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ワインコラム31:鳥

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Ryoko☆Sakata

最近読んだ本に『鳥』という短編集がある。
作家の名は、ダフネ・デュ・モーリア。1931年から40年ほどの執筆期間のある、イギリスの女性の作家だ。

「鳥」という名にヒッチコックの映画を連想し、思わず手に取ったのだが、やはり映画の原作であった。さらに「レベッカ」も同じ作家のものであるという。

ひところ「ヒッチコック劇場」の原作者である、ヘンリー・スレッサーの短編集を楽しく読んだことを思い出した。
ハヤカワから2、3冊出ていたと記憶している。皮肉が効いていて、どんでん返しもあり、いかにもヒッチコック好みの味わいだった。
私の好きな作家、ロアルド・ダールにも通じるところがあった。

さて『鳥』である。
「鳥」の原作ということで、期待を込めて買ってみたのだが、結果は当たりであった。
全8話、500ページ余りの短編集で、全部が面白いとは言わないが(2編はピンとこなかった。)、ほとんどの作品に共通するミステリー的な要素(不条理な恐怖や人間の皮肉な心理)が、ヒッチコックを惹きつけたのは間違いない。

原作の『鳥』は映画とは設定が違っていて、海辺の農場に住む一家の視点を通して描かれているが、不条理な恐怖と不気味さは映画以上かもしれない。
初めて読んだ作家であるが、デュ・モーリアの世界を堪能した。
「イギリスのミステリーは面白い。」という私の持論が裏付けられたようで嬉しかった。

鳥とワインの関係で言えば、ブルゴーニュには2つの鳥の名前の畑がある。
ニュイ・サン・ジョルジョにある小さな畑「オー・シャン・ペルドリ」と、ヴォーヌ・ロマネのラ・ターシュの斜面上にある「シャン・ペルドリ」だ。
「シャン・ペルドリ」とは直訳すれば「山鶉の畑」となる。
日本では鶉(ウズラ)というと卵が有名だが、ヨーロッパではジビエとしてポピュラーな食材だ。

スイスには、ウイユ・ド・ペルドリ(山鶉の目)というワインがある。
ピノ・ノワール100%のロゼワインだ。ほとんど自国で消費されるため、日本ではあまり見かけない。
鶉の目のような、オレンジがかった薄いピンク色をしていることからそう呼ばれているらしい。

最後に、鳥についての「とり」の話を一つ。
鳥のエチケットはブルゴーニュでは、ほとんど見かけないが、イタリアワインのエチケットにはよく登場する。


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