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わたしはゾウがすきなのでございます

この絵は、絵本『かさの女王さま』(シリン・イム・ブリッジズ作 ユ・テウン絵、松井るり子訳、2008年 セーラー出版改名後、らんか社)の表紙です。作家の二人はアメリカ在住で、作家は中国系アメリカ人で、絵は韓国生まれで大人になって渡米した人。

表紙のゾウに乗った主人公のヌットは、自分で描いたゾウの傘を高々とさして、うれしそう。絵を描くこととゾウの双方が好きなのです。

蝶や花を描いた傘を作るという、タイの伝統を守ってきた村が舞台です。ヌットの家族は代々、木と竹で傘の骨を組み、紙漉きから絵付けまでをやっていました。ヌットは絵付けがとても上手なので、ついつい伝統からはみ出して、大好きなゾウの楽しそうな様子を描いてしまうけれど、たしなめられ、蝶と花だけ描くようにと言われます。素直なヌットは、伝統を描くことを大切にしながらも、自分の好きなゾウの絵柄を小さな飾りの傘に描き、窓辺にそっと飾っていました。

タイの王様が、傘の品評会へ村へやってこられたとき、ヌットが描いたゾウの小さな飾りの傘が王様の目に留まります。王様に声をかけられたヌットは、「わたくしはゾウがすきなのでございます」と応えます。

素敵な王様は、「こころから絵をつけたので、ことしの傘の女王にヌットを選びます」とおっしゃいました。

大好きだからこそ、心をこめて描いたゾウのお話でした。

大好きなこと(至福)を追い求めることは、時に「伝統」のすばらしさを超えることがあるのでしょう。