Bjork - Utopia:Disc Review without Preparation

ビョーク『ユートピア』

ビョークの新作を軽い気持ちで数曲再生してみたところ、その時点ですごすぎてやばいっす。これ完全に僕が聴きたかったビョークだ。現代と太古が全く同じもののような顔して響いてて、トラッドなのにユニバーサル。

ティグラン・ハマシアンの『Ancient Obserber』や坂本龍一『レヴェナント』『async』から、アンダーシュ・ヨルミン『Trees of Light』的なECM感などいろんな音が脳内に浮かぶ。モーダルでポリフォニックでエレクトロニックでスピリチュアルでオーガニック。

シンプルでミニマルでもある。メロディーというか旋律というかフレーズの力がすごく強くて、それがスピリチュアルだし、メディテイティブでもある。何百年も前から口承で伝わってきた歌みたいなシンプルさと力強さがあったりもする。ビョークの歌のエモーションもすごい。

世界中から発見して、繋げて、混ぜて、みたいなところから、もともとすべてが分化する前の同じだった時代へみたいな感じでシンプルなところに帰ってきて、最小単位みたいなものを大事にしてたりする気がするし、旋律の力みたいなものに戻ってる気がするけど、もう少し考えたい。

改めて聴いてみたら、映像のない映画みたいだなと思って、でも、むしろオペラとか歌劇かなと思って、でもシアトリカルなところが全くないし、むしろミサ曲というか、ビョークの歌も中盤の多くの曲で歌というには平たんで、語りというか、「伝えてる」みたいな感じだと思った。

教会音楽っぽいなとか、フォークソングっぽいなとか、そういう瞬間はあるんだけど、特定のジャンルや地域に染めないというか、縛らせないようにしている感じがある。そのための環境音って気もする。

あとハープや琴の音がかなり入ってるんだけど、ある時期からECMでもニッケルハルパとかカンテレとか北欧の伝統的な弦楽器を使う音楽があるし、琴が使われることもある。(ギターやベース、ヴァイオリン、チェロ等以外の)昔の弦楽器が持ってる響きってなんか特別なものがありそう。

プロデューサーを担当しているアルカ云々っていうよりはビョークが設定した(であろう)コンセプトがすごいのかなって気がする。
以前に高橋健太郎さんが言ってた「アルカがラテン系(ベネズエラ)であること」ってことは本作では意味がある気がする。なんとなくだが。

坂本龍一さんも色んなとこで言ってるが、映画音楽って主たる映像に合わせて音をつけるって時点で西洋音楽的な色んな形式を無効にできるって部分があって、ゲーム音楽もそう。フライング・ロータスやサンダーキャットやハイエイタス・カイヨーテがゲーム音楽の影響を語るのはそういう意味がある気がする。

そういう主従関係のもと、音楽が何かに合わせて付けられてる場合って、従属してる不自由さと引き換えに別の音楽的な自由が手に入る。例えば、オペラとか、聖書の言葉に合わせて作る聖歌とかコラールとかも形式から自由になれたのかなと。近年、映画音楽の重要性が増してるのにはそういうのもありそう。

ビョーク『Utopia』を聴いて思ったのはそういうことだっりで、あれを聴いて坂本龍一『async』を思い出したりしたのもそういうことで、ティグラン・ハマシアン『Luys i Luso』のことが頭をよぎったのもそういうことだったりする。そんな音楽がポップミュージックとして世界中で聴かれるのすごいことだ。

映画音楽だけじゃなくて、近年よく言及されるゲーム音楽に関しての「(音色も含めた)使用できる音の制約」のことも気になってて、それって(マイクがない時代の)人間の歌ってものがクラシック音楽に入ったときに生まれる音域とかもろもろの制約とも通じていたりしてとか、考えたり。コンピューターを使う音楽ってのもある種の不自由っていう制約なのかも(2017/11/25)

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柳樂光隆

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柳樂光隆

Reviews by Mitsutaka Nagira

音楽評論家 柳樂光隆によるディスクレビューです。 即興的にディスクレビューを書いた「Disc Review without Preparation」が多めで、たまに長文のレビューがあります。
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