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旧約聖書物語 11

ソロモン王の死後
たちまち退廃し分裂するイスラエル王国
それを糾そうとする神の人エリヤの出現と
王や異教の預言者たちとの闘い
後継者エリシャに使命を託して
天に昇るエリヤ

谷口江里也 構成訳
ギュスターヴ・ドレ 画
©️Elia Taniguchi


目次
1 王国の分裂と頽廃 (列王記上12-13)
2 王国の分裂と頽廃 その2 (列王記上12-13)
3 その後のイスラエルとユダの王 (列王記上14-16)
4 その後のイスラエルとユダの王 その2 (列王記上14-16)
5 預言者エリヤの出現 (列王記上17)
6 預言者エリヤの出現 その2 (列王記上17)
7 エリヤとバアルの預言者との闘い (列王記上18)
8 神の山ホレブに逃れたエリヤ (列王記上19)
9 神の山ホレブに逃れたエリヤ その2 (列王記上19)
10 イスラエルとアラムとの闘い (列王記上20-21)
11    イスラエル王アハブの死 (列王記上21-22)
12    イスラエル王アハブの死 その2 (列王記上21-22)
13    ユダ国の王ヨシャファト (歴代誌下19-20)
14    イスラエル王アハズヤ (列王記下1)
15    天に昇るエリヤ (列王記下2)
16    天に昇るエリヤ その2 (列王記下2)


1 王国の分裂と頽廃 

   (列王記上12-13)

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ソロモンの死後、息子のレハブアムが
後を継いで王となったが
栄華の限りを尽くしたソロモン家が
民に強いた負担は大きく
わだかまる不満を抱えて王家の権威は
既に地に落ちていた。
シケムでは王の信任を巡って
イスラエルの集会が開かれ
レハブアムも出席したが、そこには
かつてソロモンに反旗を翻し
エジプトに逃れていた
ヤロブアムも来ていた。
彼は全会衆を代表して王に
苦役の軽減を要求し
ソロモンを支えた長老達も
民の声に耳を傾けるべきだと論したが
レハブアムは逆に
取り巻きの若造にけしかけられるまま
不平にはより思い苦役を
不服には懲罰を以って応えると言った。
会衆はついにレハブアムを見限り
ここに統一王国は分裂した。
こうしてユダ族を除く
全てのイスラエルの民は
ヤロブアムを新たな王とした。
しかし聖なる神殿が
エルサレムに在るかぎり
そこを拠点とするダビデ家が
威厳を回復するのは
時間の問題とみたヤロブアムは
思案の末、二頭の黄金の牛を造ると
それを祭って香をたき、民に告げた。
もはやエルサレムに詣でる必要はない。
見よ、これこそが民を
エジプトから導き出した神である。
ちょうどその頃、ヤロブアムが
らの祭壇に香をくべていた時
ユダの方から来た一人の神の人が
その祭壇に向かって声を発した。
祭壇よ、主の言葉を聞け。
ダビデの家にやがて生まれ出ずる
ヨシヤが、今お前を崇め香をたく
祭司共の骨を、お前の上で焼くだろう。


ダビデとソロモンがせっかく築き上げた統一王国ですが、その火種はソロン王朝の末期にはすでにくすぶり始めていました。賢王ソロモンといえども、比類なき王であったがために逆に、そのような権力者の多くが陥る驕りという病に侵されていたからです。紀元前965年から926年まで王位にあったソロモンの死後、王位はすぐに息子のレハブアムに世襲されますが、これもまた、高い国家運営能力の持ち主が就くべき地位が、単に権力者の息子であるという理由で受け継がせるという、権力者ならではのもう一つの悪しき病です。しかし王位が世襲されるのであれば、妻と側女を合わせて900人もの女性をはべらせていたソロモンですから、王位の継承権をめぐる争いが起きるのは当然です。しかもレハブアムはソロモンの息子としてちやほやされ苦労知らずで育ったため、せっかくシケムで12部族の総会が開かれたにも関わらず、全体の意見を聞かず、取り巻きの言うことだけを聞くあたり、権力を世襲した者が陥る典型的な過ちを犯しています。
こうして統一王国はたちまち崩壊し、エルサレムに神殿を持つレハブアムを王とするユダ王国と、ユダ族以外の11部族を率いるヤロブアムを王とするイスラエル王国とに分裂します。

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