アリシア・キーズ『Here』が年間ベスト級に素晴らしいことと、ニーナ・シモンとローリン・ヒルのこと

アリシア・キーズの『Here』は今年の年間ベストの一つ。大好きなアルバムなので、毎日、こればっかり聴いてます。スウィズ・ビーツ、ファレル・ウィリアムス、ナズ、エイサップ・ロッキーなどが参加したり、いろいろ豪華ですが、その辺はソニーの公式ページを見てください。➡ 公式ページ

『Here』はゴスペルやフォークやヒップホップ、レゲエ、ハウスなどが入り混じったR&Bなんだけど、メッセージ性もありつつも、その込め方が抑えめで、かつカジュアルで軽やかで風通しがいいアルバム。日常の中に溶け込んで、少し楽しくなる感じの曲があるのもいい。例えば、この「Blended Family」とかポジティブでいい感じ。

で、このアルバムを一通り聴いてみて、個人的に感じたのは、ゴスペルやレゲエやヒップホップ、フォークが混じるクロスオーヴァーの在り方や、ハッピーでメロウでキュートでセクシーなサウンドや歌の感じのローリン・ヒルっぽさ。

具体的に曲をあげると「More Than We Know」の歌い上げ方とかにそんなフィーリングを感じたり。

バラエティ豊かないろんな楽曲を並べてアルバム一枚でストーリーを作り上げていく感じにもフージーズっぽさも感じたり。そういえば、以前、サックス奏者のローガン・リチャードソンにインタビューした時にフージーズやローリン・ヒルの話をしたんだけど、正にそういうものかもしれないと

ローガン・リチャードソン「例えば、ケンドリック・ラマーの『To Pimp A Butterfly』を聴くと、ワイクリフ・ジョン『The Carnival』、フージーズ『The Score』、ローリン・ヒル『The Miseducation of Lauryn Hill』、そういったものを思い出すよ。ノンストップでクラシックの組曲みたいになっていて、5楽章で物語を伝えるような感じ。まるで映画的な作りになっている。ケンドリックのアルバムだってすごく視覚的だろ?フージーズは少し古いと思われるかもしれないけど、90年代から今に至るまで、その影響の大きさは計り知れない。俺は今こそ90年代半ばの、今から20年前の音楽について考え語るべきだと思うね。この頃の音楽って、パーソナルで高いクオリティのアートを作るための愛に溢れ返っていたと思うんだ。」 

 ※HMV web:【インタビュー】 ローガン・リチャードソン ➡ http://www.hmv.co.jp/news/article/1601290036/

今、レゲエはトレンドだけど、ここでアリシアがレゲエをやるのって、果たしてそれだけなのかなって深読みしたくなる。ローリン・ヒルもニーナ・シモン的なところがたぶんにあるけど、レゲエというのも一つの要素なのかなと。ちなみにアリシアも元々ニーナから影響を受けているんだけど、公民権運動の象徴としてのニーナというだけではなく、シンガーソングライター型R&Bの系譜としてのニーナなんじゃないかなと。

そこにミシェル・ンデゲオチェロのニーナのトリビュート盤『Pour une Âme Souveraine: A Dedication to Nina Simone』や、グラスパーが手掛けてローリン・ヒルも参加したニーナのトリビュート盤『Nina Revisited: A Tribute to Nina Simone』のことも考えてみるとニーナとローリンを繋ぐ流れが見えてくる気も。そういえば、ミシェル・ンデゲオチェロもレゲエやるよね。レゲエってのは攻撃的じゃなくてピースフルな雰囲気が出るレベルミュージックなんだなと、改めて。アリシアの『Here』は2010年代のニーナ・シモン再評価の流れの決定盤っぽいものが出てきたかもって感さえある かもなぁ。

人種問題と戦うけども、音楽的にはアフロアメリカンの音に限らずにフォークやレゲエなども取り入れたニーナ・シモンの軽やかさとフェアな姿勢。レゲエアレンジの名曲「ボルチモア」はもともとランディー・ニューマンの曲だし。人種問わずにジョージ・ハリスンやボブ・ディランの曲をカヴァーしたり。この姿勢が継承されてる雰囲気もあるのかなとか。 そういえば、晩年のニーナはレゲエだけじゃなくて、ワールドミュージック的な曲にも取り組んでいたけど、アリシアが『Here』でトロピカルハウスっぽい曲をやっている自由な感じもそれに通じるかもね。

アリシア・キーズが『Here』の冒頭でニーナ・シモンへの名前をコールして、後で「Hallelujah」って歌いつつ、「One Love」って歌う感じ。なんかいいよね。ちなみに『Black America Again』でコモンもニーナの名をコールします。

そういえば、これは自分で確認してないけど、アリシア・キーズはローリン・ヒルのことが好きみたいね。何かのインタビューで言及していたとか。

なんか、こういうのが繋がっていって、00年ごろの重要なものがもう一度立ち上ってきてる感じの面白さも感じているところ。あと、やっぱり僕はこういういろんな音楽が入り混じっているものが好きだな。

◆アリシア・キーズ『ヒアー』 http://www.sonymusic.co.jp/artist/ALICIAKEYS/info/474833

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柳樂光隆

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