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旧約聖書物語 16

壁に映し出された
不思議な文字を読むダニエル。
賢者ダニエルを罠にはめて
抹殺しようとした重臣たちの企みが
失敗に終わり
獅子の穴から生還するダニエル。
ベル神を利用して私腹を肥やす
重臣たちの横領を暴くダニエル。
エルサレムに神殿を
再建することを許される
バビロンのユダヤ人たち。

谷口江里也 構成訳
ギュスターヴ・ドレ 画
©️Elia Taniguchi

目次
1 壁に字を書く指 (ダニエル書5)
2 壁に字を書く指 その2 (ダニエル書5)
3 獅子の穴に投げ込まれるダニエル (ダニエル書6)
4 獅子の穴に投げ込まれるダニエル その2 (ダニエル書6)
5 ダニエルとベル神 (ダニエル書補遺)
6 ダニエルとベル神 その2 (ダニエル書補遺)
7 神殿再建への着手 (エズラ記1-3)
8 神殿再建への着手 その2 (エズラ記1-3)


1 壁に字を書く指 

  (ダニエル書5)

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バビロンの王が
ネブカドネツァルから息子の
ベルテシャツャルに代わった頃の話。
ある日、王が千人もの貴族を招いて
大宴会を開いた。
みんなで騒いで酒を飲み
宴も佳境に入った頃
すっかり御機嫌になった王は
父ネブカドネツァルが
エルサレムの神殿から分捕って来た
金銀の祭具を持ってこさせた。
余興にそれで酒を飲もう
という趣向であった。
こうして王侯貴族一同に
後宮の女を混じえての
エルサレムの神殿の祭具を器の
酒盛りが始まった。
ところが酔いに乗じて人々が
金、銀、青銅、鉄、木や石の諸々の
手で造った神々を讃え始めたその時
空中に何本かの指が現われ
明かりに照らされた壁に
文字を書き始めた。
それを見た王は恐怖の余り顔色を変え
腰を抜かした。
そして王は大声をあげて魔術師や祈祷師
占い師等を呼びにやらせ
それらに向かって言った。
誰でも良い、ここに書かれた文字を読み
その意味を解き明かす者には
紫紅の衣に金の首飾り
我が国第三位の位を与える。
しかしながら誰もその文字を読めず
解き明かせなかったため
王はいよいよ顔色を無くし
貴族たちも怯え途方に暮れていると
話を聞いた王妃が
宴の広間に来て言った。
王様しっかりして下さい。
そんなに取り乱さないで下さい。
この国には先代の王に仕えた
神の霊を宿す賢者と誉れの高いユダヤ人
ダニエルがいるではありませんか。
そこで王はすぐにダニエルを召し
報酬を提示して解釈を求めた。

王の夢の謎を解いたりするなど、ダニエルの賢人ぶりを示すエピソードが続きます。このことは国を失いバビロンに連れてこられてそこで暮らすうちに、いつしかユダヤ人と呼ばれるようになったアブラハムの民、ヤコブ・イスラエルの民が、バビロニアでも力を発揮し、国の重要な働き手となると同時に、ダニエルのように、その才覚によって信を得て国の運営に関わる要職につくものさえ現れるようになっていたことを示しています。そしてダニエルは、ヤコブの12人の息子の末っ子、兄たちに疎まれて捨てられ、エジプトに売り渡されながらも、ファラオの夢を解くなどして、その賢さで王の右腕となったヨセフを連想させます。

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