拡張だそうですが、今後の展開はもうないのですか?
A:拡張セットはこれが最後になりますが、2種類のアクセサリーを考えています。メタル製のメックとモジュラーボードです(モジュラーボードについて追加で質問したところ、二面のボード+好きな場所に配置できるヘックスタイルの組み合わせで、様々なマップが作れるようなものを計画しているようです)。

Viticulture: Visit from the Rhine Valley

Visit from the Rhine Valley(ライン渓谷からの訪問)は『Viticulture/ワイナリーの四季』の新規訪問者セットです。現行のEssential EditionとしてはTuscanyとMoor Visitorsに続く3つ目の拡張ということになります。発売は2018年6月1日。

Q:Visit from the Rhine Valleyはどんな拡張ですか?
A:基本セットの訪問者と差し替えて使う、新しい訪問者カードのセットです。

Q:以前の『Moor Visitors』とはどこが違うのでしょうか?
A:『Moor Visitors』は基本セットの訪問者と混ぜて使用する40枚の訪問者カードのセットでしたが、Visit from Rhine Valleyは80枚の訪問者カードのセット(夏冬各40枚)で、基本セットや『Moor Visitors』の訪問者とは混ぜずに別のものとして使用します。

Q:他の拡張と合わせて使うことはできますか?
A:『Tuscany』のモジュールはどれも一緒に使うことができますが、前述の通り『Moor Visitors』とは一緒に使うことはできません。

Q:ゲームプレイはどのように変わるのでしょうか?
A:一番の違いは訪問者カードから勝利点を獲得する要素をほとんど取り除いたことです。代わりにエンジンビルディング(=ワインの生産体制)に関係した効果になっています。プレイ時間は変わりませんが、可能な時に勝利点を取りに行くのではなく、実際にぶどう畑から収穫してワインを作る戦略に強くシフトしています。

Q:もう一人のデザイナーであるTido Lorenz氏はどんな方ですか?
A:TidoはStonemaier GamesのドイツのパートナーであるFeuerland社の関係者です。この拡張のアイデアは彼が考えたもので、Feuerland社を通じて大量のカードが送られてきました。そのカードを検討して『Viticulture/ワイナリーの四季』に合うような形にした結果がこの拡張、というわけです。

Q:『Viticulture/ワイナリーの四季』の今後について教えてください。
A:今の所追加生産以外は動いていません。でも将来的にはなにかしたいと思っていますよ。

My Little Scythe (マイリトルサイズ)

My Little Scytheは『Scythe/大鎌戦役』から着想を得てデザインされたファミリー向けのボードゲームです。1~6人用でプレイ時間は45~60分。2018年8月リリース予定。

Q:My Little Scytheはどんなゲームですか?
A:My Little Scytheは『Scythe/大鎌戦役』からアイデアを得たメカニズムを持つファミリー向けのゲームです。

Q:あなたはMy Little Scytheのデザイナーとして名前は載っていませんが、どうやってこのゲームが生まれたのか教えてください。
A:2017年の春に、Hoby Chouという方が、『Scythe/大鎌戦役』から着想を得てマイリトルポニーのテーマを借りたゲーム(しかも娘と一緒に遊べるゲーム)を作ったことを発表しました。彼はPrint-and-Play用のファイル(遊ぶために必要なルール/カード/ボードなどの自作用のファイル一式)を公開しました。私はそれに気がついて、実際に遊んでみることにしました。遊んでみた結果大変気に入ったので、権利関係の交渉をして、デベロップを手伝い、アートワークやグラフィックデザインを手配し、ブラインドテストを行い、といった様々な作業をして、数カ月後には製品となるわけです!

Q:My Little ScytheはStonemaier Gamesの製品の中では最も子供/家族向けのゲームですが、開発者・出版社としてなにか新しい試みはありましたか?
A:このゲームに限らずすべての製品を幅広い人に遊びやすいゲームにしたいと思っています。『Scythe/大鎌戦役』の32ページのルールブックはそういう意味で例外ですね。今後はあれほどにはならないと思います。

My Little Scytheは『Scyhte/大鎌戦役』と似た部分もありますが、本質的にはかなり違うゲームで、「大鎌戦役ファミリー版」「大鎌戦役ライト版」を期待すると少し違うかな、という印象があります。『Scythe/大鎌戦役』がエンジンビルディングとエリアコントロールのゲームであるのに対し『My Little Scyhte』はむしろピック&デリバー系のゲームであるように見えます。My Little Scytheのルールも拙訳が公開されていますので、興味のある方は一度読んで頂ければと思います。このMy Little ScytheのデザイナーであるHoby Chou氏にもお話を伺ったのでそちらも併せてお読みください。

