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旧約聖書物語 12

エリヤの神力を受け継いだ
エリシャが起こす数々の奇跡
もはや指針を失って
退廃し衰退するするユダ国とイスラエル国
警告を発する預言者アモス
そして遂にアッシリアに敗退し
囚われの民となるイスラエル

谷口江里也 構成訳
ギュスターヴ・ドレ 画
©️Elia Taniguchi

目次
1 エリシャの奇跡 (列王記下2-5)
2 エリシャの奇跡 その2(列王記下2-5)
3 神の人エリシャ (列王記下6-7)
4 イエフの登場とイゼベルの死 (列王記下9)
5 イエフの粛正 (列王記下9-10)
6 アタルヤと祭司ヨヤダ (列王記下11)
7 その後のユダとイスラエルの王
8 預言者アモス (アモス書)
9 預言者アモス その2(アモス書)
10 サマリアの陥落 (列王記下15-17)


1 エリシャの奇跡 

   (列王記下2-5)

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エリヤを失ったエリシャは
水が悪く不毛に苦しむエリコの街の
水を清めた後ベテルに向かい、途中
彼をからかった街の子らを熊に殺させ
サマリアに戻った。
さてその頃
夫を亡くした一人の女がやってきて
エリシャに泣きついて言った。
借金取りがきて、金を返せないなら
二人の息子を代わりに
奴隷として連れて行くと言うのです。
死んだ女の夫は
仲間の預言者の一人であったので
エリシャが
家には何か残っているのか、と聞くと
女は、壺の中に神に供える油が
ほんの少しだけ、と答えた。
それでは、とエリシャが言った。
近所の人から出来るだけ沢山
空の壺を借りてきなさい。
そして家に入って戸を閉め
その残った油を借りた壺に注ぎなさい。
女が言われた通りにすると
油は途切れることなく
次から次へと壺を満たした。
女は油を売って金を返し
残った金で息子達と暮らした。
また、エリシャが
シュネムを通り掛かった時のこと。
一人の身分の高い婦人が
彼を引き止め食事を振る舞ったが
以後それはエリシャが通る旅毎の
習わしとなった。
彼女はさらに夫に話し
エリシャが休むための部屋を作り
ベッドや椅子や机をしつらえさえした。
そこである日エリシャが従者ゲハジに
彼女が喜ぶことはないかと相談すると
ゲハジは、まだ子どもがおらず
夫も年老いています、と答えた。
そこでエリシャは婦人を呼び
来年の今頃、神はあなたに
男の子を授けるでしょう、と言った。
婦人はとりあわなかったが
しかし彼女はみごもり、翌年
エリシャが言った通り男子を生んだ。
そして、大きくなったその子が
突然の病で急死した時も
報せを聞いたエリシャは駆け付け
その子の死体に自らの体を重ね、暖め
生き返らせた。

天に昇るエリヤの姿を見たエリシャは、しっかりエリヤの神力を受け継いだようです。エリヤが身を寄せた家の小麦粉や油をたやさなかったように、そしてのちのイエスがカナの婚礼の際のワインをかめに満たし続けたように、壺を油で満たしたりしたばかりか、天使がアブラハムに彼の老いた妻のサラの受胎を告げたように、世話になった夫人の妊娠を告げたり、そうして生まれた子が死ねば、その子を生き返らせたりします。エリシャもエリヤと同じように、旧約聖書と新約聖書の重要なシーンと重なり合うエピソードを持っていて、彼らが新旧二つの聖書をつなぐ存在であることがわかります。


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