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孤独とストレスが引き金の自傷行為

この子は、ブリーダー直接販売だけど、同腹の兄弟がみんな亡くなって、社会化期を独りぼっちで過ごしていたらしい。

自傷行為が激しくて、自分の尻尾を噛んで血だらけになるので、24時間エリザベスカラーをつけっぱなしだった。

理由は、
・カラーの付け外しで猛烈に怒る
・カラーをはずすとすぐに尻尾を噛みはじめる
・それを止めようとすると凶暴になる

このまま一生カラーをつけっぱなしなのかと、悲痛のhelpコールだった。

カウンセリングから聞き出せたのは、
・未熟な社会化
・孤独による心のバランスの崩れ
・カラーによるストレス
・満たされない欲求

カウンセリング後、まず最初に行ったのは、カラーをはずしての引っ張りっことボール投げ。

ストレスから解放してあげて、犬が本来行うはずの『物をひき裂く』という欲求をとことん満たす。

仮に自分の見立てが間違いで、カラーをはずしたとたんに尻尾を噛むようなら、自分が噛まれても止めるつもりではずしたがわけだが、見立て通りに、ロープとボールに夢中になった。

30分ほどたっぷりと遊ばせると、当初の興奮が徐々におさまってくる。

こうなると、カラーの付け外しも難しくない。
特にこの子はトリーツを食べてくれたので、苦労することはなかった。

次に必要なことは『皮膚刺激』だ。
社会化期を孤独に過ごしていたので、自分が何者であるか、どのくらいの大きさで、他者は何者か、等が正確に理解できていない。
つまり、認知機能が低いわけだ。
なので、皮膚を撫でたり揉んだりして、自分の存在・他者の存在を意識させる。
足先耳先、尻尾も触る。
もちろん無理矢理ではない。

自分以外の命を感じることで、犬は安心感を得る。

結果は上々だった。
日を追うごとに尻尾を噛まなくなり、それに比例してカラーをはずす時間も長くなる。ストレスが軽減されるから余計に尻尾を噛まなくなる。いい歯車が回りはじめる。

その後、足を拭いたり抱っこすることに拒絶があったので、系統的脱感作で受容に導き、今は問題なく暮らしている。

いぬいがやったことは、しつけなのか?トレーニングなのか?心理療法なのか?

いぬいは訓練士なのか?ドッグトレーナーなのか?ドッグビヘイビアリストなのか?
それともその他なのか?

そんな小さなカテゴリーにまとめてほしくない。
これがいぬいだ。