その他いろいろ

Q:これら3つのゲームはすべてStonemaier Gamesの外から生まれたものですね。Stonemaier Gamesには活発なファンコミュニティが形成されている用に思います。コミュニティの形成と、コミュニティから製品を作ることについて、お考えをお聞かせください。
A:私はファンの作ったものを見るのが大好きですし、ファンの皆さんにそうした創作を積極的にしてもらえるように、創作や発表の場を作ったり、創作に関する会話に参加して応援したいと思っています。一方で、ファンの方には「製品になるかもしれないから」という理由で創作をしてほしくないとも思っています。今回の製品はどれもそうした動機から生まれたわけではありません。でも、製品化されるかもしれないというちょっとした可能性は、一部のファンに、ただ考えたり話たりするだけではなく実際に何かを作ってみる理由になるのかもしれませんね。

Q:創造的なコミュニティを作ることはKickStarterの目的の1つだと思いますが、KickStarterを止めた後も変わらずあるいはそれ以上にコミュニティが活発になっているように思います。コミュニティとクラウドファンディングについて、なにかご意見はありますか?
A:KickStarterの好きなところの1つは、特定の製品について、パワフルで情熱的なコミュニティを築くことができるところです。でも当然のことですがそれがコミュニティを築く唯一の方法ではありません。Facebookグループはわたしたちの製品に関するコミュニティに大きな助けとなっています。

Q:Stonemaier Gamesの製品には、ゾンビも海賊も地中海の商人もドラゴンもいません。『Between Two Cities/ふたつの街の物語』と『Viticulture/ワイナリーの四季』は19世紀前半が舞台ですし、『Scythe/大鎌戦役』は20世紀はじめが舞台です。どちらもボードゲームのテーマとしては珍しい方だと思いますが、なにかこうした時代に思い入れがあるのでしょうか?
A:特にそうした時代について考えていたわけではありません。面白いですね。私はテーマとしては近未来SFと中世ファンタジーが好きなので、そうしたテーマのゲームがないのはちょっと不思議ですね。

Q:最近どのようなゲームを遊びましたか?その中で感心したゲームはありますか?
A:最近St. Louisで行われたGeekway to the Westというコンベンションに4日間参加しました。そこで私にとってははじめてのゲームを17遊んだのですが、特に興味深かったのは『Dice Forge』『London』『Tyrants of the Underdark』でしたね。

Q:ユーロスタイルのボードゲーム以外にどのようなゲームを遊びますか?例えばウォーゲームやミニチュアゲーム、TCG、RPG、ビデオゲームなどは?
A:その中ではMagic Onlineを少しだけ遊ぶくらいですね。それ以外は基本的にテーブルトップゲームを遊んでいます。ほとんどはユーロスタイルのゲームですが、フィラータイプのものや、初心者向けのもの(Gateway Games)、パーティ・大グループ向けのゲームも遊びます。

Q:今後のStonemaier Gamesの計画を教えてください。
A:ヒミツデスヨ!今のところは3つの新しい製品の仕事をしています。2019年発売予定の2つのゲームが開発段階にありますし、2018年内にはつば予定のゲームも1つあります。その他に『Euphoria』の拡張を開発中です。

My Little ScytheデザイナーHoby Chou氏に質問

今回興味がったのでMy Little ScytheのデザイナーであるHoby Chou氏にもお話を伺いました。質問に丁寧に答えてくださってありがとうございました。

Q:My Little Scytheはどんなゲームですか?
A:My Little Scytheは、7つの動物王国に囲まれたポム王国(【訳注】Pommeはフランス語でリンゴのこと)の物語です。各プレイヤーはいずれかの王国出身の動物兄弟を担当して収穫祭に参加してポム王国の次の王座を争うのです。勝つためには8種類のトロフィーの内の4つを獲得する必要があります。プレイヤーはクエストを達成し、資源を探し、時にはパイファイトを行います。
デザイン的には、新しいプレイヤーに魅力的で、かつ『Scythe/大鎌戦役』のファンにも親しみのあるゲームを作ることを目指しました。シンプルなルール、深い戦略、そしてなにより楽しいゲームになるようにデザインしました。これが最も幅広いプレイヤーが一緒に楽しめると思っています。見た目に反して、My Little Scytheは子供向けのゲームではありません。子供も大人と楽しめますし、時には大人を負かすこともできますが。

Q:My Little Scytheのデザイン史について教えてください。
A:私は娘のViennaと家族のプロジェクトしてMy Little Scytheを作りました。私と娘は一緒にボードゲームを遊んでいて、『Scythe/大鎌戦役』も一緒にプレイしていました。残念ながら娘は『Scythe/大鎌戦役』を同年代の友達と一緒に楽しむことができなかったので、なにか新しいゲームを作ることに決めたのです。
最初のプロトタイプは『Scythe/大鎌戦役』と非常に近いものでしたが、テーマはマイリトルポニー(娘の当時のお気に入り番組)になっていました。ですから実際にはルールが重く私が面白いと思った要素が入っていました。言うまでもないことですが、他の家族と一緒に遊んだ最初のセッションはうまくいきませんでした。そこで感想を聞いてデザインし直すことにしました。元の『Scythe/大鎌戦役』のメカニクスは取り除かれたり単純化されたり、あるいは置き換えられて全く新しいゲームになりました。私の個人的な好みよりも遊ぶ人(特によりカジュアルな人)の意見を聞くことに決めてこのように方針を転換したのです。
その後も毎回テストプレイの感想を反映しながら何度もゲームを作り直しました。不特定多数でのテストのために発表した最初のPrint-and-Play用のファイルは予想外にもBoard Game GeekのGolden Geek AwardのベストPnP部門を受賞しました。これは大変名誉なことでしたが、この賞を受賞してから更にゲームが進化していると感じていました。私たちは若い/カジュアルな人向けのシンプルさは保ちつつ大人のゲーマーにも満足できるように改良をしていました。
Stonemaier Gamesと契約をした後には、これまで以上のテストと改良が行われました。最も尊敬されるゲームデザイナーのひとりであるJamey Stegmaier氏の参加によってゲームは非常に良くなりました。一緒に仕事をして楽しく、また彼のおかげでゲームが更に仕上がりました。既に経験豊富で実績があるにも関わらず、Jameyは私たちのデザインに敬意を持って扱ってくれ、マイリトルポニーのテーマを変更する際の世界設定においても自由にさせてくれました。
アートワークのKatie Khau氏は明るく楽しいテーマにピッタリのアートを作ってくれました。彼女がデザインしてくれたキャラクターは私が考えていたとおりのものでした。Jameyは更にMorten Monrad Pederson氏による一人用のAutomountieを加えてくれました。Automountieを使えば1対1のソロプレイもできますし、マルチプレイの人数を増やすこともできます。時には家族で互いに争うよりもみんなでAIを狙う方が良いこともあるのです :D

Q:どうやってデザインを進めましたか?
A:先程の回答に加えてViennaの役割について答えますね。
最初はVienna(当時5歳半)が発想の源泉でした。愛するもの、愛する人のためになにかする時には思いもかけないような新たなことに挑戦をするものです。例えば大鎌戦役とマイリトルポニーを混ぜるとか!Viennaは大鎌戦役とマイリトルポニーの世界をよく知っていました。元の大鎌戦役の要素を取り除いたり置き換えたり組み替えたりする時に、Viennaはどうすればテーマに合わせることができるかを正しく理解していました。こうしたテーマとの結びつきは製品版からも感じることができるでしょう。例えば『Scythe/大鎌戦役』の“生産”は、まったく新しい資源発見システムである“探索”になりました。Viennaから生まれたアイデアが、Jamey Stegmaierお気に入りのシステムのひとつになったのです。
それに、喜んでプレイテストしてくれる人が家の中にいるというのはとてもありがたいことですよね:)

Q:あなた自身について少しお聞かせください。
A:ほとんどの人生をバンクーバーで過ごしたことは幸運だと思っています。私は幼い頃に両親とこの地に移住してきました。あまり裕福ではない移住者にはよくあることですが、私はあまり玩具を持っていませんでした。ですから私はゴミとなった厚紙から自分の玩具を作っていました。それが最初のボードゲームデザインです。自分が作ったゲームで他の人が楽しく遊ぶことに喜びを感じていました。それで充分だったのです。
残念ながら、私のゲーム制作は、現実の生活(学校、仕事、結婚その他)のためにその後30年近く止まってしまいます。娘が生まれて、ある日ボードゲームで私を上回った時に(当時娘は3歳でした)、ボードゲームへの情熱が蘇ったのです。
私のボードゲームコレクションは既に壁一面になっています。『Splendor/宝石の煌き』『Ticket to Ride/チケット・トゥ・ライド』『Azul/アズール』『Scythe/大鎌戦役』などを家族と楽しんでいます。

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